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佐賀導水事業における機械設備について

国土交通省 佐賀河川総合開発工事事務所
 機械課長
石 田 直 己

国土交通省 佐賀河川総合開発工事事務所
 機電係長
伴  和 美

1 はじめに
佐賀平野は,日本有数の干満差(約5m~6m)を有する有明海と,その北側に位置する背振山系の自然に囲まれた,約6万haの広大な平野である。この佐賀平野は,その殆どが有明海の計画高潮位T.P.+5.02mを下回る低平地であり,潮汐の影響も大きく,提内地よりも河川の水位が高く,山地,丘陵地,農地から流出した水は低平地に冠水するため,中小洪水でも市街地まで氾濫する状況にある。(図ー1)

また,佐賀西部地区における「水資源」の多くは,地下水に依存しており,農業用水と相侯った過剰取水を原因とする地盤沈下の進行も懸念されている。
このように,自然の恩恵を受ける一方で,「水」に関する様々な問題を抱える佐賀平野において,「安全・安心な郷土の発展」「自然との共存」のための一翼として,「治水・利水・環境」を目的に,昭和54年4月から佐賀導水事業の建設に着手し,平成20年度完成を目指している。

2 事業概要
佐賀導水事業は,筑後川,城原川および嘉瀬川を導水路(管路及び開水路)で連絡する流況調整河川(総延長約23km)及び洪水調節調整池(調節容量2,200千m3)を建設するもので,ポンプ設備を主とした機械設備群により治水及び利水機能を確保するものである。
城原川から嘉瀬川間を結ぶ導水路を筑後川水系1級河川西佐賀導水路,筑後川から城原川間を同じく東佐賀導水路と呼び,現在7箇所のポンプ機場18箇所の水門及び10箇所の制水弁が完成し,2機場が建設中,1機場が今後建設予定である。

3 治水事業
(1)内水排除(図ー3)
筑後川~城原川~嘉瀬川を結ぶ導水路区間には,通瀬川,切通川,井柳川,三本松川,馬場川,中地江川,焼原川,及び巨勢川等の中小河川があり,現在でもたびたび氾濫を起こしている。
このため,東佐賀導水路においては,各河川の中流域にポンプ設備を設置し,洪水時の流水の一部を導水管を経由させながら,主要河川である筑後川,城原川へと迂回させ排水し,下流域における内水氾濫を下流ポンプ設備群(筑後川工事事務所管轄)と共に軽減する。
西佐賀導水路の中地江川及び焼原川では,内水常襲地区内に開水路方式の導水路を設置し,内水を開水路内へ取り込み,城原川と嘉瀬川へ排水することにより内水の氾濫を軽減する。

(2)洪水調節(図ー4)
調節容量2,200千m3の巨勢川調整池及び2台のポンプ設備(巨勢川調整池機場26m3/s)並びに10箇所の水門により,巨勢川東渕地点での基本高水ピーク流量200m3/s(巨勢川125m3/s,黒川75m3/s )のうち130m3/s (巨勢川55m3/s,黒川75m3/s )の洪水調節を行い,巨勢川下流域の洪水被害の軽減を図る。

4 利水事業(図ー5)
(1) 流水の正常な機能の維持
① 不特定用水計画(0.4m3/s)
城原川(0.1m3/s ),嘉瀬川(0.3m3/s )の下流沿岸における維持用水の補給を行う等,流水の正常な機能の維持と増進を図る。
② 浄化用水計画(1.2m3/s)
都市の発展に伴い,河川環境が悪化している佐賀市内の河川に,浄化用水を補給する。
(2)水道用水(0.65m3/s )
佐賀西部地区に対し,流況調整河川により新たに水道用水を補給する。

5 設備内容
(1) 西佐賀導水

(2) 東佐賀導水路

(3) 全 般

6 施設の特色
今までに述べた本事業における水運用の特殊性,複雑性から,設置される各機械設備についても以下の特色があり,新技術,コスト縮減はもとより,信頼性の向上,運用・維持管理の効率化についても種々の工夫を凝らしている。
(1) 設備の特殊性
① 高揚程ポンプ
一般の河川用ポンプ設備との大きな相違点はその揚程(水を揚げる高さのこと)の大きさにある。その理由は,
  a.吐出側の河川水位が高く,機場実揚程が高い。
  b.排水先河川が遠方で,導水管路長が長く,管路損失が大きい。
ことにあり,それに伴いポンプ駆動用原動機の出力も非常に大きいものとなっている。
図ー6に一般機場と佐賀河川機場の揚程模式図を示す。

② 兼用ポンプと両掛式直交軸傘歯車減速機(巨勢川機場)
巨勢川調整池内には巨勢川機場及び巨勢川調整池機場が設置されるが,このうち巨勢川機場は治水機能(4m3/s)及び利水機能(2.15m3/s )の両面を受け持つ機場である。

ポンプ台数及び運転計画にあたっては,
  a.設備費
  b.維持管理性
  c.運転費
の観点からポンプ台数を3台とし,うち1台を治水・利水兼用ポンプとしている。
兼用ポンプは,治水運用時はガスタービン方式,利水運用時はモーター方式と駆動方式が異なるため特殊な両掛け可能な空冷歯車減速機を採用している。

