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道路協力団体について
佐伯康夫

キーワード:民間団体との連携、道路占用、道路空間活用

1.道路協力団体の概要
平成28 年4 月に道路法の改正により道路協力団体制度が創設されました。
道路協力団体制度は、道路における身近な課題の解決や道路利用者のニーズへのきめ細やかな対応などの業務に自発的に取り組む民間団体等を支援するものであり、道路管理者と連携して業務を行う団体として法律上位置づけることにより、自発的な業務への取り組みを促進し、地域の実情応じた道路管理の充実を図ろうとするものです。

2.道路協力団体制度に関する法令・通達
道路協力団体制度については、道路法第48 条の20 ~ 25 に規定されています。また、道路法施行規則第4 条の18 ~ 21 に道路協力団体として指定することができる法人に準ずる団体、指定や業務として設置又は管理を行う工作物等、道路管理の承認等の特例の対象となる行為について規定されています。
道路協力団体の指定の審査その他の道路協力団体の指定の実務に関して必要な事項を定めた「道路協力団体指定準則」(平成28 年6 月3 日付け国道環調第12 号国土交通省道路局長通知)も通知されています。
国が管理する道路については、道路協力団体指定準則に基づき「道路協力団体の指定の運用について」が通知されています。

3.道路協力団体の業務
道路協力団体が行う業務は、道路法48 条の21 の各号により以下のとおりとなっています。(( )内は想定される具体的業務を例示しています。)
 ①道路に関する工事や道路の維持
 (例:道路の清掃、花壇整備、歩道の段差解消のためのスッテップ設置等の簡易な工事)
 ②安全かつ円滑な道路の交通確保や利便の増進に資する工作物・物件の設置または管理
 (例:歩行者等の通行注意看板、案内板、街灯、歩廊、小型モビリティ用駐車場、
  レンタサイクルの駐輪場や施設、掲示板、歩行者休息スペースやバス停等のベンチ及び上屋、
  オープンカフェ、マルシェ、道路関連のイベント開催に要する機材等の設置または管理)
 ③道路の管理に関する情報・資料の収集及び提供
 (例:道路の不具合箇所、不法占用物件等の発見及び道路管理者への通報)
 ④道路管理に関する調査研究(例:交通量調査、道の駅のニーズ調査)
 ⑤道路の管理に関する知識の普及及び啓発
 (例:通勤・通学の安全確保に関する意見交換、占用許可制度に関する啓発活動、
  無電柱化等の施策に関するワークショップの開催)
 ⑥上記①~⑤に付帯する業務

①の業務は、ボランティアサポートプログラム(VSP)や日本風景街道、また、九州では道守の活動団体等により活動頂いている、道路の清掃や花壇の整備等の美化活動修景活動を想定したものです。
バリアフリー化のための軽微な段差解消のための工事等、今まで承認工事で実施してきた様なものを道路協力団体が実施することも想定しています。
②の業務は、道路利用者の利便増進に資する物件の設置をし、道路空間を利用して収益を生み出す可能性があるものを想定しています。
①の軽微な工事や②の占用については、道路法48条の24により協議が成立したことをもって承認又は許可があったものと見なされます。
ただし、対象となる物件等は、道路法施行規則4 条の20 に規定されているものとなります。
●【道路協力団体として設置または管理を行う工作物等】(道路法施行規則第4 条の20)

