国道横断デッキ一括架設状況のライブ配信について
SAGAアリーナと佐賀市文化会館をつなぐ国道横断デッキ
SAGAアリーナと佐賀市文化会館をつなぐ国道横断デッキ
佐賀県 県土整備部
道路課 主任主査
道路課 主任主査
古 賀 寛 士
キーワード:一括架設、ライブ配信、栄光橋
1.はじめに
佐賀県では、2024年(令和6年)のSAGA2024(国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会)の開催を契機として「SAGA サンライズパーク」の整備を進めている。
この「SAGA サンライズパーク」は、スポーツ大会の開催場所にとどまらず、コンサートなどのイベントが開催できる「SAGA アリーナ」や「憩い・にぎわう」空間を整備するなど、心地よい、心躍る空間づくりを行い、県民の夢や感動を生み出す「さが躍動」の象徴的エリアとなるよう取り組んでいる。
今回事例を紹介する「THE VICTORY WALK 栄光橋(仮称)」と名付けられた国道横断デッキ(以下栄光橋)は、「SAGA サンライズパーク」と隣接する「佐賀市文化会館」とを一体的に利用できるように、両施設の間にある4 車線の国道を跨えて安全に行き来することを目的として整備を進めており、本稿では、栄光橋の工事概要や架設時のライブ配信に係る概要などについて紹介する。
2.工事概要
工事名 :国道263 号(サンライズ工区)
道路整備交付金工事(鋼橋上部工)
施工場所:佐賀県佐賀市日の出
工 期:令和3年7月5日~令和5年3月15日
施工者 :名村・日塔建設共同企業体
工事内容:鋼床版3 径間連続ラーメン箱桁橋
橋長L=83.9m、幅員B=9.0m、重量W=335t
3.ライブ配信の概要
(1)ライブ配信を行った経緯
栄光橋の架設工事は、国道を夜間通行止めし、翌朝には国道の上空に栄光橋が出現しているという、サンライズパーク周辺の景色が大きく変わる節目となること、また、国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会開催に向けた気運の醸成や、土木の魅力、現場のモノづくりのすばらしさを伝えたいと思い、ライブ配信を行うに至った。
佐賀県では、工事状況のライブ配信を行ったことが無く、初めての取り組みであったため、私自身不安な気持ちのままスタートした。
(2)ライブ配信に係る準備
ライブ配信にあたっての準備は以下のとおり。
①施工者の協力
施工者である名村・日塔建設共同企業体へ、架設状況をライブ配信することを伝えることから始まった。
施工者としては、安全第一で施工を行うため、天候によってはライブ配信当日に架設が行えないかもしれないという可能性がありながらも、快諾していただいた。
②ライブ配信業者との調整
視聴者への見せ方については、単に工事状況の映像を流しても、間延びして飽きてしまい、誰も見ないのではということから、配信業者を手配し、施工者とともにカメラの種類、設置位置、リポーターの手配や当日のシナリオなど、どうすれば面白くなるか、どうすればみんなに見てもらえるかなど、調整を行った。土木の技術者として、慣れないことで非常に苦労したのを覚えている。
③ライブ配信の周知
ライブ配信を行うことは決まったものの、多くの人に見てもらうためには、周知を行う必要がある。手法としては、知事の記者会見、県ホームページやマスコミ各社へプレスリリース及び県の関係各課や佐賀市からの協力得て、ホームページや広報誌、ツイッターやインスタでの情報の発信、大学関係などへの周知も行った。
④施工箇所周辺への周知調整
国道を夜間通行止めし、架設を行うことから、地元への周知、周辺施設への調整が必要となる。
通行止め区間には、病院もあることから緊急時の通路の確保に関する調整、また、国道は緊急輸送道路、特殊車両通行の指定道路でもあるため事前の周知を行った。
(3) ライブ配信当日の工事概要及びスケジュール
○工事概要
国道263 号直上部分を夜間通行止めにて一括架設。橋長40m、幅9m、重量約100t(フック等含む)
○スケジュール
令和4年9月3日(土)
22:00 国道全面通行止め規制開始
22:30 550t吊クレーン設置
吊り上げ調整
9月4日(日)
1:20 頃 配信開始
1:55 旋回作業開始
2:20 設置作業完了
接合作業、550 tクレーン解体
5:38 国道全面通行止め規制解除
(4)ライブ配信
架設工事日の数日前から、台風11号の不規則な動きにより進路がなかなか見通せず、工事に影響が出ないか非常に心配な状況にあったが、配信当日は、台風の影響もなく無風で、星空がでていて架設びよりとなった。
そういう中でリポーターとのやり取りによりライブ配信がスタートした(写真- 2)。
