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建設業のイメージアップ

九州地方建設局企画部長
今 村 瑞 穂

最近のテレビのコマーシャルは,なかなか味があり見ごたえがあります。以前のものに比べ格段におもしろくなってきましたが,最後までスポンサーがどこなのか全くわからないものが多くなったように感じます。そのなかでもとりわけ,大手建設会社のCMは,スポンサーのわかりにくいものの代表格としてよく目に止まるようになってきました。もともと,建設会社のテレビCMなんてあったかな,などと思いますが“なかなか御立派,よく出来ている”といつも感心させられます。「土木工事」,「建設現場」といったイメージは一切現れない替わりに「創浩」,「環境」,「地球」,という感じで,心のなごむ雰囲気でまとめられております。同じ土木関係者として“よくぞ,ここまで……”と思わず拍手を送りたくなるものばかりです。
ここ数年,「建設業のイメージアップ」という言葉が,我々土木建設関係者の会話の中によく登場するようになってきました。このテレビCMは,まさにイメージアップの代表作と言えるでしょう。しかし,「イメージアップ」の言葉の中には,実際にはテレビCMひとつでは到底片付けられないほど,たくさんの問題が幅広くかつ複雑に入り混じっているのが実情だと思われます。このため,その取組も必然的に幅広く,きめ細かく,多角的に進める必要があるでしょう。しかし,今,なぜ「イメージアップ」なのでしょうか?皆さんにとっても「イメージアップ」という言葉にはいまひとつ把握しにくいところがあるのではないでしょうか?おそらく解釈は十人十色でしょう。いずれにしても,まだしばらくは,この言葉が我々の世界に居座ることは間違いなさそうです。この場を借りて,考えてみたいと思います。

人手不足の背景
日本の貿易黒字は年間940億ドルで,1ドル=125円で換算するとGNPの約3.2%に当たる約12兆円の資金が国内に流れ込んでいます。まさに「金満日本」。地価にも当然吸い取られ,今,日本の国土ひとつで米国の国土を5つ買えるという信じられない状況になっています。国内経済は勿論好況を続け,戦後最長の「イザナギ景気」を超える勢いです。
建設投資は,御存知のように「乗数効果(他事業への経済波及効果)が高い」,「将来への社会資本等としてストック効果が高い」という,我が国の経済現況に照らして大変好ましい性格を持っていることから,最近民間建築投資を中心に大きな盛り上がりを見せています。
現在の建設事業の抱える最大の問題は「人手不足」であり,現在のイメージアップ議論の要因の一つとなっています。そして,この問題は①経済市場の活性化による有効求人倍率の高まり(図ー1),②とりわけ,建設投資の増大(図ー2)による建設業界の求人の増大,というふうに国内経済状態から構造的に生みだされており,今の好況が続く限りいつまでも避けて通れない宿命にあるとも言えます。

仕事のやりがい
看護婦さんの人手不足が問題となっています。一昔前は,女の子への「将来何になりたい?」という問いに対する何番目かの答えであったはずなのに……と思うと,心中穏やかならぬものがあります。
今,圧倒的な売手市場,誰でも仕事を選べる時代のなかで“3K業種”という言葉が作られてきました。看護婦さんも“3K”の一言で片付けられているようです。「きつい」,「汚い」,「危険」と並べられると身も蓋もありませんが,ちょっと待てよ……という気がします。
いかに,転職ブームとは言え,一人一人にとって,やはり仕事は「天職」だと思います。そのためには,自分にとっての「やりがい」がなければ不幸な話です。「きつい」,「汚い」,「危険」とは,裏を返せば,社会の最前線で働く仕事のもつ「やりがい」に核心的な部分でつながる要素ではないかと思います。
そうすると「やりがい」というものが若い人達に十分に理解されないまま職業選択を行う年齢に達するのではないか,という事も考えられます。
建設業にしても,看護婦にしても,元々「やりがい」は十分にあるのです。自信と確信をもって,「やりがい」,「魅力」を伝えて行くべきでしょう。ただ,若い人には若い人の感性にレベルを合わせなければなりません。説得は論外です。極力,同じ立場からの表現にすべきでしょう。伝わるものは素直に伝わるはずです。
勿論,“3K”が良い評価であるはずがありません。今こそが私達の仕事の環境を客観的に見つめ時代の流れに的確に対応すべく,改善を進めていく,チャンスなのかもしれません。
休日の確保,現場環境の改善等々,メニューは数多くあります。建設事業には,産,官,学の3者の異なる立場がありますが,イメージアップを効果的に進めて行くためには,3者相互の共通認識が必要でしょう。現状がどうなっていて,どこに問題があるのか?改善するためにはどういう取組方法があるのか?これらについて十分に意見交換を行い,頭の中の整理をしなければなりません。そして,その共通認識を土台として各々のフィールドにおける幅広い取組を産,官,学の異なる立場から進めて行くことが「建設事業」トータルのイメージアップのために重要なことと言えます。

