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パイロット事業制度の実施状況

パイロット事業(正式には「建設省技術活用パイロット事業」という)とは,地方建設局が
 ① 建設省単独で開発された技術
 ② 官民共同で開発された技術
 ③ 民間単独で開発された技術
等の新技術を試行し,その現場適応性,効率性,安全性,経済性等を検討するために行う事業をいう。
この制度は昭和62年度から実施されており,平成2年度までに九州地方建設局で17の課題が採択されている。
採択されているパイロット事業の概要については,これまで本誌2号から順次紹介しているが,今回は平成2年度採択された8課題の内,4課題について紹介する。

1 ジオテキスタイルによる補強浮基礎函渠
提案者 佐賀国道工事事務所

(1)概 要
佐賀平野の軟弱地盤地帯では,粘土層の圧密沈下に伴い,一般道路舗装面と道路構造物面(特に基礎を支持杭とした場合)との間に段差がおこり,維持補修に多大の費用と労力を要している。
このため,ジオテキスタイルによる補強浮基礎をパイロット事業として実施する。
(2)ジオテキスタイルの概要
ジオテキスタイルには,土構造物に関連する機能として,排水,ろ過,分離,補強の大きく4つの機能がある。補強機能はジオテキスタイルの持つ引張特性により,土構造物の安定を向上させる機能で,補強浮基礎はこの機能を活用したものである。
ジオテキスタイルは,力学的にも化学的にも安全性が高く,耐久性のある,通常プラスチックと呼ばれる合成高分子を素材とした製品がほとんどである。これらを素材としたジオテキスタイルは,不繊布,繊布,編物,ジオグリット,ジオネット,複合製品など多種多様な種類がある。今回用いるものは,ジオグリットで引張部材を規則正しい開口部で一体的に結合した格子状構造の高分子などからなるシート状のものである。
(3)技術的特性
技術的特性として,①浮基礎であるため,周囲の地盤と同じ沈下をおこし,段差を生じない。②高い引張強度を有するジオグリット(テンサー)を使用することにより,荷重の支持,骨材の水平移動防止と拘束層の形成ならびに相互貫入防止の効果によって,荷重分散,土質材料の側方移動防止と剛性向上を図る。③ジオグリットを用いることにより剛性が増し,不等沈下防止となる。
(4)安全性
補強浮基礎に用いるジオテキスタイルは,高分子材料(ジオグリット)で,軟鋼にも匹敵する高い剛性を持っており,また,耐酸性,耐アルカリ性等耐久性にすぐれ,腐食・分解の恐れがなく安全性に富んでいる。

2 インシチュフォーム更生樋管
提案者 川内川工事事務所
延岡工事事務所

(1)概 要
近年,河川堤防や道路に埋設している管渠の老朽化が進み,管体の亀裂,接手の離脱,変形などにより,管内への漏水,堤体の空洞化が生じ,堤防の決壊や道路陥没といった問題が発生する恐れがある。
これら,老朽管の更生には,全面改築が望ましいが,堤防が兼用道路であったり,交通量の多い主要道路で開削が困難であったりするため,非開削工法が必要となっている。
今回,非開削で管内を修復する補強工の一種であるインシチュフォーム工法をパイロット事業として採択したので,その概要を紹介する。
(2)インシチュフォーム工法の概要
インシチュフォームとは「元の位置に形づくる」という意味であり,インシチュフォーム工法は既設管内へ有効断面積を最大に保ちながら,新しい管渠をつくり上げていく工法である。
当技術は英国で開発されたもので,1971年から下水道や各種パイプラインの更生技術として適用されている。
当工法は,ポリエステルフェルトの片側にポリウレタンフィルムを貼り合わせたシート状のものを,修復する管渠の径に合わせてフィルムが外側になるように筒状に縫製しておき,その筒状の一端より液状の熱硬化性樹脂を注入し,ポリエステルフェルトに含浸させる。これをインシチュフォームライナーと呼ぶ。
施工前のインシチュフォームライナーは,樹脂を含浸した柔らかいチューブとなっており,これを水圧により既設管内に反転挿入したあと,ボイラーで管内の水を加熱することにより硬化させ,管渠内に耐荷性,耐蝕性に優れた新しい継目のない管渠を作る。
(3)技術的特性
技術的特性として,①水圧によってライナーを挿入する工法なので,長スパンを1回で容易に施工出来る。②ライナー内面は,滑らかなポリウレタンで被覆されており,断面は多少縮少されるが,粗度は小さくなり,流下能力は従来より向上する。③ライナーの施工は,柔軟性に富み断面形状及び曲りにも適用性が大きい。④ライナー厚は42mmから1.5mmまで自由に変えられる。⑤製品は工場製作であるため品質が均一である。
(4)安全性
ライナーには耐薬品性の熱硬化樹脂が含浸されており,硬化したライナーはきわめて固く,耐酸性,耐アルカリ性で,老朽化しにくく,また,水密性や強度の面から優れている。

