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三光さんこう本耶馬渓ほんやばけい道路(田口IC~青の洞門・羅漢寺らかんじIC)の
開通に伴う整備効果について

国土交通省 九州地方整備局
大分河川国道事務所
計画課長
矢 野 浩 道

キーワード:中津日田道路、三光本耶馬渓道路、整備効果、開通式典

1.はじめに
三光本耶馬渓道路は、高規格道路「中津日田道路」の一部を構成し、大分県中津市三光から同市本耶馬渓町に至る延長12.8kmの自動車専用道路である(図- 1)。平成19年度に事業化され直轄権限代行で整備を行っており、平成31年3月に中津IC~田口IC間の延長2.8kmが開通、先般、令和6年3月24日(日)には田口IC~青の洞門・羅漢寺IC間の延長5.3kmが開通し、延伸区間となる青の洞門・羅漢寺IC~本耶馬渓IC間延長4.7kmについても早期開通に向けて事業推進中である(図- 2)。
本稿では、今回開通した田口IC~青の洞門・羅漢寺IC間延長5.3kmの概要、期待される整備効果や、開通までの各種取り組み、開通1か月後の交通状況について報告する。

図1 広域図

図2 位置図

2.期待される整備効果
(1)信頼性の高い道路ネットワークを構築
国道212号は中津市~日田市を結ぶ唯一の道路であり、災害に強い道路として緊急輸送道路ネットワークの信頼性の向上が期待される。
三光本耶馬渓道路に並行する国道212号では、平成24年以降、災害により年間平均約9日の全面通行止めが発生するなど脆弱な道路である(図- 3)。 
令和5年7月の豪雨では、路肩崩落が発生し全面通行止めとなったが、既に供用している本耶馬渓耶馬溪道路等が「代替路」となり、円滑な物流が確保された(写真- 1)。 
今回の開通により、更なる災害に強いネットワークの構築に寄与する。

図3 国道212号の通行規制状況(H24~R4)及びR5年7月豪雨による通行規制箇所

写真1 R5年7月豪雨による被災状況

(2)救急医療施設等への円滑な救急搬送を支援
耶馬溪地域は救急患者を受け入れる病院がなく、救急患者のうち約7 割が中津市中心部への病院への搬送となっている。
しかし、搬送ルートである国道212号は急カーブが多く救急患者への負担が大きいことに加え、搬送時間の長さが課題となっている。
今回の開通により走行性向上による救急患者への負担軽減や、搬送時間の短縮による救命率の向上が図られるなど、円滑な救急搬送を支援する(図- 4)。 

図4 中津市内の病院への救急搬送ルート

(3)観光振興を支援する広域観光ネットワークの形成
中津市、日田市は青の洞門をはじめ、一目八景、豆田の街並みなどの観光資源を有しており、周辺地域には、別府温泉など九州有数の観光地が存在している。
今回の開通により、中津市~日田市の所要時間が短縮し、新型コロナウイルスによる影響から回復傾向にある沿線地域の観光を支援するとともに、今後中津日田道路が整備されることで福岡方面や別府市・由布市などの沿線地域外まで周遊範囲が拡大し、広域観光ネットワーク形成が期待される(図- 5)。

図5 沿線地域外への広域観光ネットワークが形成

3.開通に向けた各種取り組み
(1)橋梁上ペイント
舗装前の橋に地元の本耶馬渓中学生のみなさんで絵を描くイベントを実施した(写真- 2、3)。

写真2 橋梁上ペイントの状況

写真3 ペイント後の記念写真

(2)橋名板取り付け
開通区間にある4つの橋梁の橋名板作成にあたり、地元の樋田小学校・本耶馬渓中学校の生徒のみなさんに橋の名前等を書いていただき、作成した橋名板を自らの手で取り付けを行うイベントを実施した(写真- 4)。

写真4 橋名板取り付けの状況

(3)書道イベント
開通区間にある跡田川橋において、地元の中津北高校書道部のみなさんによる書道パフォーマンスを実施した(写真- 5)。

写真5 書道イベントの状況

(4)開通式典の概要
令和6年3月24日には、15時の一般開放に先立ち、本耶馬渓中学校の体育館と青の洞門・羅漢寺IC本線上にて開通式典を実施した(写真- 6)。
まず、体育館にて九州地方整備局長の式辞に続き、共催の大分県から知事が挨拶、国会議員から祝辞を頂いた後、これまでの工事経緯や地域の方々からの三光本耶馬渓道路に期待する声等をまとめた開通記念動画を放映(図- 6)した。
最後に中津市から副市長の謝辞を頂いた。 

写真6 本耶馬渓中学校体育館での式典状況

図6 開通記念動画(二次元コード)

その後、青の洞門・羅漢寺IC付近の本線上に移動して、テープカットとくす玉開きを行い関係者による開通区間の通り初めを行った( 写真- 7、8)。

写真7 田口IC~青の洞門・羅漢寺IC付近本線上でのテープカット

写真8 田口IC~青の洞門・羅漢寺IC付近本線上での通り初め

4.開通区間における工事の特徴
今回開通した区間は、急峻な地形を通過することから、区間延長5.3kmのうち約7 割がトンネルや橋梁などの構造物で構成されている。
1kmを超える二つの長大トンネルは、比較的地層が安定し、湧水等の発生もなく施工できたが、土工部では施工中に「巨石」が多く発生し、その処理に時間を要した(写真- 9)。

写真9 今回開通区間における工事の特徴

5.開通1か月後の交通状況
開通1か月後の三光本耶馬渓道路 田口IC~青の洞門・羅漢寺IC(図- 7)の交通量は、約2,800台/12H となっており(図- 8)、前回開通区間(中津IC~田口IC)の交通量は約1,900 台/12H 増加した(図- 9)。
今回の開通に伴い、定留ICから日田市方面(耶馬溪下郷IC(仮称))の所要時間は約10 分短縮した(図- 10)。

図7 三光本耶馬渓道路への交通転換状況

図8 交通量の変化(B-B’ 断面)

図9 交通量の変化(A-A’ 断面)

図10 定留IC~耶馬溪下郷IC(仮称)の所要時間

6.おわりに
三光本耶馬渓道路は先述したとおり、沿線地域における災害に強いネットワークの形成や救急医療活動、また、広域観光振興の支援を目的とした事業である。
今回、田口IC~青の洞門・羅漢寺IC間(延長5.3km)が開通したことにより、部分的な開通ながら並行する国道212号から交通転換するなど、一定の整備効果がみられた。
今後も引き続き、延伸区間となる青の洞門・羅漢寺IC~本耶馬渓IC間(延長4.7km)についても早期開通に向けて整備推進してまいりたい。

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