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自治体向けの河川管理施設(機械設備)研修報告
前畑義仁

キーワード:河川法改定、自治体支援(機械設備「河川用水門設備」)、工夫した研修

1.はじめに
九州地方整備局では、技術者不足が指摘されている地方公共団体への技術支援として、研修の充実・強化等を行っている。河川法改正に伴い、河川管理者等は、適切な点検・診断、修繕・更新等を行っていく必要があり、河川管理施設のうち、県が管理している河川用水門設備の機械設備を題材として、全国に先駆けて、鹿児島県の技術者(主として土木職)を対象とした研修を実施したので報告するものである。

2.河川法の改正について
平成25 年の河川法の改正により河川管理施設及び許可工作物を良好な状態に保つよう、河川管理者又は許可工作物の管理者の維持・修繕の義務が明確化(河川法第15 条の2)され、維持・修繕の技術的基準(河川法施行令第9 条の3)により、下記が義務付けされた。
 (1)適切な時期に目視その他適切な方法で点検を実施すること。
 (2)ダム、堤防等について、一年に一回以上の適切な頻度で点検を実施すること。
 (3)損傷、腐食等の異常把握時における維持・修繕等、必要な措置を講ずること。

3.研修の概要
自治体の河川管理施設(機械設備)の管理担当者が、主として土木職員であり、機械専門の職員でないため、機械設備に関して分かりやすい研修、研修資料(今後活用できる資料)が望まれていた。そのため、機械設備における、ゲートの操作方法や施設点検のやり方、今後の維持管理に関して着目すべき箇所等に関する基本的な知識を習得する研修とした。研修資料については、事前に県職員に点検、修繕の実態についてのヒアリングを実施し、国土交通省職員が直接、県管理施設の事前状況調査を行い、現地状況の写真等を活用し、施設点検箇所が容易に判断できる資料の作成を行った。現地研修は、施設全体の構成を把握して頂くとともに、県職員自ら施設の点検を行い、また、施設の操作方法を習得して頂いたものである。
 ・参加者:県職員(土木職員、事務職)
 ・開催場所:鹿児島県薩摩川内市川内川水系川内川・樋脇川
 ・研修内容:座学、現地研修(国土交通省管理施設及び鹿児島県管理施設)

1)座学
座学の内容は、以下のとおり。
 ●河川施設等の種類について
 ●河川法の一部改正について
 ●水閘門等の役割について
 ●水閘門等の基礎知識について
  ・水閘門設備の種類
  ・水閘門設備の構造等
 ●鹿児島県管理施設を視察して
  ・国土交通省職員による事前現地調査結果報告
  ・修繕(更新)時のアドバイス
  ・新技術ゲート等の紹介(DVD を活用)

2)現場研修
鹿児島県管理施設及び国交省管理施設の2 箇所にて現地研修を実施した。
 ●鹿児島県管理施設の現地研修
  ・県職員により施設の点検を実施点検表にて施設の点検(目視点検、管理運転点検)を実施した。
  ・補修方法等についてのアドバイス県職員にて実施した点検結果をもとに、修繕等実施する際のアドバイス等を実施した。
 ●国土交通省管理施設の現地研修
  ・施工時工夫された点について説明
  ・県職員による操作体験(電動操作等実施)
  ・故障発生時の復帰対応の実施(故障復帰マニュアルを確認しながら県職員自ら故障復旧を実施した)

4.現地調査及び資料のとりまとめについて
鹿児島県管理施設を事前調査し、その結果を下記フローにそって、資料のとりまとめを実施した(図- 1)。

(1)現地調査方法

(2)とりまとめ方法(写真- 1)
点検結果により、改善内容等ある場合は、下記のように写真等を活用し、理解しやすい資料のとりまとめを実施することとした。

~とりまとめ結果(写真- 2)~
現地調査した結果を下記のとおり、とりまとめた。改善部分が考えられる箇所があったため改善案を含め、現地調査結果を下記のとおりとりまとめた。

調査結果(改善案1)
操作人等に対して、管理橋への出入りの安全性を確保するため管理橋の扉の位置を川表側(上屋側)へ移動した。

調査結果(改善案2)
現場条件にはよるが、ゲート操作に支障にならないように、胸壁防護柵の下部に石等の落下防止対策(プレートの設置)を実施した。

5.現地研修(鹿児島県の管理施設研修状況)
(1)県職員による鹿児島県管理施設の点検を実施(写真- 4)調査結果(改善案1)
1)施設の目視点検(外観点検)、管理運転点検(エンジン始動の実施)を実施した。
2)施設の状況について、点検表により、施設の点検を実施した。

(2)国土交通省管理施設の視察及び実操作、故障対応の習得(写真- 5、6、7)
今後、修繕等実施する際の参考としていただくため、国土交通省が管理している施設の現地研修を実施した。
1)工事施工に際し、維持管理、操作人に対して工夫した箇所について説明。
2)実操作の実施:電動操作、手動操作、自重降下操作等を実施した。
3)故障時における復旧方法の習得:非常停止等を実施し、その復旧方法を確認した。

6.現地研修を終えて
(1)点検結果発表(写真-8)
点検結果をとりまとめ、その後、各班より点検結果報告を実施。

(2)現地研修箇所の現地調査結果報告(写真- 9、10)
国土交通省職員による現地研修箇所を事前調査しており、その結果を下記により報告した。

改善(案)
エンジン始動時にカバーを開けることから、操作人以外でもエンジンの始動操作が可能なように、エンジンカバーを利用し、操作説明板の設置。

7.アンケート調査結果
研修に関してのアンケート結果は、以下のとおりとなった。
1)「水閘門設備の役割」に対する意見
 ●理解しやすかった、ゲートの基本操作について参考となった。
2)「水閘門等の基礎知識」に対する意見
 ●水閘門の構造について資料がわかりやすかった。
3)「現地視察を実施して」に対する意見
 ●点検すべき箇所が把握できた。
4)「現場」に対する意見(鹿児島県管理、国土交通省管理)
 ●実物を見ながらの説明でありよく理解できた。
5)今回の講習会に関する意見
 ●今後、更新、新設する際に実際に操作・維持管理するうえで気を付けるべき点について参考となった。取り扱う事が少ない案件だからこそ今回の講習会は有意義だった。継続的に講習会を実施してほしい。資料、説明等分かりやすかった。

アンケート結果により、
次回は、より実践的な研修とするため、現地施設を確認しながら、修繕方法の習得、操作時のトラブル対応方法等について研修を実施していきたい。

8.終わりに
研修を終えて・・・・・
座学にて重要視した、現地点検で確認すべき箇所に関して、各班より発表があり研修の成果が伺え、また、ほぼ、実操作等を実施した経験がない職員であったため、職員自ら、点検表により管理している施設の点検や実際に手動操作、エンジン操作等実施して頂き、操作人の大変さや、今後、樋管の新設、修繕等実施する際、維持管理等を考慮した施工が重要であるということを感じて頂けたと思う。
今後も継続的に研修を実施していくとともに、研修のアンケート結果をふまえ鹿児島県はもとより、鹿児島県以外の自治体職員に対しても、機械設備(河川用水門設備、ダム用水門設備、揚排水ポンプ設備等)に対して、適切な点検・診断、修繕・更新が行えるよう研修の充実・強化を図っていきたいと考えている。

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