●ウスユキソウ:九州では、宮崎県北の山地にしか自生しない。
●天然スギ:鬼の目山から国見山一帯に分布する。九州では、屋久島とこの山塊にのみ自生する。
●ツチビノキ:ジンチョウゲ科の低木。宮崎県県北の山系が日本で唯一の自生地である。
●ウバダケギボウシ:宮崎県県北の山系が日本で唯一の自生地である。
●アケボノツツジ:大型のツツジ。5月の花の時期には、山肌をピンク色に染める。
●アケボノツツジ:大型のツツジ。5月の花の時期には、山肌をピンク色に染める。
五ヶ瀬川は熊本、大分県境の山岳地帯にその源を発し、宮崎県県北の1市4町の流域をうるおし、日向灘に注いでいる。源流域となる主な山系としては、祖母・傾山系、九州中央山地、大崩山系、見立五葉山系などがある。
祖母・傾山系の本谷山・笠松山や見立の五葉・釣鐘山周辺には、まとまったブナやモミ・ツガの原生林が分布している。その他の源流域では、山頂部や尾根筋にしか原生林はなく、ほとんどがスギ・ヒノキの人工林やシデなどの二次林におきかわっている。
源流域のひとつである五ヶ瀬町の白岩山には、尾根筋にブナ林が残され、石灰岩の岩峰には、九州ではここにだけしか見られない植物が多く生育する。
祖母・傾山系の障子岳や親父山には、広大なブナ林が分布する。ウバダケギボウシ、ウバダケニンジンなどはこの山系でしか見られない植物である。
一方、支流の見立川の上流域の五葉山には、ブナ林が広がり、急斜面には九州最大の広さをもつモミ・ツガ林が分布する。杉ヶ越から夏木山にかけての尾根筋には、天然のヒノキ林や大型のツツジであるアケボノツツジがみられる。
支流の綱の瀬川上流にある大崩山系の鬼の目山では、ブナ・モミ・ツガ林のほか、九州本土では、他には見られないスギの天然林が分布する。
源流域の山地で誕生し、地球上でこの地域でしか見ることのできないツチビノキ、ミヤマゼキショウ、ウバダケギボウシなどの貴重な植物が自生する。
わずかに残された源流域の原生林も近年、伐採や開発により減少してきている。学術的にも貴重な存在であり、五ヶ瀬川の清流を生み出してくれている源流域の原生林を、今後とも守っていかなくてはならないと考える。