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深層混合処理工法における簡易品質確認手法について

建設省九州技術事務所長
猪 須 哲 夫

建設省九州技術事務所
機械課長
村 上 輝 久

建設省九州技術事務所
機械課機械調査係
南 嶋 哲 郎

1 はじめに
我が国は大規模な軟弱地盤が多く分布し,また国土が狭いことから軟弱地盤地域を利用しなければならないことが多い。そのため,軟弱地盤対策工法のうち石灰あるいはセメントなどの安定材を原位置の軟弱土と混合する,いわゆる混合処理工法に関してもこれまでDJM工法やDLM工法など多くの工法が開発され,いろいろな分野で広く利用されている。
しかし,地盤改良工事は地中の工事であるだけに目視によりその改良効果を確認しながら施工することができず原位置の軟弱土の含水比や有機物含有量,pH,施工機械のハンドリング等によって改良地盤の品質に大きな違いが見られる。
現在,深層混合処理工法により施工された改良地盤の品質管理は,ボーリングコアを採取し,一軸圧縮強度により行っている。しかし,その実施頻度は一般に改良体数百本に1本程度と少なく,また,ボーリング時の乱れからコアに多数の亀裂が発生し,さらに強度の弱い部分はサンプリングが極めて困難である。このため,ボーリングコアによる方法は実際の改良地盤の品質を反映しているとは言い難い。
そこで,本研究ではコアボーリングによる強度管理を補完する方法として回転サウンディング手法を提案し,改良地盤の品質管理手法への適応性について調査を行った。
本回転サウンディング手法は,建設省技術研究会共通部門指定課題「機械化施工における施工管理の合理化に関する研究」の一環として取り上げているもので,建設省土木研究所を中心に関東技術事務所においても同様に調査が行われている。
本稿では有明海沿岸地域特有の“ガタ土”に対して実施された地盤改良工事に適用した事例として紹介する。

2 回転サウンディング手法の概要
ここで取り上げた回転サウンディング手法は,通常使用されるボーリングマシンのロッドの先端にコーンまたはビット形状の切削能力をもつ先端抵抗体を取り付け改良地盤中に回転貫入させるもので,貫入時に作用する推力,トルクおよび貫入速度を連続的に計測することにより改良地盤の強度特性を推定しようとするものである。
システムの概要を図ー1に示す。

回転サウンディングシステムは,ベースマシンである専用のボーリング機械本体,これに装着した計測装置,データ解析装置で構成している。
ベースマシンはビット径65mmを標準とし,計測の主要パラメータであるビット荷重およびビット回転速度を一定に保った状態で計測管理ができるようにサーボ自動制御方式を採用しているところに特徴がある。したがって,定推力削孔と定貫入速度削孔のどちらかを選定し,定回転速度で削孔することができる。ベースマシンの概略図を図ー2に示す。
計測装置は地上と地中に配置されており,地上計測センサーは削孔速度センサーとロッドの回転速度センサーから成りボーリング機械に取り付けてある。また,地中の計測ロッドはビット直上のボーリングロッドの一部を構成するもので,図ー3に示すように上からバッテリ一部,計測メモリー部,センサー部から成り,ビット荷重,削孔トルクのほかに泥水圧を計測し,内蔵のRAMにデータを記憶させる部分である。地上計測センサーによるデータと計測ロッドにメモリーされたデータは,あらかじめ設定された時間合わせによって整合を図り,深度に応じた記録として整理される。
データ解析装置はPC9801を使用したパソコンシステムでデータをディスクヘ収録すると同時に作表・作図などを行う。

3 調査概要
深層混合処理による地盤改良における一軸圧縮強度と削孔パラメータ(削孔速度,回転数,推力,トルク,水圧)との関係を見いだし,その適応性を調査するため基礎調査試験ならびに現地調査試験を実施した。
3-1 基礎調査試験
基礎調査試験は各テストピースから得られた一軸圧縮強度と削孔パラメータとの関係を見いだすことを目的に削孔速度および回転数を一定に制御し,4種類の強度を対象として
 ① 削孔速度の違いによる他のパラメータヘの影響
 ② 回転数の違いによる他のパラメータヘの影響
 ③ 削孔強度の違いによる他のパラメータヘの影響
の3項目について表ー1に示す条件を設定し,実施した。

3-2 現地調査試験
現地調査試験は,有明地区で施工された地盤改良工事(DJM)を対象として,コア検査を行った3本の改良柱体に対して深さ10m以上の調査試験を実施した。
現地試験の条件は表ー2に示すとおりである。測定に際しては,ロッド先端部に装着されたセンサーによる地中情報と合わせて,これらのデータを補足するため地上計測部により外部情報を得るものとした。測定項目を表ー3に示す。

