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九州の未来を担う新たな圏土計画づくり

国土交通省 九州地方整備局
 道路部 地域道路調整官
(前所属:九州地方整備局 
企画部 広域計画課長)
赤 星 文 生

1 国土形成計画の趣旨と特徴
九州には地域を元気にする多様なポテンシャル(素材やパワー)がある。温暖な気候、肥沃な土地に抱かれ、全国屈指の生産量を誇る農水産品や海外にも知られた温泉地、阿蘇に代表される豊かな自然が豊富である。また、古くからアジア大陸と日本の交流玄関口として独特の文化・国土を形成してきた。
これらの歩みには、昭和37年以来5次にわたる「全国総合開発計画」という国土の指針によるところが多かった。しかし、その計画も国際競争市場のアジアシフト化や国内における人口減少・少子高齢化という新たな潮流のもと、その使命を終え、平成17年に「国土形成計画法」に生まれ変わった。
法では、国土のあり方を全国計画と全国8つのブロック(圏域)ごとの広域地方計画の二層で展開し、その過程に多様な主体(機関、団体)が参画し、国と地方による協働を特色に、これまでの国主導と異なるスタイルを求めている。全国計画では我が国の進路、各圏域が担う役割を中心に描くガイドラインを今年中頃に閣議決定する。その1年後の平成20年中頃に各圏域の広域地方計画を国土交通大臣が決定する(図-1)。

図-1 全国計画と広域地方計画

2 九州圏広域地方計画の枠組み
広域地方計画では、人口減少や少子高齢化を背景に、どちらかと言えばネガティブ的なテーマ、九州が有するポテンシャルを存分に活かすポジティブ的なテーマの両局面に対し、将来像に向けての方針・目標及び施策をまとめることになる。さしずめ、九州圏が抱く主要な課題をイメージすれば、図-2であろうか。

図-2 九州圏の主要課題

3 キックオフレポート
潮流の変化が引き金となる課題の克服や恵まれた資源・潜在力を引き出しながら飛躍の糧に変えていくためには、多くの方々の知見が必要である。九州圏では、予め国・地域の行政機関と経済界等からなる「プレ協議会(部長級)」のもと、普段のライフスタイルに、そしてローカル(圏域内)にさらにはグローバル(圏域外)に見いだされる論点ごとに、圏域がめざす方向と課題の抽出、あるべき将来像を作業原案「キックオフレポート」として、3つの「検討小委員会」で創る。具体には、今後ますます必須となる『安全・安心できる豊かな環境』を目指す委員会、自然環境と生産・消費活動のバランスや持続を命題に都市と農山村の『自立的発展』を目指す委員会、東アジア市場経済を視野に入れた競争基盤づくりに向け『活力ある経済社会』を目指す委員会が3月下旬にスタートした(写真-1参照)。これまでに次のような論点が提案され、中には「なるほど!」というような”目からうろこ”的な提案も頂いた。

~『安全・安心できる豊かな環境』委員会~
○地域防災力の維持には地域コミュニティカが必要
○予防に加え被災後の活動やモニタリングが必要
○美しい九州圏には文化の豊かさが必要
~『自立的発展』委員会~
○地域観光面で火山資源を九州の特色に
○集落の存続には世帯単位での評価が大切
○子育て支援を都市と農山村の交流で構築
~『活力ある経済社会』委員会~
○大人が活躍するフィールドのみならず進学する子息が帰郷時に活躍できる受け皿準備
○東アジアを見据えたうまい産業連関の仕組み

今後、各界からのゲストによる提言等も織り交えつつ「キックオフレポート」を全国計画策定後に設ける本協議会(局長、知事・市長級)に提示し、人口減少下における最初の広域地方計画がまとまる。県境地域に存する過疎・中山間地域の対策、最近では広域地震対策・危機管理など、10年後、それ以降、豊かで安心して暮らし続けられる九州をめざし、協議会をなす28の機関のご協力により訴求力があり容易に理解できるプランを創っていきたい。4月には整備局と運輸局のスタッフで構成される『九州圏広域地方計画推進室』がスタートした。

写真-1 活力ある経済社会を目指す検討小委員会

4 楽しみな九州圏広域地方計画
昔、歴史の授業で習ったことを思い浮かべると、現在によく似た時代があった。それは、江戸時代後半である。あの時代、世界に誇れる絵画「浮世絵」、農村を舞台にした手工業・祭、都市と分かち合った生産と消費の循環システム、さらには余暇を芸能(芝居小屋)や学問(藩校)、社寺参拝にいそしむなど、まさに人・モノ・金・情報が往き来していた時代と推察できる。この時期培われた技術・文化が明治以降の資本主義、工業化へと我が国が進む布石として貢献したとされている。
これまで述べてきたように、開発志向の既計画に対し,限りある資源を地域の選択により有効活用し、様々なライフスタイルに適用しうる圏土づくりが形成計画(広域地方計画)のねらいである。東アジアの資本・労働力、地球環境改善への貢献、我が国を牽引しようとする自動車産業・コンテンツ産業、知識・情報サービスの積極的展開、マチの賑わい・ムラの活力づくり、東西・南北格差是正への処方箋など盛り沢山の論点をもとにした九州の新たな圏土づくりにぜひ皆様も参加を…

参考文献
・人と国土21 ライフスタイルから考える国土計画(2006/11)

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