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熊本地震時における東九州道の整備効果
佐伯康夫

キーワード:東九州道、熊本地震、代替機能

1.はじめに
東九州自動車道は、福岡県北九州市を起点とし、大分県・宮崎県・鹿児島県を結ぶ計画延長436㎞の高速自動車国道である。
平成元年に日出JCT~別府IC間が開通してから、約27年の年月を経て平成28年4月24日に椎田南IC~豊前IC間が開通し、北九州~宮崎間がつながることができた。
椎田南IC~豊前ICが開通する直前の平成28年4月14日、16日熊本を震源とする2度の震度7の強い揺れにより熊本・大分で被害が発生した。特に熊本県益城町では、各地域で甚大な被害が発生した。
益城町やその付近を通っている九州自動車道も他の施設同様に甚大な被害が発生し、九州の道路交通の大動脈が寸断した。
その様な状況の中、椎田南IC~豊前IC間が開通し、北九州市~宮崎市の高速道路交通がつながり、東九州自動車道が九州自動車道の交通機能をどの様に担ったか、交通の流れなどにより報告する。
2.熊本地震による九州の道路被災状況
九州自動車道の植木IC~八代IC間での全面通行止めをはじめ、阿蘇立野地区法面の崩落による国道57号の分断等、多くの道路被災により、九州管内の物流、人流は大きな交通障害に見舞われた。

植木IC~八代IC間の九州自動車道の通行止めより、国道3号など、現道に交通が流れ集中したため、渋滞発生が発生し支援物資、復旧活動への支障となり、国道501号への迂回対策等、国・九州管区警察局・熊本県・熊本県警・熊本市とともに調整会議を度々開催し、調整を図った。

3.地震被災後の交通状況
被災前の交通状況は、九州自動車道が南北の交通機能のほとんどを担い、熊本市街地部を中心とした狭いエリアでの交通の流れが主であった。
また、阿蘇方面への交通は国道57号、国道325号が担っていた。
被災直後の交通状況は、九州自動車道の通行が植木IC以南から通行止めになったため、足の長い交通は植木IC から広域農道や県道113号、国道501号へ流れている。
通常時では、現れていない交通の広がりが見て取れ、通行可能な道路を探したり、渋滞を回避するため広範囲な交通の広がりになったものと推測できる。
地震直後、大分自動車道、九州自動車道は、通行止め等により、一時大きく交通量が減った。その時点から東九州道は交通量が増加しており、量は多くないものの九州自動車道の交通が転換したものと考えられる。
また、一時通行止めとなった、大分自動車道及び九州自動車道は、迅速な復旧により交通量がV字回復を見せ震災前の交通の流れを回復した。さらに1日当たり65万台の通行も確保することができている。

4.東九州道整備の地震後における効果
①九州南北軸の物流支援
地震発生後、大型車が九州自動車道から東九州道へ転換し、大型車交通が約3倍に増加した。その事は、九州南北を支える物流経路として、東九州道がリダンダンシー機能を発揮したことが確認できる。
また、東九州道の通行を早期に確保したことにより、安定的な飼料の確保や食物出荷等にも貢献するなど、物流において、通常時の機能低下を抑制する効果を発揮している。

②広域的な救援・復旧活動を支援
九州自動車道が地震被災により通行止めになったことに伴い、自衛隊や日本赤十字等の救援物資や復旧活動車両は、本州方面や九州南部方面から東九州道を利用し、自衛隊は熊本の被災地へ入り、東九州道は救護・復旧活動の支援道路として活用された。

■観光支援
震災後、風評被害などにより観光の落ち込みが予想されたものの、東九州自動車道沿線のまつりは、対前年度比約1割増の来場者数であった。そのことは、東九州道が観光振興においてある程度効果を発揮したものと想定できる。

■公共交通ネットワークの確保
地震による九州自動車道通行止めにより、定時性確保のため宮崎~福岡と鹿児島~大分への高速バスの運行は、東九州道を利用した迂回運行を実施するなど、公共交通ネットワーク機能として利用された。

5.おわりに
熊本震災により、熊本県内が甚大な被害をうけ、九州の高速ネットワークの基幹である九州自動車道や大分道も大規模な被災を受け、一時通行止めが発生したが、NEXCO西日本の迅速な復旧工事により高速ネットワークが確保でき、東九州道の整備効果把握にご努力頂いた事に敬意を評します。

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