九州の道路トンネル数と坑門の形
九建設計株式会社
技師長
技師長
天 本 初 良
まえがき
九州の道路トンネルの写真撮影を思い立ち,平成6年4月から平成7年12月まで撮影行脚を重ね,国道365本,高速道路96本,有料道路37本,県・市町村道64本,計562本のトンネルを収録することができました。
これらの写真を眺めていますと,トンネルの断面の大きさ,長さ,そして坑門の姿などに時代の流れを感じ,まとめてみました。
1 九州のトンネル数
平成7年12月末現在,供用中の九州・沖縄の道路トンネルを,撮影に用いた索引と各県のトンネル台帳から集計しますと,表ー1のとおりです。
2 坑門の形
九州・沖縄の国道トンネルに採用されている坑門の形式は,表ー2のように分類できます。
面壁型の重力・半重力式とウィング式は,形が似ており,目視では判別しにくいので,ここでは一括して面壁型としました。
国道トンネルの場合の形式別採用数は,表ー2の下段の数字で示します。
面壁型は,坑口付近が,両切土工の場合や非対称地形の場合に用いられ,比較的なだらかな地形の場合,アーチウィング式や両肩落しウィング式が用いられているようです。
尾根状の地形で,左右の切土が比較的小さい場合や凹型地形で,押え盛土を必要とする場合に,突出型の半パラペット式,突出式,竹割式が用いられています。
九州の場合,圧倒的に面壁型が多く,およそ88%を占めています。
平成以降は,坑門周辺を修景して,圧迫感,違和感の少ない竹割式とアーチウィング式の採用例が多くなってきているようです。
3 年代別トンネルの施工延長と坑門形式
高速道路,有料道路のトンネルは,昭和35年以降の施工ですから,国道トンネルについて,年代別に施工延長を集計し,用いられている坑門形式を調べてみました。その結果は,表ー3のとおりになりました。
太平洋戦争前に完成し,現在も供用中のトンネルの坑門は,面壁型の石造アーチ式が多く,中には,柱状塔を付加したものもあります。
太平洋戦争から戦後処理が行われた昭和25年までの10年間に,施工されたトンネルはありません。昭和26年から昭和60年までの35年間は,第1次から第9次の道路整備五箇年計画により,国道の一次改築,二次改築を急いだ時代で,トンネルも242本,施工されています。
工事面では,掘削地山を木製や鋼製の支保工で下から支える工法がとられた時期で,坑門も半重力式が主流で,突出式が数本採用されています。
昭和50年代になって,アーチウィング式や竹割式が採用されています。
昭和60年以降は,第4次全国総合開発や第10次道路整備五箇年計画のもとで,比較的高規格の線形をもつトンネルが建設され始め,トンネル工法も,掘削地山を下から支える代わりに,掘削と同時に,吹付コンクリートで掘削面をシールするいわゆるNATMに移行し,平均500m超級のトンネルが,104本施工されています。
坑門の形式も,トンネル本体に剛結したウィング式が主体となり,アーチウィング式や竹割式などが用いられています。
平成になって,面壁を化粧型枠による造形やアートレリーフによって,コンクリート面を小さく見せ,トンネル突入時のドライバーの眩惑現象,心理的に生ずる圧迫感,抵抗感を緩和するデザインが採用されています。その一例が,写真ー7のアートレリーフ付坑門です。
あとがき
坑門の形式別に整理した写真を一般の人に見せ,どの形がよいか尋ねたところ,その人の好みにより,竹割式,アーチウィング式,半パラペット式では順番が入れ替わりますが,大休,①竹割式②アーチウィング式③半パラペット式④突出式⑤面壁型の順になりました。