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JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の改正について

全国生コンクリート工業組合連合会
九州地区本部技術部長
田 口 茂 久

1 はじめに
JIS A 5308が平成5年3月1日付けで改正された。
この規格の改正は,生コンクリートのJISが昭和28年11月にJIS A 5308として制定されてから,昭和43年,昭和50年,昭和53年,昭和60年,昭和61年および平成元年に続いて7度目になる。
改正内容は,計測単位に現行のCGS単位からSI単位へ切り換えるための見直しがその主たるものであったが,規格の内容についても今までにない変更が行われた。
今回の改正は,平成元年以来5年ぶりであり,生コンクリート業界としてもこの機会に規格の全般に亘って問題点の洗い出しを行ったところ,全国から寄せられた意見・要望は163件にも達した。よって,これらの意見・要望に併せ諸外国の規格と我が国の規格との対比,公示検査,立入検査の結果等を踏まえ,生コンクリート業界として「守れる基準」の策定をJIS改正委員会に提案する運びとなり,今回の改正が規格の内容変更にまで及ぶこととなった。

2 主な改正内容
(1)JIS A 5308の名称変更
JIS制定時からの規格名称「レデーミクストコンクリート」が「レディーミクストコンクリート」に変更された。
JIS Z 8301「規格票の様式」の改正によって外国語の仮名文字を言語に近い表現を用いてよいことから「レディーミクストコンクリート」となったが,改訂に際し,規格名称として「生コンクリート」,「レミコン」,「生コン」等の意見が出されたがイメージ的に「レディーミクストコンクリート」が良いということで落ち着いた。
(2)SI単位へ切り換えの予告
平成7年4月1日から,CGS単位系をSI単位系に切り換えることが予告された。
この場合,コンクリート強度の単位はMPAまたはN/mm2に変更となり,従来のkgf/cm2との関係は0.0980665×kgf/cm2=MPA=N/mm2であるから,従来の数値の約1/10になるため呼び強度は現行の呼び強度の桁数が1つ少なくなり,実際の強度は小数点以下1桁まで表示することになる。
(3)コンクリートの区分(標準品・特注品)を廃止
昭和53年の改正において,コンクリートの種類は標準品と特注品に区分されたが,今回その区分が廃止され,表ー1,表ー2(平成7年4月1日からの適用分)のように改正された。この結果,呼び強度とスランプの組合せは○印のみになるとともに,購入者が生産者と協議のうえ指定する項目として従来の特注品の指定事項に「単位水量の上限値」を追加した15項目が適用されることになった。
従来の特注品の取扱いについては,生産者だけでなく購入者側にとっても判り難いものであったが,全国生コンクリート工業組合連合会(以降,全生工組連と略称)において標準品と特注品の出荷量に関する実態調査を行ったところ,○印の標準品が81%,●印の特注品が9%,残りの10%は指定事項のついた〇印の特注品扱いになっていることが明らかになった。この結果に基づき,使用頻度の低い特注品については,不必要なものは削除し残ったものは標準品扱いにすると共に,必要な事項を購入者が指定できるように改めることで標準品と特注品の区分を廃止した。この結果,●印の特注品57種類中25種類が削除され32種類は○印として残すことになった。

(4)コンクリートの種類
コンクリートの種類は表ー3に示すように,今回の改正によって182種類から122種類に削減された。
全生工組連の出荷実態調査(全国108工場を対象に平成4年2月調査)の結果,表ー4・1,表ー4・2に示すように改正前の種類の中には使用実績のほとんどないものがあることが明らかになった。この結果に基づき,使用頻度の低い呼び強度150,195は普通コンクリート,軽量コンクリートから削除された。また,普通コンクリートで粗骨材最大寸法20mmまたは25mmのスランプ5cmと同じく最大寸法40mmのスランプ18cmが削除された。ただし,160-5-20,195-8-40,300-18-40については,官庁仕様との関係上,平成7年4月まで残すこととなった。さらに舗装コンクリートのスランプ5cmは6.5cmで代用できるものとして削除された。これによって,特注品の見直しに伴う種類の削除を含めると60種類(表ー4・1~表ー4・4のストレッチ部分)が削除されたことになる。

さらに,今回の改正作業において諸外国の規定との比較検討がなされ,改正内容の一部に反映された。
現在諸外国で用いられている強度の種類は,表ー5に示すように,日本では150~400kgf/cm2の範囲に12種類があり15~20kgf/cm2の幅で規定されているのに比べ,諸外国では4~6種類の中に50~100kgf/cm2の幅で規定され,日本の規定による刻み幅が小さすぎる。また,生コンクリート工場で製造されたコンクリート強度は,一般に標準偏差で20kgf/cm2のばらつきがあるのにコンクリートの種類が20kgf/cm2刻みではあまり意味がないとして,今回の改正において30kgf/cm2刻みにすることで195,225,255を削除することが検討されたが,今回195のみを削除し,225,255については次回改正時に再検討することになった。
同様にスランプについても,種類,許容範囲についての討議がなされたが一部のスランプを削除したのみで全面見直しにはならなかった。

