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気泡セメント(エアーミルク)による軽量盛土施工について

建設省鹿児島国道工事事務所
 加治木出張所長
(前・建設省熊本工事事務所
 建設監督官)
岡 元 次 男

建設省熊本工事事務所
 工務第三課主任
井 上 智 介

1 はじめに
国道57号立野拡幅事業は,阿蘇カルデラの西縁部(外輪山西)に位置しており,現道2車線を4車線化する拡幅事業である。工事箇所は,阿蘇外輪山部が下刻作用を受け,現道との標高差が約130mある白川水系の峡谷黒川沿いで,事業区間の中で最も狭隘で急峻な地形部となっている。
また,表層部5m程度の地質は降下火山灰(赤ボク・黒ボク)を多く含んでおり,自然含水比が100~150%と高含水の不安定な軟弱粘性土層で,その下部は転石を含む段丘堆積物層からなっている。
このような地盤上に盛土を行うため,通常の土砂類の盛土材では載荷荷重が大きく地盤が円弧滑りを起こすため,これに対して何らかの安定対策が必要となった。
そこで,単位体積重量が土砂類の1/3~1/4に軽量化されたエアーミルクによる「気泡セメント盛土工法」によって自立盛土体(硬化後)を形成し,地盤への応力負担を軽減し安定させる方法を採用したものである。

2 工事の概要
工事名 :熊本57号立野地区改良(その3)工事
工事場所:熊本県阿蘇郡長陽村大字立野
設  計:日鉄鉱コンサルタント株式会社
施工業者:利光建設工業株式会社
 (協力業者:麻生フォームクリート株式会社)
施工工期:(自)平成6年3月17日
     (至)平成7年3月30日
  (気泡セメント盛土実施期間:11月~3月)
主要工種:気泡セメント盛土区間延長L≒80m
     路体盛土・・・・・・・・・・(820m3
     路床盛土・・・・・・・・・・(570m3
     気泡セメント盛土・・・・・(4,970m3
     壁面材・・・・(デザインパネル460m2
     H型鋼支柱・・・・・(亜鉛メッキ11t)
     透水・不透水シート・・・・(1,750m2
     アスファルト乳剤散布・・・(1,690m2
     L型プレキャスト擁壁・・・・・(71m)

3 地質の性状
上位から崖錐堆積物,φ10cm程度の転石を含む降下火山灰(赤ボク・黒ボク),最大φ1m程度の転石が介在する段丘堆積物,米塚溶岩(輝石安山岩)からなっており,特に降下火山灰を含む表層部5m程度は自然含水比が100~150%と高含水で,N値も2~7程度の不安定な軟弱粘性土層である。

4 盛土の安定計算および工法の選定
(1)盛土(土砂)による地盤の安定検討
盛土に先立ち,地質ボーリング調査およびN値の測定,不攪乱試料の採取を行い,室内試験により土質定数を決定し補強土壁(テールアルメ)盛土構造における地盤の安定検討を行った。
その結果,地盤の円弧滑りにおいて最小安全率がFs=0.48~0.75となり,設計安全率Fs=1.2を大きく下回ったため,土砂による盛土が不可能であり,地盤に対して何らかの安定対策が必要となった。
(2)盛土工法の選定(比較検討)
対策工法として,地盤を改良した上に補強土壁(テールアルメ)構造の盛土を行う深層混合処理案と,盛土体そのものを軽量化する軽量盛土案について比較検討を行った。
その結果,深層混合処理工法は転石を含む地質により施工が不可能であるため,軽量盛土工法の中から軽量で施工性に優れ,経済的にも類似工法のEPS工法に比べ約半分程度であるエアーミルクによる「気泡セメント盛土工法」を選定した。
(3)エアーミルク盛土による地盤の安定検討
盛土形状の異なる3断面について,設計安全率を満足するエアーミルク盛土断面を,円弧滑り計算によりトライアルし決定した。
その結果,常時でFs=1.24~1.62>1.2,地震時でFs=1.03~1.20>1.0となった。

5 エアーミルク盛土の施工
(1)施工概要図

(2)エアーミルクの施工仕様(配合および品質規格値)
エアーミルクの配合および品質規格値は,表ー1で行った。

(3)エアーミルク盛土の施工
① 保護壁(壁面材)
壁面材は,エアーミルク打設時の型枠を兼ね,H型鋼(H-150亜鉛メッキ)を基礎コンクリートにクレーンにて建て込み,アンカーボルトで固定し,壁面材をクレーン等で取り付ける。
なお,壁面材は「阿蘇くじゅう国立公園」区域内のため,景観を配慮し建築用デザインパネルを使用した(図ー4,写真ー1)。

② 防水および排水対策
エアーミルクヘの吸水(地下水・降雨水)防止のため,切土法面と底面に透水および不透水シートを設置した。不透水シートは透水シートヘのエアーミルク侵入防止を兼ね,シート重ね継手部はガムテープ張りを施した(透水シート:t=10mm,不透水シート:t=0.2mm)。
また,天端および盛土法面はアスファルト乳剤を散布し,施工途中の降雨による防水はブルーシート張りで対処した(散布量:1.2ℓ/m2
③ 補強材(滑り抵抗杭)
切土法面部(勾配1:1.0)の滑動に対する補強として鋼管を打設した(φ50×1,000 1本/4m250cm打ち込み)。

④ エアーミルクの製造
エアーミルクは,配合設計により,起泡剤溶液を発泡器の中に圧縮空気と一緒に強制的に吹き込み,あらかじめ気泡群を発生させ,これを別系統で作製したセメントミルクと機械的に混合して作製する。