道路法48 条の21 第2 号の国土交通省令で定める工作物、物件又は施設は、次の掲げるものです。
 1)看板、標識、旗ざお、幕、アーチ、歩廊、雪よけ等で安全かつ円滑な道路の交通の確保に
  資するもの(歩行者等の通行注意看板、案内板、街灯)
 2)トンネル上、高架下等の自動車駐車場、自転車駐車場で道路の通行者又は利用者
  (以下、「道路の通行者等」という)の利便の増進に資するもの
  (小型モビリティ用駐車場、シェアサイクル駐輪場)
 3)道路の路面に設ける二輪車(自転車、原付等)を駐車させるために必要な車輪止め装置
   その他の器具で道路の通行者等の利便の増進に資するもの(シェアサイクル施設)
 4)広告塔又は看板で良好な景観の形成又は風致の維持に寄与するもの(掲示板)
 5)標識、ベンチ、その上屋、街灯等で道路の通行者等の利便の増進に資するもの
  (オープンカフェ、マルシェ)
 6)食事施設、購買施設等で道路の通行者等の利便の増進に資するもの(オープンカフェ、マルシェ)
 7)集会、展示会等の催し(道路に関するもの)のために設けられ、かつ、道路の通行者等の利便の
   増進に資するもの
  イ.告塔、ベンチ、街灯その他これらに類する工作物
  ロ.露店、商品置場、その他これらに類す施設
  ハ.看板、標識、旗ざお、幕及びアーチ

4.道路協力団体との連携による地域の課題への対応と賑わいの創出
道路協力団体は、業務から利益を得ることが可能な制度ですが、その収益は道路の管理に還元していただくことを基本としており、これにより活動
・空間価値の向上と地域の賑わいの創出等の好循環を形成します。

5.道路協力団体申請資格
道路協力団体の指定の申請を行う事ができる者は、法人その他これに準ずる(道路施行規則第4条の18 に規定する)団体であり、以下に掲げる要件のいずれにも該当する必要があります。
①代表者が定まっていること。
②事務所の所在地、構成員の資格、代表者の選任方法、総会の運営、会計に関する事項その他当該法人等の組織及び運営に関する事項を内容とする規約その他当該法人等の組織及び運営に関する事項を内容とする規約その他これに準ずるものを有すること。
③適切な経理事務及び会計処理が行われていること。
④法人等の構成員が5 名以上いること。
⑤申請時において、法人等の設立後5 年以上が経過していること。
⑥活動実績報告書及び活動実施計画書が宗教活動又は政治活動を活動目的としていないこと。
⑦暴力団又はそれらの利益となる活動を行う者でないこと。
⑧直近1 年間の税を滞納していないこと。
⑨日本国の法令を遵守し、業務等を履行していること。また、公序良俗に反するなど著しく不誠実な行為を行っていると認められないこと。
⑩道路協力団体の指定を受けた場合に、道路協力団体としての活動以外では、道路協力団体の名称を使用した活動を行わないことを誓約できること。

6.道路協力団体の審査基準
(活動実績)
Ⅰ)継続性
 道路協力団体として活動を行う道路区間において、直近数年にわたる継続的な道路の管理に資する清掃・除草等の公的活動を行っていること。
Ⅱ)協力性
 上記の公的活動等が、道路管理者から後援された活動、道路管理者等と共同で実施した活動その他の道路管理者等との協力関係が認められる活動であること。
Ⅲ)活動姿勢
 直近数年間において、道路管理者若しくは他の民間団体等の道路管理に資する活動の支障となり、又はその恐れがある行為を行っていないこと。
Ⅳ)公共性
 道路協力団体として収益を得たことがある場合は、その収益に見合う法第48 条の21第1 号に掲げる業務を実施したとみとめられること。

(活動実施計画)
Ⅰ)実効性
 過去の活動実績を踏まえ、活動実施計画の実効性が認められること。
Ⅱ)貢献度
 法第48 条の21 第1 号に掲げる業務等、道路管理に対する貢献又は地域の課題解消に向けた貢献が認められること。
Ⅲ)協調性
 活動に当たって地域の関係者(関係する道路管理者等、住民、市町村、他の民間団体等をいう)との協調性が認められること。
Ⅳ)公共性
 道路協力団体としての活動で収益を得ようとする場合には、その収益に見合う法第48条の21 第1 号に掲げる業務を実施する見込みがあるとみとめられること。