3 樋管改築における推進工法
提案者 遠賀川工事事務所

(1)概 要
河川流域の内水排除施設として昭和30年代に建設された樋門樋管は,断面積が小さく,通水能力の不足や施設の損傷,老朽化等により改築の必要性に迫られている。しかし,施設周辺は家屋が隣接していたり,堤防が兼用道路となったりしていて改築工事が困難なものとなっている。
工期や現場条件等の施工条件にあまり制約を受けない場合は,迂回路を造成し,堤防を開削して施工する支持杭方式のコンクリート構造(以下「RC構造」という)が一般的であるが,RC構造は重量が重く,杭基礎方式のため,堤体と函体との不等沈下や空洞化現象が生じ,河川管理施設としての機能低下が問題となっている。この為,最近,函体の軽量化,地盤沈下にたいする追従性等に着目し,九州地建内でもパイロット事業として「鋼構造樋管」が川内川及び六角川において試験施工されているが,いずれも堤防の開削工法での施工であり,交通規制や迂回路の造成が困難な場合は,両工法の採用は難しい。
そこで,下水道工事に多くの施工実績がある推進工法を採用することにより,堤防を無開削で,しかも函体重量を軽減したダクタイル管の樋管改築をパイロット事業として実施する。
(2)技術的特性
本工法は,堤防内にタクタイル鋳鉄管(φ1,500mm)を油圧ジャッキで挿入していく推進工法である。
技術的特性として,①ダクタイル管はフレキシブルであるため,周辺地盤との馴染みがよく,空洞化を抑止する。②地盤沈下などの変動には,管継手の変位で吸収するため,管路が地盤に無理なく順応する。③管体が軽いので沈下を軽減できる。④堤防が兼用道路でも迂回路の造成が不要である。等があげられる。
ただし,管体が推進工法で施工するため,管体周辺の地盤のゆるみや遮水壁の施工に注意を要する。
(3)安全性
ダクタル管は炭素やケイ素の含有が豊富で,これらが保護被膜を生成し腐食の進行をおさえている。また,腐食性の強い酸性土嬢に埋設する場合には,ボリエチレンスリーブによる防食対策を行い安全性を確保する。さらに,ダクタイル管の内面はモルタルライニングを施し,耐食性の強化を図っており,外面は鉄筋コンクリートを巻いて保護している。

4 樋管用ラバーゲート
提案者 遠賀川工事事務所

(1)概 要
樋管の管理は,「普通河川の水門等の管理について」(S47.3.27,建河治発23-2)により,全て本川の河川管理者が行うこととなっている。
遠賀川には多数の樋管が存在し,各樋管の操作は,近傍地に住居があり,緊急時に対応できる地元の人により行われている。
操作においては,操作員の年令層が50~70歳と高令化であること,夜間の操作もたびたび発生し操作遅れが生じていること等を勘案すると,自動操作が可能なゲートを設置する必要がある。
このため,川表,川裏の水位を検知して,自動操作する樋管用ラバーゲートをパイロット事業として採用し,その現場適応性及び技術的効果を調査する。
(2)技術的特性
現在のスライドゲートに対して,自動倒伏するラバーゲート(ゴム製ゲート)は操作遅れの解消を図ることが出来る。
さらに,機能性,安全性が確認されれば,現在の樋柱が不要となり軽量化が図れる。

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