⑤ 起泡剤
起泡剤は,中性である動物性蛋白質のマールP液を使用した。
⑥ 品質管理
エアーミルクの品質管理は,表ー2の総括表のとおりとなった。

⑦ エアーミルクの打設
1回当りの打設高は,組立型枠(木製)が必要な箇所では50cm,直接地山および壁面材に囲まれる部分は60cmを標準とした。
また,打設量は1日当り6~200m3となった(平均打設量=4,970m3/71日=70m3/日)。
⑧ 濁水処理(配管内残留物)
毎回打設後の配管内残留物は,圧送水で沈殿槽に送り,セメント分を沈殿させ,上面水を水槽に返した後,硬化後ピックで除去し,土のう袋詰めした後,全打設完了後まとめて産業廃棄物処理場ヘ搬出した(土のう袋:30袋弱/日 配管長により増減する)。
⑨ エアーミルクの寒冷養生対策
現場は標高約400mで,施工時期が冬期であることから凍結が心配されるため,単管パイプ組立のブルーシート張りによる密閉を行い,ジェットファンヒーター2台で送風保温養生を行った(内気5~24℃,外気:ー3℃)。

6 まとめ
施工上大きな問題点はなかったが,利点および留意点・改善点等を述べると下記のとおりである。
(1)施工上の利点
① エアーミルクは,流動性が良く複雑な地形でも簡単に施工ができ,また,気温にもよるが打設後10~15時間程度で型枠建て込み作業(H=50cm,60cm)ができる強度に硬化するため,連日の打設が可能であり,施工範囲も自由にブロック化できるため施工性が良い。
② 打設後のホース内残留物(産業廃棄物)は,沈殿槽内の上面水を循環水として再利用できるため処理量が少ない(約0.006m3/m3・全打設量の0.6%)。
③ 経済性は,類似工法のEPS工法に比べ約半分程度なので経済的である。特に,今回のような用地等の制約を受け,狭小箇所である場合には有利である。
(2)留意点・改善点等
① 保護壁(H型鋼+壁面材)の施工
壁面材は,H型鋼の底面をアンカープレートでコンクリート基礎に固定しているが,H型鋼の高さが4~5m程度になると壁面材自重(全高先行設置)により,外側(壁面材側)に5~15cm程度の傾きが見られた。このため,チェーンブロック等によりH型鋼の天端を引き寄せ,倒れの防止を行った。
壁面材は,施工高が高くなると分割施工が必要と思われ,最大高を極力抑えるとともに,H型鋼を一体的に連結しチェーン・ターンバックル等によって安定を保った方が安全である(今回最大施工高:10.8m,今回分割最大施工高:60cm×5枚=3m)。
また,今回は建築用パネルを使用したが,工期短縮を図るには打設高アップが必要であり,高強度材質の壁面材の研究開発が望まれる。

② エアーミルクの打設
1回当りの打設高は,壁面材に囲まれる部分は60cmを標準としたが,工程短縮を図り1.5m打設したところ,壁面材のゼットクリップ定着部が打設終了直前に破壊されてエアーミルクが流出したため,施工に手戻りを生じた。
この様なことから,打設高を上げる場合は壁面材の耐力計算を行うか,背面からの支保工を行う等の対策が必要と思われる。
③ 地下水および降雨排水対策
a エアーミルクは,水が浸透すると比重が増大するため,滑り対策目的の場合は気象情報に注意し,降雨対策としてシート張り等,排水に細心の注意を払う必要がある。
 そこで,吸水試験を行った結果,エアーミルク硬化後の強制吸水比重は0.8程度であったため,防水対策を講じていれば自然状態での比重の上昇は心配ないと思われる。
b 切土法面の降雨排水は,図ー7のように敷設された透水シートに浸透させたが,このためには,不透水シートの先行施工は極力避けた方が良いと思われる。

c 上面防水のアスファルト乳剤,は1.2ℓ/m2散布したが,透水試験の結果から判断すると,今回の散布量で防水効果は十分であると思われる。
d 切土法面の滑り抵抗杭シート破断部からの地下水の漏水を懸念したが,排水状況現場実験の結果,透水シートの通水性が良いためか破断部からの漏水はなかった。
e エアーミルク打設中および直後の降雨対策は,打設面積が広くなると排水対策が大規模となり,打設中止および仮設対策について何らかの基準が必要である。
④ 品質管理
エアーミルクの圧縮強度試験は,コンクリートに準じ全打設日について行ったが,日打設量が少ない場合もあり,また,高強度を要しないため簡素化することが考えられる(圧縮強度試験:77回)。
気泡作製時の起泡剤と希釈水の調合管理は,調合後の手動による重量計測管理のため,各々に自動計測装置を設置する等,施工管理の工夫が必要と思われる。
⑤ 寒冷養生対策
寒冷時期における打設厚が薄い場合は,打設端部において若干養生が行き届かないため硬化に不安を感じた。特に,打設面積が広くなると万全の養生対策が必要と思われる。
⑥ 濁水処理(ホース内)
打設後のホース内残留物は,エアーミルク1m3当り0.006m3と少なく,また,厚生省の見解により汚泥としているが,コンクリート骨材的取扱いとして再利用の方向で調整できれば産業廃棄物の発生がない。

7 おわりに
斜面部の滑りは,法面勾配が1割のため安定を前提としており,地盤の挙動に対する予測検討は行わなかったため,滑り抵抗杭は過去の実績により配置している。その後,孔内傾斜計および沈下板による動態観測を行っているが,大きな変位は見られない。今後も九州技術事務所との協力のもとに観測を継続し,調査結果を取りまとめていくものである。
なお,本工法はすでに各公共機関および民間で多様な目的で実施されており,今後の調査研究で施工性の確立が図られれば,軟弱地盤や特殊盛土など多種の工事での汎用が期待できると思われる。

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