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九州技報 第34号 巻頭言

五団体 合同安全公害対策九州支部
 公害対策部会長
小 原 稔 生

日ごろ感じていることを書かせていただきます。「土木」のことについて,私が興味を持ち始めたのは,確か小学校の低学年の時だったと記憶しています。生まれ故郷の実家の近所に河川があり,護岸工事を施工する際,コンクリートを造るのにポットミキサーにセメント,砂利を投入している作業,鉄板の上で角スコップを使ってセメントと砂利を混ぜているのを飽きもせず見ていました。その時,「土木の仕事は元気があって,おもしろいものだなあ一」と感じた訳でしょう。大学も土木を専攻しました。学生時代に下宿の小母さんから,「あなたは何の専攻なの」と聞かれ,「土木です」と答えると「土木を学ぶのに大学まで行く必要があるの?」と言われたことが昨日のように思い出されます。私が建設業に入った昭和45年は,高度経済成長に伴う社会資本整備の量的不足を補うために工事現場は休日・夜間を問わず,働き詰めでした。高速道路,地下鉄工事等にも従事しましたが,毎日が「土」と「水」との戦いでした。当時は,土木工事が世間の皆様から温かく迎えられる時代でしたが,それが何時の日からか,3K(きつい,汚い,危険)の代表的な職業となり,土木工学科が環境建設工学科等の名称に改称したりの時代となりました。環境と申しますと現在,五団体九州支部の公害対策部会長として活動しておりますが,五団体とは昭和46年に日本土木工業協会など建設業の五つの団体が合同し,公衆災害防止のため設立したのが五団体本部です。設立当初の部会の活動としては騒音,振動等の公害防止に力点が置かれていましたが,現在は建設副産物の発生抑制,再資源化,適正処理のための対策,講習会の開催,教育・広報資料の作成等を重点に活動しています。この他にも,交通対策,地下埋設対策,火薬類対策の3部会が活動中です。さて「土木」という言葉は,中国・春秋時代の史書「国語」に出てくるものが最も古いと言われており,その意味は,現在の「建築」と解釈されているようです。また土木工学は,英語でシビルエンジニアリングと訳され,まさしく人々が生活を営む上で最も必要な工学です。歴史的にも弥生時代の環壕集落の溝に始まり,室町時代からは築城の際,建築工事を作事,土木工事を普請と言う言葉で区別し表現されるようになりましたが,私共の日々の営みに,密着した大変重要かつ不可欠の仕事です。それがいつの間にか昨今では,土木の仕事そのものが,環境破壊の元凶みたいに言われ,長年土木一筋に来た者にとって憤慨にたえません。土木は人が生活する上で必要な社会資本(河川,ダム,道路,鉄道,上下水道…)を整備する仕事であり,唯一,自然と人間が向き合う職業でもあります。「土木の仕事には夢とロマンがある」ことを後に続く後輩にも誇りをもって伝承し,夢づくり,人づくり,物づくりの醍醐味を,微力ながら教導して行きたいと考えています。

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