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PC 橋における耐久性の向上について
前田光貴

キーワード:プレストレストコンクリート(PC)、アルカリ骨材反応(ASR)、混和材

1.はじめに
九州地方整備局は、これまで道路管理者として利用者の安全・安心のため橋梁、トンネル等の点検を行い、適切な道路の維持管理に努めてきた。しかし、これまでの点検において、コンクリート橋でアルカリ骨材反応(以下ASR と表記)の疑いがある橋梁が存在することが判明した。
整備局では、これまでコンクリート橋において、①コンクリート中のアルカリ総量抑制、②安全と認められる骨材の使用など、ASR の抑止に努めてきたが、ASR の疑いがある橋梁が点検で判明したため、「九州地方整備局コンクリート評価委員会」の学識委員の意見を参考に、PC 上部工工事において、混合セメント等を使用した更なるASR 抑止に係る試行工事を実施することとした。

2.試行工事の概要
(1)対象橋梁
試行の対象となった橋梁は、八代河川国道事務所発注の九州西廻り自動車道芦北出水道路にある大迫橋で、橋梁の概要は以下のとおりである。
・所在:熊本県水俣市大迫
・道路規格:第1 種第3 級 設計速度V=80㎞ /h
・活荷重:B 活荷重
・形式:PC2 径間連結少主桁橋
・橋長:85m  ・幅員:9.5m

(2)試行の対象部材および混和材等
試行の対象は、工場製作による主桁、現場打ちによる間詰床板、横桁、地覆・壁高欄とするが、主桁に用いるコンクリートには混和材の50% を高炉スラグ微粉末6000(比表面積6000cm2/g)に置き換え、間詰、横桁、地覆・壁高欄には、通常の早強セメントや普通セメントの代わりに高炉セメントB 種を採用した。それぞれのコンクリートの基本配合は表- 1 ~ 3 である。
これらがASR 抑止に有効な対策であったか暴露試験などを行い検証すると共に、高炉スラグを使用した場合と使用しない場合とでは、施工性及び経済性における長所、短所を明確に整理する予定である。

(3)養生について
①主桁
主桁は工場内で、15℃以上、湿度80% 以上を保つため、防炎シート内で散水養生、ガーデンクーラーによるミスト養生、ジェットファーネスによる温風養生を3 日間おこなった。これらの概要を示したものが図- 3 である。また、主桁コンクリートの養生状況を写真- 3 に示す。

②間詰床板、横桁
コンクリート打設後は現場で、主桁と同様に15℃、湿度80% 以上を保つため、灌水ホース(有孔タイプ)による散水養生と養生マットを7 日間おこなった。これらの概要を示したものが図-4 である。

③地覆・壁高欄
コンクリート打設後は現場で、間詰床板、横桁と同様に15℃、湿度80% 以上を保つため、灌水ホース(有孔タイプ)による散水養生と養生マットを7 日間おこなった。これらの概要を示したものが図- 5 である。

(4)試行に関するモニタリング項目
主桁や場所打ちコンクリートの桁製作時、場所打ち施工時において、収縮などのコンクリート内部の挙動を把握するため、ひずみ、温度等の調査を行った。また、上部工架設後については、図-6 のA 部、B 部にて「桁、間詰床板のひずみ・温度、外気温」を測定する予定である。測定頻度に関しては、現在検討している段階である(表- 4 参照)。

(5)試行結果の確認項目について
今回の試行工事で、耐久性能向上を目的として高炉スラグ微粉末や高炉セメントを用いたが、これらの標準化を目指すためには施工性や経済性等を確認する必要があり、今後、重要となる調査項目を整理し、詳細な情報を収集する予定である。また、主桁、間詰床板等に使用したコンクリートの供試体により暴露試験も実施する予定である。観測目的は、コンクリートの劣化の進み方、塩分、炭酸ガス等の侵入程度(拡散係数等)を調べることであり、10 年間実施する予定である。

3.今後の取り組みと課題
今回の試行工事の検証は現在進行中で、施工性や経済性、モニタリングの結果などある程度のデータが出揃って整理できる状態となるのは平成31 年度以降となる見通しである。また、他の案件においても試行工事を検討しており、さらなるデータが蓄積できるものと思われる。
今後は、これらの結果に加え、耐久性に関する試験結果を比較検討することにより、上部構造において混和材や混合セメント適用を標準化した場合の課題を解決する必要がある。

4.おわりに
現在、我が国では高度成長期に建設された社会資本、特にコンクリート構造物の維持管理が社会的な課題となっている。その中でも、コンクリートの耐久性に大きな影響を及ぼすASR をいかに抑制できるかは今後の重要な課題である。
今回、九州地方整備局が、橋梁上部構造のASRを効果的に抑制する方法として、混和材や混合セメントの適用の標準仕様化を視野に入れ試行工事に踏み切ったことは、九州からASR を一掃するための第一歩であり、将来の維持管理の有効な対策となると考えられる。
今後も試行を重ね、より多くのデータを蓄積することにより混和材や混合セメント適用の標準化を推進していきたい。
最後に、本試行工事の発注元の八代河川国道事務所、施工者の立場で協力していただいた川田建設(株)、九州地方整備局コンクリート評価委員会の関係者の皆様に感謝の意を表します。

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