配信開始時は、550t吊クレーンによる吊上げ調整作業を行っており、約100tの桁のバランス調整に時間を要した。バランス調整作業は当然ぶっつけ本番であり、見た目も変化がないので、完了するまでは、リポーターと説明者との工事内容についてのやり取りや、あらかじめ用意していた工場製作時の映像を挟み込み、時間調整を行った。
そして山口知事登場。説明者に加わり、栄光橋をはじめ、サンライズパークが整備され、スポーツ大会が開催されるようになることで、佐賀をスポーツで盛り上げていくなど、熱く語られた。
そのほか、9月3日は、サガン鳥栖のサッカーの試合が行われ、見事勝利したということもあり、知事とリポーターで大盛り上がり。架設には関係ありませんが(笑)(写真- 3)。
そういった話をしながら、吊り上げ調整作業が完了し、いよいよ旋回設置作業を行う段取りとなった。
旋回設置作業開始に当たっては、山口知事の合図(写真- 4)のもと、作業員が大きく腕を回して旋回設置作業が開始した。
吊り上げられた橋桁は、ゆっくりと確実に目標へ向かい(写真- 5)、新たな所定の場所に据え付けられた。
この間、約25分、多くの作業員が協力して、架設していく光景に感動を覚えた。
ライブ配信はここまで。架設作業は無事に完了し、桁の固定作業やクレーン解体など国道の規制解除に向けて作業をはじめた。
早朝には通行止めを解除し、昨日までと異なる新しい景色が出現した。
個人的には、無事に架設が完了したことに本当に安堵したことを覚えている。
現在、栄光橋は引き続き工事を行っており、令和5年3月に完成する予定である。
(5)視聴者の状況
気になるライブ配信の視聴者の状況は以下のとおりである。
・最高同時視聴者数 1,164 人
・視聴回数 17,146 人(11月14日現在)
・視聴年代
13 ~ 17 歳 0.6% 18 ~ 24 歳 8.4%
25 ~ 34 歳 13.3% 35 ~ 44 歳 23.7%
45 ~ 54 歳 30.5% 55 ~ 64 歳 15.2% 65 歳以上 8.3%
13 ~ 17 歳 0.6% 18 ~ 24 歳 8.4%
25 ~ 34 歳 13.3% 35 ~ 44 歳 23.7%
45 ~ 54 歳 30.5% 55 ~ 64 歳 15.2% 65 歳以上 8.3%
・性別 男性 68.8% 女性 31.2%
深夜の工事の生中継で、この数字が多いか少ないか判断できないが、個人的には、女性の視聴者が比較的多かったのが印象的であった。
4.反省
(1)予備日について
今回の架設は9月4日(日)の深夜に予定し、荒天時などは翌日に順延し、9月5日(月)を予備日としていた。
今回は、台風の進行が遅く、9月4日に無事架設が出来たが、台風により2日とも架設できない場合を想定しておらず、通行止めの申請(特車の申請含む)を2日間としていたことから、場合によっては、架設できなかったかもしれなかった。
今後はこういった事態を想定した予備日の設定を行っていこうと思った。
(2)見物客への対応
架設箇所の沿線には病院や個人宅があること、架設時間が深夜ということから、ライブ配信とし、見物客は現場内に入れないこととしていたが、ライブ配信を周知したことで、通行止め規制箇所に見物客が押し寄せ、危険な状況となった。
このため、見物客の安全を確保するため、現場付近まで見物客を入れることとなった。
事前に、見物客を想定し、スペースを確保するなど対策を行うべきであった。
5.おわりに
佐賀県では、国道を通行止めし、跨道橋の架設を行う大掛かりな工事の実績が少ないこと、また、架設の状況をライブ配信するという特殊な事業に携わることができ大変嬉しく思います。
今後も、安全な施工に努めてまいります。
また、令和5年5月13日には、サンライズパークのグランドオープンを迎えます。
スポーツ大会のみならず、コンサートやアイスショーなど様々なイベントが用意されており、令和6年には、国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会も予定されているので、その際はどうぞ佐賀県にお越しください。
今回の執筆にあたり、施工者である名村・日塔建設共同企業体をはじめ、現場監督を行っている佐賀土木事務所や関係者の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。
(補足)
現在、以下の佐賀県HP にてYouTube へのリンクを張っています。
今後は、現在アップしている動画に加え、いろいろな視点に配置したカメラ映像を編集した動画もアップする予定ですので、よろしければご視聴をお願いします(360 度カメラ撮影もあります)。
佐賀県HP
https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00386951/index.html