一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        

一級河川番匠川は、大分県南部に位置し流域面積464km2、幹川流路延長38.1kmと比較的小規模な河川です。源を大分県の三国峠(標高664.2m)に発し、流域に豊かな恵みをもたらしながら流下する清流は、ひとたび豪雨に見舞われると600mの高低差を一気にかけ下り、周りに甚大な被害をもたらす暴れ川と化します。

今回取り組んだ籾崎箇所は、支川久留須川右岸5/800付近で、平成11年7月台風5号により被災した自然河岸の洗掘箇所です。被災箇所の高水敷は、エノキの高木とホテイチクによる河畔林となっていることから、緑の水際を保護すると共に、水生生物の生息場所となる工法が望まれます。

事務所内の「川づくり検討会」では、下流の井堰の湛水区間であることから、水中に設置することで、木材の耐久性に期待が持てると判断し、復旧に当たっては、間伐材と石材を用いた護岸とすることを決定しました。そこで地元森林組合に話しかけ、間伐材の供給の有無と使用工法・搬入計画等を検討しました。

地元森林組合からは積極的に応えていただき、間伐材の組み合わせによる3タイプの木枠工を提案、加工場で組み立て現地に搬入する方法での体制を作っていただきました。

現地は、エノキの高木近くまで洗掘されているため、洗掘面を復旧法面にし、渦流の発生防止(河床の洗掘防止)のため粗朶を敷き、搬入された木枠工を吊り込み、浮き上がり防止の玉石を詰めて1ブロックずつ設置する方法で、製品の搬入とのバランスを取ることにしました。

復旧工事完成から4カ月経った現在、高木の下に植栽したネコヤナギと共に自然な植生が回復しつつあり、数年後には被災前の環境に近づくものと期待されます。

今回実施した木枠工による復旧は、該当箇所が湛水区間ということも採用の決め手となりましたが、ブロック毎に作業でき施工性が良く工期の短縮も図れ、完成直後の出来映えも現地にマッチし、時間の経過と共に自然に慣れ親しんできていることから、川づくりの工法として優れているのではないかと思われます。

また、地元森林組合と連携し、間伐材を護岸として利用できたことは、「山を守る」一助になり、そして治山が進むことが「川を守る」という恵みとして帰ってくるとすれば、今回の小さな試みは、もう一つの大きな成果もあったと思われます。

木枠工施工状況

玉石を詰めている

詰石作業が終了し天端土施工前

タイプ1森林組合の加工場

タイプ2

タイプ3

工事完成直後の景観

完成から3カ月後 井堰の湛水もされた後の小規模な出水日の景観

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