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倉谷2号橋(仮称)の設計と施工

宮崎県土木部
道路建設課長
鴨 田 安 行

宮崎県土木部
道路建設課橋梁係長
木 下 邦 雄

1 はじめに
倉谷2号橋(仮称)は,宮崎県が改良を進めている主要地方道日南・高岡線のうち,宮崎郡田野町に架設される橋長310mの道路橋である。昭和63年に下部工が着工され,平成元年に上部工に着工,平成3年1月に橋体が完成し現在橋面工の施工中である。架橋地点は底部に井倉川が流れる急峻なV字谷で橋脚位置が限定されたため,数種の型式について比較検討した結果,5径間連続PCV脚ラーメン橋が採用された。大規模なV脚構造をもつ橋梁では,国内で3例目,九州では初の施工でありV脚の規模(V脚スパン50m)は本橋が国内で最大である。以下に本橋の設計,施工の概要について報告する。

2 工事概要
工事名  橋梁整備事業
路線名  主要地方道 日南・高岡線
工事箇所 宮崎県宮崎郡田野町大字倉谷地内
橋 長  310m
支 間  38.3m+91.0m+50.0m(V脚支間)+91.0m+38.3m
桁 高  3.5m~6.0m
幅 員  車道7.25m+歩道2.5m
構造形式 5径間連続PCV脚ラーメン橋
橋 格  ー等橋(TL-20)
工 法  V脚部 ガーダーリフトアップ工法
     主桁部 現場打片持張出し工法

3 設 計
3.1 概 要
V脚構造の橋梁は国内に施工実績が少ないため,設計着手前にV脚下端の結合方法,支間割,V脚の角度,桁高等について比較検討を行った。
V脚下端の結合方法は諸外国では,ヒンジ結合が多いが,我が国では耐震性を優先させる必要があるため,またヒンジ結合の場合には,支承・メナーゼ筋などの維持管理が必要であるため,施工性も良く経済的にも優れた剛結構造とした。支間割とV脚角度の関係は,3ケースを想定し,構造性・経済性・美観などを総合的に判断し,V脚角度35゜と決定した。
3.2 断面力の計算
断面力は構造系の変化やコンクリートの材令差によるクリープの影響を考慮できるよう,施工段階に従って任意系骨組構造解析プログラムにより算出した。
3.3 主桁の設計
主桁の検討は,施工時・死荷重時・設計荷重時・終局荷重時について行っている。
主鋼材の配置は,各荷重ケースの応力度を照査し決定した。せん断力に対処するスターラップはD19を最大,ピッチ125を最小とし,不足する箇所には鉛直鋼棒を配置した。

3.4 V脚の設計
V脚斜材は曲げモーメントが支配的な部材であるため,PC鋼棒にて軸力を与え,不足する軸力を補う構造としている。従って,PC鋼棒の軸力を考慮したRC部材として設計を行った。しかし,施工時には,ひび割れによる断面力の移行を防ぐため,ひび割れが発生しない様に上下2段の斜材開き止めストラット(PC鋼棒およびPC桁)にて,応力の調整を行った。V脚の断面は,充実・中空ともに曲げ破壊耐力に差がない事,中空断面の方がプレストレスが有効に作用する事,地震時の慣性力を減少させる事などの理由により,中空断面とした。ただし,上下の接点部付近には,コンクリート標準示方書のせん断耐力の規定を満足するように充実断面を設けている。

4 施工
4.1 V脚の施工
4.1.1 概要
V脚の施工は以下の3段階に分けられる。
① フーチング基礎頭部の施工
② V脚斜材部の施工
③ V脚支間,柱頭部主桁の施工
V脚部の施工法であるガーダーリフトアップ工法とは,ガーダー(鋼製架設桁,桁高2.1m,2連)を支保工として用いる工法で,斜材の上昇にともない,架設桁も順次引き上げられ(リフトアップ),V脚支間部,柱頭部の施工にも支保工として用いられる。V脚完成後には型枠移動台車を用いた片持ち張出し施工となる。
4.1.2 フーチング基礎頭部の施工