4 調査結果
4-1 基礎調査結果
実験結果を改良柱体の深さ方向に整理したものを図ー4に示す。
データの解析は一軸圧縮強度と削孔パラメータとの関係を見いだすため,同時に6つの変数(一軸圧縮強度,削孔速度,回転数,推力,トルク,水圧)を取り上げて解析する必要がある。したがって,6つのパラメータの中から2つの変数を選び出し,それぞれの組み合せに対して両者の関係を相関図に表し,各パラメータ間の因果関係を調査した。
その結果,表ー4に示すとおり互いに大きく寄与する主要パラメータは,一軸圧縮強度,削孔速度,回転数,推力の4項目であると考えられる。このことから一軸圧縮強度を推定(予測)するためには削孔速度,回転数,推力の3パラメータを採用することで可能になると考えられる。

4-2 次元解析手法による解析
各パラメータ間の因果関係を見ることで一軸圧縮強度は,削孔速度,回転数,推力の3パラメタに寄与されることが明らかになった。したがって,従来の削孔速度公式に基づく次元解析手法により一軸圧縮強度と3パラメータの関係を求めた。その結果,以下に示す推定式が得られた。

推定式の整合性を検証するため,本試験から得られた真の一軸圧縮強度と各パラメータから上式を用いて得られた推定一軸圧縮強度をプロットしたものを図ー5に示す。同図より多少バラツキが見られるもののほぼ45゜線上に分布していることにより比較的整合性のよいことがわかる。

4-3 現地調査結果
図ー6に深層混合処理柱体に回転サウンディング手法を適用した記録の例を示す。図中の右端は品質管理のため別途に行われた一軸圧縮強度の結果である。
削孔速度,回転数を一定に制御すれば,推力と改良地盤の一軸圧縮強度は良好な対応を示しているのがわかる。

これらの現地調査の結果を用いて基礎調査で求めた3つのパラメータ(削孔速度,回転数,推力)に着目し,基礎調査で求めた推定式の現場適応性の検討を行った。
図ー7は,現地調査で得られた削孔パラメータから推定式を用いて一軸圧縮強度を推定し,現地の各改良柱体より得られた真の一軸圧縮強度との関係を基礎調査の結果と併せてプロットしたものである。
現地調査の結果が,ある範囲に集中しているのは現地改良体がある値を目標に改良されているためである。また,45゜線上より下位に分布しているのは基礎調査の各テストピースと現地改良体が異る条件下で施工されたためであり,推定式のドリラビリティ定数が異なることが予想される。
このように現地調査の結果が基礎調査の結果と異なるのは,
 ① 室内配合等の原位置攪拌の違いによる柱体の不均一性
 ② 現地土層の不均一性
 ③ コア採取に伴うサンプリング深度の不確実性
 ④ コア採取位置とサウンディング位置の違い
等があげられる。
しかし,基礎調査の結果を基にした現地調査のデータによる解析で得られた推定式では,相関係数など基礎調査結果と一致した結果を得ており,今後,多くの現地調査データを収集し,解析することにより,改良体の品質管理に適用できる程度のより相関の高い推定式が得られるものと思われる。

5 新たな施工管理の提案
現在,地盤改良後の品質管理は,一軸圧縮強度によって行われている。しかし,施工管理を考えた場合,改良体の改良長,均一性,強度が評価できれば特に一軸圧縮強度による必要はない。
先に述べたように回転サウンディング手法により得られる削孔パラメータによる指標q′と対象地盤の一軸圧縮強度には基礎調査や現地調査試験に見られるように高い相関関係がある。
そのため,本手法によって得られる指標が一定以上の値に達した場合,一応の施工が行われていると評価するような,従来の一軸圧縮強度による欠点を補う施工管理が可能になるものと思われる。

6 あとがき
今回実施した調査試験の結果では,回転サウンディング手法が新たな施工管理手法として十分な適用性を持つことが示され,従来の手法に代わる簡易な品質管理手法として実用化が可能であることが明らかになった。
しかし,石灰やセメントを用いた地盤改良は化学反応を利用したものであり,物理的な強度が発揮されるまでに時間がかかり,強度で管理する限り測定結果を直ちに施工に反映させることはできない。
今後は更にデータを蓄積し,回転サウンディング手法をより信頼性のある手法にするとともに,測定結果が直接施工に反映できるような手法についても研究を進めていく必要がある。

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