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ケーブルテレビデータ放送を活用した土砂災害危険度(メッシュ)情報の提供について
緒方健一

キーワード:土砂災害警戒情報、土砂災害危険度情報、ケーブルテレビ

1.はじめに
佐賀県は、県の土地面積2,439K㎡のうち、約70%が山地であり、土砂災害の恐れがある土砂災害危険箇所が9,534 箇所(平成14 年度公表値)存在し、県内30 万世帯のうち5 万世帯弱がその中に含まれている。
本論文では、土砂災害警戒情報の補足情報として、インターネットで公開を行ってきた土砂災害危険度情報について、「より幅広く」「より身近な」情報提供を行うことを目的に、平成25年度からケーブルテレビデータ放送による情報発信を行うこととなったことから、この取り組みについて紹介する

2.佐賀県土砂災害危険度情報
本県においては、平成20 年度からインターネットで土砂災害危険度情報の公開を行っている。公開しているページは「一般向け(5㎞メッシュ版)(図1-1)」「防災担当向け(1㎞メッシュ版(※ ID,PASS 設定))(図1-2)」の2 通りがあり、一般向けに公開しているページは、県庁ホームページよりアクセスができる。

「一般向け(5㎞メッシュ版)」「防災担当向け(1㎞メッシュ版)」いずれのページにおいても、縮尺1 / 25,000 まで拡大表示が可能であり「危険度メッシュ」と「土砂災害危険箇所」を見比べ、更に「危険度グラフ」を表示することで「どこで」「どれくらい」土砂災害の危険度が高まっているか、確認することができる(図1-3,4)。
しかし、インターネットによる情報公開は、即時に詳細な情報を提供できるメリットがある一方で、情報の提供手段としていくつかのデメリットがある。

【メリット】
 ・テレビ等の他のツールと比較し、より多くの情報を、即時に入手することが可能
 ・スマートフォン、タブレット端末等で「いつ」「どこでも」情報の入手が可能
【デメリット】
 ・インターネット契約が必須となるため、高齢者等の情報弱者への配慮が必要
 ・閲覧できる端末がパソコンのみの場合、パソコン起動等に手間がかかる

インターネットによる土砂災害危険度情報の提供については、「即時性」「情報量」の面からも行政等の防災担当者向けには非常に有効である一方で、土砂災害の恐れのある山間部では、住民のうち高齢者が占める割合が多いことから、「一般住民への幅広い情報提供」という面では「情報弱者への配慮」が非常に大きな課題となっている。
このため、本県では「より身近なツール」を使った情報提供を検討することとなった。

3.佐賀県内におけるテレビ放送、ケーブルテレビの現状 
佐賀県内における地上波放送は、NHK 総合、NHK 教育、STS サガテレビ(フジテレビ系列)の3波のみとなっているが、有明海に面する平野部では福岡、熊本の民放波が届くため、系列5波(RKB・KBC・FBS・TNC・TVQ)を受信することができる。しかし、山間部においては、その民放波が届かないことから区域外波である福岡や熊本、長崎の民放波を山頂等で受信し、ケーブルで配信するケーブルテレビが早くから整備されることとなり、特に山間部で多く加入されるものとなった。

4.ケーブルテレビによる土砂災害危険度情報の提供について
本県において、特に山間部での加入率が高く、より地域に密着した情報提供が可能である「身近なツール」として「ケーブルテレビ放送」に着目し、データ放送による土砂災害危険度情報の提供を行うこととした。
システム構成イメージを以下(図3)に示すが、ケーブルテレビへの土砂災害危険度情報配信にあたり、配信用サーバを増設、画面を生成し、インターネットを経由してケーブルテレビ各局へデータを配信する構成とした。
ケーブルテレビデータ放送において提供を行うデータについては、土砂災害危険度情報の他、佐賀県が携帯電話等のメール機能を使って提供している佐賀県防災・安全・安心情報配信システム「防災ネットあんあん」の情報を表示できる「緊急情報」、土砂災害の前兆現象、日頃の備え等を「土砂災害啓発情報」として表示することとした。
ケーブルテレビデータ放送での土砂災害危険度情報等の閲覧方法は、各局のコミュニティチャンネル画面でテレビリモコンの「dボタン」から確認するほか、土砂災害警戒情報が発表された際には、自動でL字カットイン表示することとした。画面遷移について以下(図4)に示す。

5.住民へのPR・広報活動
今後は、当該システムの住民へのPR 等広報活動が重要となってくるが、県広報などを活用するとともに、住民が多く集まるイベント(県総合防災訓練・住民説明会 等)でチラシを配布するなどの広報活動を継続的に実施したい。

6.おわりに
土砂災害防止対策は「ハード対策」と「ソフト対策」をバランスよく実施することが重要であり、特に「ソフト対策」については「利用者側(住民)の視点」に立った対策が必要と考える。今回整備した「データ放送による土砂災害危険度情報システム」も含め、土砂災害防止対策等にかかる各種防災情報提供システムについても継続的な広報活動を行い、住民の利活用を拡大するともに、システムの検証、改良を継続し、よりよいシステムとなるよう検討していきたい。
最後に土砂災害危険度情報のケーブルテレビデータ放送に係る取組みに御賛同、御協力頂いた、ケーブルテレビ各局の皆様に感謝の意を表したい。

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