(5)空気量の基準値および許容差の改正
空気量は,従来の基準値より0.5%大きくすることとし,普通コンクリートおよび舗装コンクリートでは4.5%,軽量コンクリートで5.0%となった。さらに,その許容差を全てのコンクリートについて±1%から1.5%に広げた。
近年の良質骨材の枯渇化や交通事情により空気量の許容差を1%以内で管理することが極めて厳しい現状にあることが通産局の立入検査や全生工組連の実態調査から明らかになった。
全生工組連の調査では,約半数の工場が従来の許容範囲±1%を確実に守ることは難しく,100回中7回は範囲で外れているがその程度はわずかであり,ほとんど1.5%以内になっているので,不合格率を大幅に低減できるとしている。
ところで,許容範囲を広げることによって,コンクリートの品質に及ぼす影響としては,耐凍害性と強度の低下が考えられるので,今回の改正では最小空気量3%を確保することと呼び強度が満足されればよいとして,許容差1.5%を認める代わりに空気量を4%から4.5%にしたものである(表ー6参照)。
一方,寒冷地における空気量は,購入者と生産者の協議事項として自由に指定できること,寒冷地の定義が曖昧なことから本文中には示されていない。

(6)試料の採取方法の見直し
製品検査の試料採取方法はJIS A 1115(まだ固まらないコンクリートの試料採取方法)によることになっているが,この方法ではトラックアジテータの排出されるコンクリートから定間隔に3回以上採取するものとし,排出の初めと終わりの部分から採取してはならないことになっており不合格の場合の処置が難しい。従って,今回の改正では,先行排出方式(最初に排出される50~100ℓを除きその後のコンクリートから採取)を採用することとなった。
全生工組連では,コンクリートの試料採取方法の確認実験を平成4年7月に全国規模で実施し,表ー7および図ー1の結果を得た。
この実験結果に基づき,委員会で審議された結果,先行排出方式が採用されるに至った。

(7)スランプと空気量の再検査が可能
スランプおよび空気量の検査は,従来1回限りの試験で判定されていたが,今回の改正で再検査できることになった。
ただし,トラックアジテータ内のコンクリートの品質が所定の値を満足していてもスランプ試験のミスやエアメータ容器の上面のならし方やフランジ部分の拭きとり不良などから生じる試験誤差がその対象になるものであるから,再試験が行える許容範囲は自ずと限られるものとしている。
(8)その他改正事項
1)工場添加タイプの流動化剤(高性能AE減水剤)の取り扱いについては,旧JISの混和材料の文章構成を改め,①コンクリートおよび鋼材に有害な影響を及ぼすものであってはならない。②使用する混和材料は,購入者の承認を得なければならない。という二つの条件に適合すれば使用できるようになった。①の条件については,土木・建築両学会の品質規準(規格)を満たすことで,購入者が使用指針に基づく使い方をすれば問題がないことになった。
2)材料の計量誤差の計算はJIS Z 8401「整数の丸め方」によって整数に丸めることに改められた 。
3)コンクリートの単位容積質量試験(JIS A 1116)に空気量測定容器を用いてもよいことになった。
4)SI単位表示をされているコンクリート強度試験機の取り扱いについては,平成7年3月までは,現在の単位を用いることとし,その場合の換算方法はSI単位の荷重を9.80665で除したものとする。
5)附属書1「レディーミクストコンクリート用骨材」の土木用と建築用骨材との2本立てを廃止した。
 天然の砂利・砂については,従来,土木用骨材では細骨材・粗骨材といい,建築用骨材では砂利・砂といって品質規格も別々の規定になっていたが,改正では砂利・砂と称することとし,粒度や品質についても一本化された。
6)附属書9「レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水」の上水道水および上水道水以外の水の品質について,水道法第4条に基づく品質の項が全て削除された。
7)骨材のアルカリシリカ反応試験方法について今回の改正では「原則として化学法で行って判定し,その結果,無害でないと判定された場合はモルタルバー法によって試験を行って判定すること」が明記されることによって試験法の優先順位が明確化された。また,化学法による試験を行わないでモルタルバー法で試験し判定してもよいことになった。
8)コンクリートの用語・記号の一部が改正された。JIS A 5308の改正において用語の改正が行われると同時に,関連規格の用語・記号も修正されたので次表に示す。

9)普通コンクリートのスランプ21cmの取り扱いについては,従来,JIS A 5308の解説に「水中コンクリートに適用できる呼び強度に限る」と記述されており,用途の確認を必要としていたが,今回の改正内容からこの表現は削除され,生産者は購入者に対し用途の確認をする必要性がなくなった。

3 おわりに
審議未了として積み残された案件の①付着コンクリートに関する件,②高流動コンクリートに関する件,③製品検査の見直し,④再生骨材の件などについては次回改正に向けて継続審議中になっている。
文末になりましたが,本稿の執筆に際し,レディーミクストコンクリート専門委員会委員の武山信氏(全生工組連技術部長)には,委員会審議内容,全生工組連調査結果など多数の資料提供並びに執筆内容についてのご指導を賜りました事,深く謝意を表します。

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