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熊本地震により被災した
「国道57号(阿蘇大橋地区斜面崩壊部)」の復旧について

国土交通省 九州地方整備局
 熊本復興事務所 技術副所長
鵜 林 保 彦

キーワード:熊本地震、補強土壁工法、浸食対策

1.はじめに
平成28年4月に発生した熊本地震では、一連の地震活動において震度7を二度観測するなど、これまで経験したことのない揺れが発生し、熊本県はもとより県境を越え、広い範囲で甚大な被害が発生した。熊本県南阿蘇村立野地区においては大規模な斜面崩壊が発生し、斜面下のJR豊肥本線、国道57号等の重要な交通基盤が寸断され、壊滅的な被害を受けた(写真-1)。
斜面崩壊は、長さ約700m、幅約200mにわたり、崩壊斜面の上部周辺には至る所に開口亀裂や段差が発生しており、降雨や余震等による更なる崩壊が懸念された。
二次災害を防ぐために、国土交通省九州地方整備局は、地震直後から建設ICTや無人化施工を駆使し、緊急対策工事(平成28年12月完了)を行った。平成29年1月より国道57号の有人化施工が可能となり、測量・地質調査を開始し、4月より復旧工事に着手した。令和2年8月の斜面対策工事完了後、8月8日にJR豊肥本線の運行開始、10月3日に国道57号が開通した。
本稿では、国道57号の被災状況を示すとともに、開通までに至る復旧工法の検討、モニタリング調査結果による浸食対策の実施及び、安全確認の取組みについて紹介する。

写真1 熊本地震で被災した南阿蘇村立野地区

2.被災の特徴と復旧工法の検討
(1)被災状況
被災した国道57号(約2㎞区間)は、国道325号阿蘇大橋が接続する地点から大分側は2車線、熊本側は4車線で構成されており、今回の地震により大分側の80m区間において1車線、熊本側の140m区間において3車線が欠壊した(写真-2)。
また、平成29年1月より実施した測量、ボーリング調査結果より、斜面崩壊部240m区間のほぼ全範囲で約15m崩壊し、その上に上部斜面からの崩落土砂が約5m堆積しているのが確認された(図-1)。

写真2 欠壊部の状況

図 1 斜面崩壊部の状況

(2)復旧工法の検討
交通インフラの復旧を検討するにあたり、専門家、砂防・道路・鉄道関係者で構成される「阿蘇大橋地区復旧技術検討会」(全10回)(以下、復旧技術検討会)を設置し、技術的課題を解決しつつ、復旧工事を進めた交通インフラの復旧を検討するにあたり、専門家、砂防・道路・鉄道関係者で構成される「阿蘇大橋地区復旧技術検討会」(全10回)(以下、復旧技術検討会)を設置し、技術的課題を解決しつつ、復旧工事を進めた。

1)斜面崩壊部欠壊防止対策(240m区間)
ボーリング調査結果から、熊本地震後堆積物は、地震後の崩壊土砂で非常に緩く、降雨による浸食が懸念される不安定な土塊で、構造物が構築できないため、撤去(掘削深さ4.3m)を行った。同時に、構造物構築範囲の堆積土砂撤去直下の基盤(旧崖錐堆積物(シルト/玉石互層))で構造物が構築できるかを確認するため平板載荷試験を行ったが、地耐力不足であった。簡易貫入試験により弱層部(深さ約1.5m)を確認し、排土後、再度平板載荷試験を実施し、規定値以上の地耐力があることが確認された(図-2)

図2 平板載荷試験による地耐力の確認

平成29年11月10日に開催された、「第6回復旧技術検討会」で、構造物構築について「盛土案」と「補強土壁案」の2案について検証を行った。盛土構造とした場合、高盛土構造となり旧崖錐堆積物(シルト主体)層上に盛土を構築するため、大規模地震等により盛土が緩んだ場合、崩壊のおそれがあったため、構築は困難と判断された。補強土壁構造とした場合、①旧崖錐堆積物(シルト主体)層の影響を受けない位置に構築が可能であること、②熊本地震後堆積物は撤去して置換工を行うこと、③旧崖錐堆積物(シルト/玉石互層)の弱層部は排土後に置換工を行うことで補強土壁構造が採用された(図-3)。

図 3 構造形式の検証(補強土壁案)