フーチング(21.0m×22.0m)上にはV脚斜材下端剛結部である基礎頭部が施工される。これは断面8.0m×11.0m,高さ11.0m,約900m3のマッシブな躯体であり,コンクリートの硬化熱によるひび割れ発生の恐れがあった。これに対処するため,1回の打設高さ,コンクリート打設温度などによるひび割れ発生の危険率を解析し,打設高さを8分割の1.35m,打設温度の管理を練り混ぜ水の冷却により行った。

4.1.3 V脚斜材部の施工
V脚斜材部は,A~Fの6ブロックの分割施工とした。施工方法により,次の3つの段階に大別される。
① A,Bブロックの施工

A,Bブロックは,地盤よりの高さが低いため,地盤上に組み立てたH鋼を支保工とし施工した。Aブロックの付け根部分には,施工中の応力度変化を知るため,鉄筋計,ひずみ計,有効応力計,無応力計等の計測器を設置した。

② Cブロックの施工

Cブロックの施工は,地盤上に組み立てた重荷重ベント上に架設桁を設置し,移動型枠装置を組み立てて施工した。

③ D.E.Fブロックの施工

D.E.Fブロックの施工では,荷重は施工済みの斜材内側に設けた鋼製ブラケットで支持される。この荷重により斜材付根部内側のコンクリートの引張応力度が30kg/cm2を越えることが予想され,ひび割れ発生の恐れがあった。施工時に発生したひび割れは断面力の再分配を生じること,V脚構造完成後にも残留することから,施工時にひび割れを発生させないよう管理する必要があった。
これに対処するため,左右のCブロックの間にφ36ゲビンデスターブPC鋼棒14本を開き止めとして配置,緊張した。

4.1.4 V脚支間部,柱頭部の施工

V脚支間部,柱頭部は,全体で約1,300m3の打設量があり,1日の打設能力,支保工の変形管理などを考慮し,図ー9のように5回に分けて施工した。

V脚斜材の施工時には,増加荷重に対してCブロックの間に開き止めPC鋼棒を配置したが,V脚支間,柱頭部の施工では,増加荷重が3,000t以上もあるため,新たにEブロック間にコンクリート桁とPC鋼棒から成るストラット部材を設け,これに対処した。ストラット部材は,PC鋼棒だけではV脚本体の変形が大きくなりすぎるため,また,鋼棒の配置が困難なため,コンクリート部材をV脚斜材で挟む形でプレストレスにより一体化し,圧縮材として荷重を受け持たせる構造とした。なお,ストラット部材は,700×700の断面のPC桁2本,およびφ32ビゲンデスターブ24本で構成される。

<1ブロックの施工>
先ずコンクリートの乾燥収縮による影響を極力少なくするために,V脚柱頭部内側の38m区間の主桁の下床版およびウェブの施工を行った。コンクリート打設前にストラットヘ630tの軸力を導入したが,280m3打設時にはストラットの軸力は,160tまで減少した。これらの数値はストラットおよびV脚付根に設置した計測器により常時管理し,計算値との整合性をチェックした。

<2ブロックの施工>
2ブロック以降の増加荷重によるストラット軸力の減少量は200tを越えるため,2ブロック打設前に100tの軸力を追加導入している。2ブロックの打設によりV脚の逆三角形構造が,一応完成したことになる。
<3ブロックの施工>
3ブロックは,箱桁断面の上床版の施工である。
<4,5ブロックの施工>
4,5ブロックの打設後,主ケーブルを緊張して,V脚の完成となる。
4.2 主桁の片持ち張出し架設
V脚完成後は型枠移動台車(フォルバウワーゲン 中型 200tm)を設置し,主桁の張出し架設を行った。V脚からの張出し長さは,片側14ブロック43.5mである。
,P橋脚からも同時に張出し架設(張出し長さ 9ブロック 31.0m)を行い,連結部は吊支保工による施工を行い,橋体を完成した。

5 おわりに
本橋の完成により,日南高岡線は日南海岸リゾート構想を支援する路線として,また国道220号を補完する路線として重要な役割をになうものと期待される。
施工例の少ない構造型式の橋梁の施工であったが,設計値とほぼ等しい管理値を得ることができたことは,今後同種の構造物の施工を確実なものとした。現在,最後の仕上げにかかっており,完成も間近である。

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