九州地建の取り組み
イメージアップのメニューは盛りだくさんあり,既に色々な所で取り組みが進められています。ここでは,九州地建の取り組みを中心に2,3事例を紹介します。
1)季刊誌「SCENES」
公共事業は生活に密着したものです。人々のくらしに溶け込んで,地域から愛されるものでなければなりません……。歯の浮くような表現は止めておくにしても,「公共事業」と「くらし」が一体となるために,親しみや魅力を紹介する情報紙として昭和63年より年4回発行,各工事事務所等から九州全域(関係市町村)に配布しています。
女性の目から見た編集で好評を頂いています。その他,地建の事業概要等も,「わかりやすさ」「イメージ」にポイントを置いて編集しています。

2)イメージアップモデル工事
一般市民が最も強く,建設事業を印象づけられるのは工事現場でしょう。これまでは,経済性を追及する余り,外から見たイメージや現場労働者の作業環境の改善にあまりウエイトが置かれていなかったようです。九州地建では,建設省大臣官房技術調査室の指導等を参考に,今年度発注工事のうち,市街部・大規模のものを中心に15工事のモデル工事を選び,完成予想図,フラワーポット等を整備し,わかりやすく,親しみやすい現場への取り組みをスタートさせていただきます。

3)工事の平準化
公共工事は本来,会計年度毎の予算執行の性格上,どうしても年度の後半,特に年度末に事業量の集中が起きやすい傾向にあります。河川工事が出水期に実施しにくいということも,一つの要因でしょう。
しかし,いずれにせよ工事の一時集中が緩和されれば,人手不足や労務・資材のコストの問題も大幅に改善されることになります。国債工事の拡大,早期発注等方策は種々ありますが,近年総合的立場から鋭意取り組むことによって,過去の状況に比べ,既に平準化が進んできている状況にあります。

4)「土木の日」
土木のイメージアップは「土木」の改名からという議論が,数年前より土木学会を中心とした場で展開され,話題を呼びました。結果としては,歴史的に広く親しまれている「土木」の名称は今後も引き続き残されていくことになりましたが,この動きが大きなバネとなって,土木の魅力を一般市民に広く伝えるために,11月18日を土木の日として全国的な活動が展開されることになりました。
九州では,土木学会西部支部を中心として,関係機関の協力の下に,各県単位に街頭キャンペーン,講演会,パネル展示等が実施され,多くの人々に親しんでもらうことにより大きなPR効果が得られているようです。
九州地建の各工事事務所においても,昨年より土木の日を中心として,土木学会の活動の支援や独自の活動を幅広く進めています。
土木のイメージの問題は,国民意識,社会,経済活動の長期的な変化の中で形成されてきた一つの現象であるということができます。したがって,このようなイメージアップヘの取り組みも一朝一夕に達成されるものではなく,幅広く長い視点でなされなければならないと思います。
産,学,官が力を合わせ,ねばり強い,現実的な取り組みの中から,確実に九州の各地に素晴らしい土木のイメージが根づくことを期待しています。

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