③ 制水弁
本導水路は規模(管径φ1,900~φ3,000mm)も大きく治水・利水の送水を共用することから,各運用時の流路形成及び導水管路内の点検・清掃・修理等の維持管理用として,管路の要所に制水弁室を設け制水弁(電動式バタフライ弁)を設置している。なお,メンテナンス性を重視し水密はメタル方式を採用している。

④ 分水工施設
西佐賀導水路では,「水道用水」と「不特定用水」を嘉瀬川へ,「浄化用水」を多布施川へ分水する分水工施設を有する。
分水機能は導水管路に設置する4つの制水弁の開閉によって行い,各送水の流量制御は巨勢川機場の制水弁と4つの流量調節弁及び送水元である巨勢川機場ポンプで制御する。

⑤ 利水流量調節機能
利水運用においては各機場の制御装置に必要導水量を設定することにより,自動的にポンプ取水を行うとともに,導水流量調節を行う自動制御機能を有する。
また,様々な導水状況を勘案し,以下の制御機能を有する。
a.嘉瀬川,多布施川,還元水系統の3系統の目標流量設定と各送水管の損失特性により吐出水槽の水位を一定に保つようポンプの回転数速度制御を行う「吐出槽水位一定制御」
b.嘉瀬川,多布施川,還元水系統の3系統の目標流量設定値を保つよう制水弁室の5個の流量調節弁の開度制御を行う「送水流量一定制御」
c.目標累積流量を1時間単位で管理するための「送水流量制限制御」
d.小松川サイフォン開水路水位を一定に保つ「開水路水位一定制御」

⑥調圧水槽と治水自動制御機能
東佐賀導水路の機場は導水路を通じて他の機場と連絡されており,それぞれの機場のポンプ排水状況により各機場が干渉する現象が生ずる。このため,各治水機場の調圧水槽及びポンプ運転制御に独自の工夫を持たせている。
a.調圧水槽
  (a)ポンプ設備本来の吐出水槽の機能
  (b)導水路調圧水槽の機能
という2つの機能を持たせ,水理的に安定な状態で各排水河川に排水する事を可能としている。
なお,三本松川,馬場川機場は調圧水槽を2槽構造とすることで,対応している。
b.自動制御機能
ポンプ設備側も安定した排水を実現するために
  (a)キャビテーション防止制御
  (b)締め切り運転防止制御
  (c)排水量制限制御
などの複雑な制御機能を有している。

また,三本松川機場においては実験的に全自動運転機能も備える。

⑦ 新技術とコスト縮減
新技術やコスト縮減については,事業開始より約24年が経過し,その時々の新技術を積極的に採用している。一例として

これにより,機場スペースの約40%縮小化,天井クレーンの省略,補機類の簡素化,完全無水化及び低振動・低騒音化を実現,コスト縮減とともに信頼性向上が図られている。

⑧ 遠隔操作制御設備
佐賀導水は前述したとおり,機場をはじめ数多くの機械施設を有し,これらは機能上複雑に関連した設備であるため,相互に連携した運用が求められている。
従って,設置された個々のポンプ,水門,制水弁等をそれぞれの操作員による単独の運転ではなく,連動した一元の操作を行う必要がある。
特に,巨勢川調整池の運用にあたっては,1施設のポンプの稼働に対して10箇所の水門の連携操作が必要であり,各々に操作員を配置し操作することは,運用上非常に煩雑で困難である。

よって,各設備を効率的に一元管理しながら,操作する「光ファイバーネットワークを利用した遠隔操作制御設備」設置し,事務所より各機械設備の遠隔操作を可能とする。

⑨ 利水機場における設備診断技術
施設の信頼性の向上,迅速な故障対応等を目的とした「故障支援システム」やポンプ及び機場の諸データの把握から日報・月報,各種データの保存,作成までを行う「運転支援システム」を各機場に導入している。
また,常用系の利水機場では,設備の不具合が即,利水運用の停止に直結するため,振動測定法を用いた「設備診断システム」を導入している。
本技術は,各機器に取り付けた振動センサーからの周波数データを収集・解析し,故障劣化の傾向や異常状態を診断するもので,設備のトラブルを未然に防止したり,最適な時期での修繕計画策定が可能である。

一振動診断法の概要一
(ⅰ)機械振動の周波数帯域と振動指標の関係について

(ⅱ)簡易診断;振幅値での判定
 3つの周波数帯域(Lo・Md・Hi)の振幅値の上昇傾向の有無及び大きさから設備の劣化度を判定します。

7 おわりに
佐賀導水事業は,平成13年度までに約8割の事業の進捗をみせており,暫定運用ではあるが,地域の利水及び,調整池の概成による洪水軽減,並びに各機場稼働による内水対策に効果を発揮している。
また,多目的機能を持つ本事業は,前述のとおり多くの機械設備より構成されており,今後の運転及び操作を,事務所から効率的に行なうべく,一括連携遠隔操作システムを構築中である。
現在は,工事事務所からの暫定操作(現地操作補助員付き遠隔操作)で運用しており,一部全自動運転(現地監視付き)での試験も計画中である。今後とも,実稼働での検証を積み重ねながら,安全面,管理・運用・操作面等の問題点の抽出,改善を行い,20年度完成を目標に,更なるシステムヘと完成させていきたい。

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