高規格道路の整備効果
~志布志 港が宮崎道へ直結~
~
国土交通省 九州地方整備局
宮崎河川国道事務所
計画課長
宮崎河川国道事務所
計画課長
石 橋 隆 夫
キーワード:都城志布志道路、整備効果、ストック効果
1.はじめに
都城志布志道路は、宮崎県都城市を起点に鹿児島県曽於市を経由し鹿児島県志布志市に至る延長約44kmの地域高規格道路であり、九州縦貫自動車道宮崎線都城インターチェンジと国際バルク戦略港湾である志布志港を結ぶことにより、広域ネットワークを形成し、物流の効率化や救急医療活動の支援、防災対策機能の強化等が期待されている。
その一部を構成する国道10号都城道路は延長約13.4kmの自動車専用道路であり、都城市街地の交通混雑緩和や沿道環境の改善等が期待されている。
本稿は、都城志布志道路の一部を構成する国道10号都城道路の開通によって期待されるストック効果について述べるものである。
2.路線の概要
(1)都城志布志道路の概要
都城志布志道路は、全線約44kmのうち、国土交通省の事業区間(延長13.4km)、宮崎県の事業区間(延長8.6km)、鹿児島県の事業区間(延長22.3km)で構成される。
平成17年2月に、最初の開通区間として、鹿児島県内の末吉IC ~松山IC 間が開通して以降、随時各区間が開通し、宮崎県と鹿児島県の県境を跨ぐ金御岳IC ~末吉IC が令和3年3月に開通したことにより、宮崎県事業区間は全線開通した。
鹿児島県区間は令和5年度末時点では供用率が約86% となっており、未供用の区間は志布志IC と志布志港を結ぶ区間となっている。
都城志布志道路は、都城IC ~乙房IC間が令和7年2月に、志布志IC ~志布志港間が令和7年3月に開通することとなり、最初の開通から約20年で全線開通することとなった。
(2)都城道路および都城道路(Ⅱ期)の概要
都城道路および都城道路(Ⅱ期)は、都城志布志道路のうち、五十町IC ~都城IC 間を国土交通省の直轄事業として事業化した区間である。
平成12年度に五十町IC ~乙房IC 間(延長7.7km)をⅠ期区間として事業化し、平成24年3月に五十町IC ~平塚IC 間、平成31年3月に平塚IC ~横市IC 間(延長2.8km)と順次暫定2車線で開通し、令和4年3月に横市IC ~乙房IC 間(延長約3.0km)が暫定2車線で開通した。
残る乙房IC ~都城IC 間(延長5.7km)は都城道路(Ⅱ期)として、平成19年度に事業化し令和7年2月の暫定2車線で開通、また、令和7年3月には鹿児島県が進めている志布志道路が供用し、全線で供用開始することとなる。
3.都城道路の整備効果(直接効果)
(1)混雑緩和
都城市街地を通過する一般国道10号は、主要渋滞箇所が連続しており、日交通量が3 万台と非常に多いことから、市街地中心部にあたる平江(仮)交差点~甲斐元交差点間では、旅行速度が20km/h 程度に低下するなどの慢性的な渋滞が発生している。
都城道路の整備により、一般国道10号の交通が都城志布志道路に転換することで、都城市街地の交通混雑が緩和することが期待される。
交通混雑の緩和が図られることにより、市街地の旅行速度の向上が図られるほか、渋滞に起因する追突事故の減少や環境負荷の軽減も図られることが期待される。
(2)所要時間の短縮
都城市~志布志市間が自動車専用道路で結ばれ
ることにより、未整備時に約69分であった所要時間が、現在は約52分、今回の全線開通により約38分となり、未整備時から約30分の時間短縮が図られる。
4.都城道路の整備効果(ストック効果)
(1)物流効率化
都城志布志道路の起点に位置する宮崎県都城市は、畜産業産出額が全国1位(令和4年)となっており、地域を支える重要な産業となっている。
一方で、都城志布志道路の終点に位置する鹿児島県志布志市の志布志港は、九州最大の飼料ターミナルであり、志布志港周辺の工場から都城志布志道路を利用して配合飼料(家畜のえさ)を九州各地に輸送している。
都城志布志道路の開通により、速達性の高い物流網が構築され志布志港から都城IC 間の輸送時間が大幅に短縮し、物流の効率化が図られることにより、地域にとって重要な産業である畜産業の振興と地域経済の活性化が期待される。
(2)雇用の促進
都城志布志道路の整備に伴う物流環境の向上も後押しとなり、都城市では平成23年以降169社の企業が進出しており、約4,400人の新規雇用が創出されている。
また、企業立地が進んだ地域においては、子育て三ツ星タウン3つの完全無料化の効果もあるが、小学校児童が大幅に増加する状況となっている。
都城道路の開通により、九州縦貫自動車道と東九州自動車道を結ぶ強靭な高規格道路ネットワークが形成されることを見据え、交通結節拠点である都城ICや志布志港周辺では新たな工業団地の造成が行われており、今後、さらなる定住人口の増加や地域経済の活性化が期待されている。
(3)医療活動の支援
第二次救急医療施設である都城市郡医師会病院では、都城志布志道路の段階的な開通に伴い、串間市、日南市等の都城市外や、曽於市、志布志市等の宮崎県外からの来院者数が増加傾向となっている。
都城志布志道路の開通により、県境を越えたサービスレベルの高いシームレスな高規格道路ネットワークが形成され、志布志市等の宮崎県外から都城市郡医師会病院へのアクセス時間の短縮による救命率の向上が図られることが期待される。
また、宮崎市街地に位置する第三次救急医療施設への円滑な搬送に寄与することで、地域医療の支援に役立つことが期待される。
(4)リダンダンシーの確保
近年、台風等の大雨時に道路が冠水する被害が発生しており、国道10号においても、平成30年、令和元年に通行止めが発生している。都城志布志道路の整備により、冠水時にも迂回可能なルートが確保されることで、国道10号を通過する交通の代替路として機能することが期待される。
5.地域期待の声
都城志布志道路の整備効果の検討にあたって、地域の関係者の皆様へのヒアリング調査を実施するなかで、たくさんの都城志布志道路への期待の声をいただいた。
無料の高速道路として地域に利用していただける都城志布志道路の全線開通は、今後の地域活性化へ役立つものと期待している。
6.おわりに
都城志布志道路のうち国土交通省の直轄事業として整備した都城道路(13.4km)は、平成12年度に事業化して以降、順次開通してきたが、令和7年2月の乙房IC ~都城IC 間の開通により、全線開通することとなった。
これまで事業にご協力いただいた地域住民の皆様をはじめ、事業に関わられた関係者各位に心よりお礼申し上げたい。
道路は開通して以降、いかに地域のために活用してもらえるか、安全・安心に利用していただけるかが重要であるため、適切な維持管理を含めて利活用に取り組んでいきたい。
宮崎河川国道事務所では、東九州道の整備、国道10号、国道220号の改築事業、防災事業等を推進中であるため、引き続き事業推進にご協力をお願いしたいと考えている。