2)欠壊部防止対策(熊本側140m区間、大分側80m区間)
対策工法の選定は以下を前提条件として検討を行った。①崩落斜面が急傾斜で受動土圧が見込めない不安定領域線を設計地盤面とする土留め構造物を計画、②不安定領域直下の火山灰質粘性土は強度が小さく(N値2~4)直接基礎で支持できない、③早期復旧を目的とするため工期は最長でも1年以内。
検討の結果、熊本側・大分側ともに、該当する工法としては鋼管杭立込み、横矢板による土留め、岩層へアンカーを定着させる「鋼管杭土留め+アンカー工」のみとなった。「鋼管矢板自立土留め」、「杭式道路工法」等の工法も考えられたが、前者は土留め高が高くなり杭頭変位及び断面力で規定値を満足できない、後者は2年以上の工期を要する等の理由から選定には至らなかった。平成29年4月19日に開催された、「第5回復旧技術検討会」において、「鋼管杭土留め+アンカー工」が採用された(図-4)。

図 4 欠壊防止対策図(鋼管土留め+アンカー工)

(3)浸食対策
1)浸食状況
震災後約11ヶ月が経過した熊本側・大分側両欠壊部は、浸食が進行していた(写真-3)。
地震による欠壊直後の地形図(H28.4.23)と最新の地形図(H29.1.10)を重ねた結果、降雨等により約1~3m強の浸食が確認された。

写真3 降雨等による浸食状況

2)道路欠壊部の斜面モニタリング
平成29年11月10日に開催された、「第6回復旧技術検討会」で、黒川河岸部は平成28年4月の本震以降、震度4以上の余震を20回経験しており、本震直後の平成28年4月19日以降に道路付近に設置した地盤伸縮計やパイプひずみ計等による観測の結果、路面に残る亀裂は豪雨時やダンプトラック通行時に変位はあったが、地震後の余震では大きな変状はなく安定している事が確認された。ただし、黒川河岸斜面の露頭部が今後の豪雨等の影響で風化浸食等により不安定化する可能性はあるため、欠壊部の浸食等が構造物に影響が出ていないかを確認する目的でモニタリング調査を行った(図-5)。

図 5 モニタリング計画

平成30年9月5日に開催された、「第7回復旧技術検討会」で、斜面モニタリング結果から、斜面崩落感知センサー、パイプひずみ計による観測結果では大きな変動・変位はなかったが、LP撮影による観測結果から、降雨による表面の浸食が進行している事が確認されたため、構造物(欠壊防止工)を保護する観点から浸食対策を行った(図-6)。

図 6 表層崩壊のモニタリング結果

(4)モニタリング結果による黒川河岸斜面対策
浸食防止の斜面対策範囲は、道路構造物を保護する観点から鋼管杭土留工の水平必要土被り(10D(杭径の10倍))を確保する鋼管杭先端までとした(図-7)。

図7 黒川河岸斜面対策範囲

浸食防止対策工法の選定については、「道路土工切土工・斜面安定工指針」に準拠し、緑化基礎工と植生工の併用とした。
大分側については、浸食が進行し斜面勾配が1:0.6~1:1.0とやや急勾配であるため、緑化基礎工として簡易吹付法枠工(枠内植生)を選定した(写真-4)。

写真4 黒川河岸斜面の対策工法(大分側)

熊本側は、浸食が進行し斜面勾配が1:0.7~1:0.9とやや急勾配な箇所については、大分側同様、簡易吹付法枠工(枠内植生)を選定した。斜面勾配が1:0.3~1:0.6と非常に急勾配の箇所は、吹付法枠工を選定し、斜面勾配が1:2.0と平坦な箇所は植生工を選定した(写真-5)。

写真5 黒川河岸斜面の対策工法(熊本側)

3.開通に向けた安全確認について
平成30年8月に斜面崩壊部の現道再構築が概成し、令和元年8月に熊本側欠壊部対策の完了、令和2年3月には大分側欠壊部対策が完了した。その後、開通に向けた安全確認を行うためのモニタリング調査を継続し、令和2年8月6日に開催された、「第10回復旧技術検討会」で短期的な表層崩壊や中~長期的な斜面崩壊はないと判断され、全ての対策が完了した(表-1)。

表1 国道57号の安全確認期間中の観測結果

4.おわりに
 令和2年10月3日に国道57号の開通が迎えられたのは、復旧技術検討会の委員の皆様からの提案や、工事関係者により現場の忠実な施工に努めていただいた結果であり、ここに記して、感謝の意を表します。なお、対策工事の効果は確認できたものの、熊本地震による斜面崩壊等の被災規模を鑑みると、道路利用者のさらなる安全確保の観点から、当面は維持管理の運用に基づき、適切に監視・点検を実施していくことが重要となります。

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