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外来水生植物収集装置の開発
平川良一

キーワード:外来水生植物、収集装置、危険・苦渋作業

1.はじめに

河川等水域に繁茂する外来水生植物は、在来種の育成を圧迫し生態系に影響を与え地域漁業者への影響も大きく、そのうえ、洪水時の水門等操作の支障となり問題となっている。外来水生植物の除去方法は陸揚げについては重機による方法が確立されているが、収集については河川の浅瀬や狭隘部も含めて繁茂しており、バックホウや清掃船等の専用機械のみでの作業は困難で、人力作業を余儀なくされているのが現状であるため、安全面やコスト面からも早急な対策が望まれている。
そのような問題点を解決するため、外来水生植物の除去に関して効率的な収集装置の開発を行ったのでその結果について報告する。

2. 現状調査

まず、開発対象を決定するため、繁茂状況、既存技術等の現状調査を行った。
(1)外来水生植物の概要

近年大規模な繁茂が報告されている代表的な外来水生植物であるブラジルチドメグサ、ボタンウキクサ、ホテイアオイ、オオカナダモの概要について表ー1に示す。
4 種類のうちオオカナダモについては水中に生息する沈水植物であり、収集工程が全く異なるため開発対象から外すこととした。
ブラジルチドメグサは、ボタンウキクサ、ホテイアオイと比べ、土中(河岸)に根を活着させ、水面を浮遊し茎をからませながら分布域を拡大していくという特長を有しており、群落を切断する工程と根をある程度浮かせる(浮遊)工程とが必要となってくる。
従って、収集工程が切断、浮遊、収集、捕捉と4 工程必要なブラジルチドメグサを主な開発対象として検討を進めることとし、ボタンウキクサ、ホテイアオイについては収集、捕捉の2 工程であるため収集は可能であると判断した。

(2)繁茂状況

外来水生植物の繁茂状況把握のため、平成23年10 月18 日(火).20 日(木)に筑後川水系、矢部川水系、菊池川水系、緑川水系の4 水系で現場踏査を行った。
現場踏査の結果、作業環境を4 つのステージに区分を行った。
 ステージⅠ 水上からの作業のみ可
 ステージⅡ 水上及び陸上からの作業が可
 ステージⅢ 陸上からの作業のみで可
 ステージⅣ 人力による作業が必要
4つの作業ステージのうち、ステージⅡの陸上作業、ステージⅢについてはバックホウ等の汎用の建設機械を使用しての作業で十分対応可能であり、ステージⅣについては繁茂範囲も小さく機械化するメリットはあまり大きくない。
従って、今回の開発対象はステージⅠ、Ⅱの水上からの作業を開発対象とする。
なお、今回の現場踏査では、ステージⅠ、Ⅱの割合は約70%であった。
(3)既存収集装置

主な既存収集装置の概要を表ー2に示す。既存の収集装置は、上部構造である収集機構と、下部構造である動力(移動)機構で構成された専用機械となっている。
専用機械は大型のものが多く、大河川、湖沼等における異常繁茂状態の際に使用され効果を発揮している。
また、今回主な開発対象としたブラジルチドメグサは河川の大・小を問わず、河岸に沿って中規模の繁茂が連単する傾向にある。
従って、今回の開発対象としては、既存の専用機械での対応が効率的でない中・小河川及び繁茂初期状態とする。

3.試作装置

試作装置の概要を図ー1に示す。
試作装置は、和船又は台船(2 × 3m 程度)に架台を取り付け、架台の上にアームを固定し、アーム先端部の可動台に作業に必要な装置(掻寄装置、切断装置等)を設置し作業を行う構造となっている。また、架台は伸縮機構等を備え、作業船の寸法に合わせた調整が可能となっている。

アームは上下左右に振れる構造で、広範囲の作業が可能で、可動台は電動ウインチで前後に動く構造となっており、各装置を作動させることで収集作業を行う。
試作装置を使用した作業イメージを図ー2に示す。
陸揚げ箇所付近は、陸揚げ可能の大きさに切断(噴射)装置で切断し、バックホウにより陸揚げ収集する。バックホウの作業範囲外の水草は掻寄装置(レーキ)を使用し作業範囲に押し寄せることにより、バックホウは同じ場所で収集作業が可能である。また、陸揚げ箇所から離れた場所では、破断等の流下防止用に水草の下流に設置した流下防止フェンスを利用し、切断した水草を集め、陸揚げ箇所までフェンスごと航行しバックホウで収集する方法も可能である。

4.現場実証実験

試作機による現場実証実験を行った。
実験は、加勢川及び菊池川でブラジルチドメグサ、ボタンウキクサを対象として行った。
(1)航行実験

和船及び台船に設置した状態での航行状況を写真ー1に示す。航行状況は、和船、台船どちらの場合も良好で
あり特に問題なかった。

  

(2)掻寄実験

掻寄実験はレーキ、トンボの2 種類で行った。実験状況を写真ー2、実験結果を表ー3に示す。
掻寄装置ではレーキを可動台下部に設置した場合が、最も操作性、作業性、収集性で優位であった。

(3)切断実験

切断実験は、噴射装置(高圧洗浄機)、切断装置(電動草刈機)を使用して行った。実験状況を写真ー3、実験結果を表ー4に示す。
切断装置では作業中に過負荷で装置が停止してしまうが、噴射装置による切断作業はスムーズに行えた。この結果により、高圧洗浄機による噴射装置を切断装置とすることとした。

5.まとめ

今回の試作機による現場実験により、収集装置の機能の有効性を把握することができた。
今後は、実験結果を踏まえ作業性等に関する改良を加え実用化を図っていく。

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