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九州地方整備局における新技術活用の取り組みについて

九州地方整備局 企画部 
施工企画課 施工係長
松 川  浩

キーワード:新技術、NETIS、新技術活用原則義務化

1.はじめに
国土交通省においては、平成10年度よりNETIS(新技術情報提供システム)の運用を開始、平成18年度より本格運用に移行し、有用な新技術の活用促進を図るため、種々の施策を実施している。建設現場におけるイノベーションの推進や生産性向上を図るため、新技術、新工法、新材料の導入、利活用の加速化を図るため、今年度より直轄土木工事において新技術活用を原則義務化することとなった。
本稿では、前半にて「新技術活用原則義務化」の概要の紹介、後半では九州地方整備局九州技術事務所にて行っている新技術活用促進の取組について報告する。

2.「新技術活用原則義務化」の概要
2-1 新技術の定義の変更
今回、新技術活用原則義務化を実施する目的は、建設現場におけるイノベーションの推進や生産性向上を図り、2025年までに建設現場の生産性の2割向上を目指すこととしている「i-Construction」推進に伴うものであり、直轄工事においてICT活用を推進するとともに、新技術の活用促進と新たな技術開発の活性化の好循環を起こし、生産性向上や激甚化・頻発化する災害への対応、最新技術を活用する産業として担い手確保等に資することを主眼としている。
これまでの新技術の定義は「新技術情報提供システム(NETIS)」に登録されている技術の活用のことと広く認識されているところだが、今回、上記目的に鑑み定義が変更されている。
これまでの新技術の定義は図-1に示す①~③に該当する技術(=NETIS登録技術)であったが、今回「④実用段階に達していない技術又は要素技術など研究開発段階にある技術であって国により導入促進を図る技術」が追加された。
これにより、「新技術」の定義がこれまでと比較しより広義なものとなり、「NETIS登録技術」だけでなく「ICT技術」「BIM/CIM技術」「ニーズ・シーズマッチング技術」「新技術導入促進(Ⅱ)型技術」等も該当することとなった。これら広義の新技術を直轄土木工事の現場で必ず活用することが今回の「新技術活用原則義務化」の主旨である。

2-2「活用の型」の新設・見直し
前述の新技術定義の変更に伴い、新技術活用の型についても見直しが行われている。
これまでの新技術活用は6つの活用の型があるが、そのうち「発注者指定型」「施工者希望型」の2つの型で主に運用されていたところである。
今回の改訂にて、この2つの型が下記の4つの型に見直しが図られた(図-2参照)。

1)ICT活用型【新規】
i-Construction・BIM/CIM等にてICT関連技術を活用する方式
2)発注者指定型
従来の発注者指定型と同様、発注者が新技術を指定して発注する方式
3)発注者指定型(選択肢提示型)【新規】
発注者が特定のテーマにおける新技術を発注時に複数提示し、施工者が契約後に活用する技術を選択する方式。
4)施工者選定型【新規】
従来の施工者希望型と同様、受注者が活用したい新技術を選定して活用する方式。

これまでは施工者の「希望」により活用の可否が決められていたが、活用原則化により上記1)~3)の活用が対象外となる場合本方式で活用することとなり、必ず施工者が「選定」することとなるため、名称が「希望型」から「選定型」に変更となっている。
今回、上述の通り大幅な変更がなされていることから、発注者・施工者・コンサルタント会社等内外に広く周知を行っていくことが重要である。そこで、九州地方整備局で実施している新技術新工法説明会などの各種イベントを始め、各事務所へ赴いての説明会や関係各業団体との意見交換会などを通じ今回の改訂内容を周知徹底していく所存である。

3.九州技術事務所における新技術活用促進の取組
3-1 『モデル施工』の試行実施
3-1-1 取組の背景
NETISに掲載されている新技術は掲載期間が定められており、直轄工事での活用件数が一定数を超えた新技術は、事後評価を受ける(評価結果が開発者にフィードバックされることで技術のスパイラルアップを期待する狙いがある)とともに掲載期間が登録後最大10年間まで延長されるが、活用が少ない技術は事後評価を受けることなく登録後5年間で掲載終了となる。
このような未評価技術は全国の新技術のうちおよそ70%もあり、しかもそのうちの70%程度は登録後から一度も活用されておらず、これらの未活用技術、未評価技術の更なる活用促進を図ることが課題となっている(図-3)。

未評価技術の活用が少ない原因としては、事後評価が無く開発者によるNETIS申請情報だけでは効果がイメージしづらいこと、活用実績の少なさから技術の活用に二の足を踏んでいること等が考えられる。

3-1-2モデル施工の実施
(1)モデル施工の概要
前述の課題をふまえ、未評価技術の活用促進のため『モデル施工』を試行した。
モデル施工とは、九州技術事務所内のスペースに公募した未評価技術の実物モデルを施工してもらい、事務所の来訪者等に施工状況を見て・触れてもらうことで現場への適応性を確認してもらうことを目的とした取り組みである。

(2)対象技術の選定
今回の対象となる技術は、厳しい財政状況による管理費用の減額から定期除草の回数や範囲の縮小を強いられ、地域住民の満足する管理ができずに苦情や管理瑕疵への対応に苦慮している除草工事に対し、効率化・低コスト化に寄与する技術として「防草技術」を対象に公募・試行することとした。
防草技術の多くは施工後数年間にわたり雑草の繁茂そのものを抑制するメンテナンスフリーの技術であるが、モデル施工によってそれぞれの技術の特徴を目で見て、手で触れることで、より技術の有効性が実感できるようになると考えた。

(3)モデル施工の実施
モデル施工で公募する技術の条件は「NETIS掲載中の未評価技術」とし、これに該当する防草技術を調査したところ、①シート系防草技術(シートで地表を覆うことで雑草を抑制)、②土系舗装(土系舗装材を敷き均し、転圧し固めることで雑草を抑制)、③目地系防草技術(舗装と縁石等の隙間から生える雑草を抑制)の3系統に分けることができた。
施工箇所は各技術が効果を発揮しやすい場所を九州技術事務所構内から選定し、同じ系統の技術同士で比較しやすいよう、系統ごとにゾーンを分けた。また、一定期間毎の施工後の状態がわかるよう3年間は存置することとし、定期的に状況をHPに掲載することとした。
令和元年7月末より九州技術事務所ホームページでの公募(記者発表実施)を行い、7社の応募があった(①シート系3社②土系1社③目地系3社)。
今回実施したモデル施工の一部について、施工前、施工後と一定期間経過後の状況を写真-1、2に示す。

(4)モデル施工の今後の活用
今回のモデル施工がより多くの利用者の目に触れるよう、庁舎内での各技術のパンフレット提示(写真-3)や、九州技術事務所で実施される研修やイベント等の参加者への紹介(写真-4)、事業事務所、コンサルタント、施工業者へのアナウンス等を行っている。
他にも、モデル施工と同じ技術を現場で施工する予定の業者が、九州技術事務所でモデル施工を行っていることを知って事前確認のために訪れたり、防草技術を取り扱う商社が訪ねてくることもあった。
また、開発者がホームページやパンフレット等で九州技術事務所構内にモデル施工を実施していることを周知頂き、構内で実物を使って説明する等の活用方法も可能としている。
今回は第1弾として防草技術を実施したが、今後は現場でのニーズが高くモデル施工で効果が検証できるような技術があれば、引き続き取り組んでいきたい。

3-2 FacebookによるNETIS登録技術の情報発信
九州技術事務所では新技術活用促進のためFacebookを活用した、情報発信を実施している。より多くの方と情報共有するため、下記の取り組みを実施している。

【Facebook掲載内容】
・新技術関連パンフ掲載による新技術の登録案内および活用促進
・NETIS活用事例の紹介
・新技術関係資料作成事例等お役立ち情報の紹介
・九州技術にて受付したNETIS技術の最新情報掲載
・イベント情報のアナウンスなど
【Facebookを関係各所へ紹介】
・建設コンサルタント協会等の各業団体
・国・自治体現場の施工者
・NETIS登録された開発者
・九州各県の自治体職員などへ情報発信。

令和元年度より広報を強化したことにより、令和2年7月現在、フォロワーは100人から700人程度に増加、閲覧(リーチ数)4,700人に達する等、閲覧者の更なる広がりが期待される。

また、九州技術事務所の災害対応やイベント等についても情報発信を実施しているため、九州技術事務所Facebookを様々な方に利用して頂ければ幸いである。

●九州技術事務所Facebook
https://www.facebook.com/kyugi.mlit.go.jp/

4.おわりに
我が国の建設業界を取り巻く環境は、現在変革の時を迎えている。少子高齢化およびそれに伴う次世代の担い手不足、「3K」と言われている施工環境からの脱却、老朽化を迎えているインフラ施設のメンテナンス対策など多くの課題を抱えており、これらの解決が急務となっている。
本稿にて紹介した「新技術活用原則義務化」「九州地整独自の取組」を通じ、有用な新技術が積極的に活用されることによって、上記課題解決に大きな役割を果たすことにつながり、建設業界の発展にも資するものと確信しているところである。今後も産学の協力を賜りながら、引き続き種々の取組を実施していきたいと考えている。

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