7.道路協力団体に対する特例制度
道路協力団体に対しては、その取組みの円滑な実施を支援する特例制度があります。
一つは、道路協力団体に指定された場合は、オープンカフェやレンタサイクル施設等の設置について、従前の占用許可に代わり、道路管理者との協議が整うことで占用が可能となります。その協議については、通常の許可要件となっている無余地性の適用が除外となり、道路協力団体の意向を踏まえた現地の状況に応じた柔軟な方法により協議を行うことができるようになります。
もう一つは、道路法24条では、道路管理者以外の者が道路管理者の承認を受けて道路に関する工事または道路の維持工事を行うことができるが、道路協力団体は道路管理者との協議が整うことで承認があったものとみなされます。これにより、例えば花壇その他道路の緑化のための施設の設置や道路の交通に支障を及ぼしている構造上の原因の一部を除去するために行う突角の切り取り、バリアフリー化のための軽微な段差解消のための工事等をおこなうための手続等も協議によることにより手続きの負担が軽減できます。
なお、この特例は、道路協力団体が行う活動内容を勘案しながら対応していくことを可能にしたものであり、道路協力団体がおこなう全ての行為が特例の対象となるものではあありません。
また、道路協力団体に指定されることをもって道路の占用や工事がおこなえるようになるわけでなく、それらに係る協議の手続きは、道路協力団体の指定とは別におこなう必要があります。

8.第1回道路協力団体指定について
九州地方整備局では、平成28 年11 月から12月にかけて国で管理している国道の区間を対象として公募し、平成28 年12 月26 日付けで4 団体を道路協力団体に指定しました。(全国で26団体指定)
応募条件として、以下に掲げる内容をいずれも満たす団体としました。
 ・活動を行おうとする区間で直近数年間にわたり道路管理者と協力して道路管理に資する清掃・除草等の公的活動を行っている実績があること。
 ・今後さらにその活動を充実させるために安全かつ円滑な道路交通の確保又は道路の通行者若しくは利用者の利便の増進に資する工作物、物件又は施設であって国土交通省令で定めるものの設置又は管理業務により道路空間を活用して収益を得る活動を行う意志があること。
 ・道路管理者と有機的に連携し、道路空間の快適性の向上等に協力する法人。

9.九州地方整備局で指定された団体の業務内容等状況

○けやき通り発展期成会
けやき通り発展期成会は、平成5 年に設置され、21 団体で構成されている団体です。
歩道清掃のほか植栽帯の花植、管理を実施しています。
けやき通り発展期成会の指定区間は、国道202 号福岡市中央区警固~中央区赤坂の延長約0.8㎞です。
今回指定を受けた業務内容は、街路灯に地域イベントの広告旗を設置することにより収入を得て、その収益を清掃活動や花植活動に還元するものです。

○NPO道守長崎
NPO 道守長崎は、平成21 年に設置され、団体会員5 団体、個人会員32 名で構成され、道路の清掃、植栽帯の清掃、除草、花植などを実施しております。
NPO 道守長崎の指定区間は、国道57 号長崎県雲仙市小浜町北本町南湯ノ崎~同町北野の延長約0.7㎞です。
今回指定を受けた業務内容は、植栽ポットを設置し、その植栽ポットスポンサー名を入れた啓発看板を設置することにより収益を得て、その収益を道路の維持管理に還元するものです。

○道守大分会議
道守大分会議は、平成16 年に設置され、135 団体(個人含み)で構成され、道路清掃や道路愛護の啓発活動などを実施しています。
道守大分会議の指定区間は、国道10 号大分市神崎の延長約1.0㎞です。
今回指定を受けた業務内容は、スポンサー名を入れた啓発看板を設置することにより収益を得て、その収益を道路の維持管理に還元するものです。

○日南海岸シーニックバイウェイ推進協議会
日南海岸シーニックバイウェイ推進協議会は、平成18 年に設置され、45 団体で構成され、清掃活動や修景活動を実施しております。
日南海岸シーニックバイウェイ推進協議会の指定区間は、国道220 号宮崎市内海~日南市伊比井の延長約0.7㎞です。
今回の業務は、サイクリストを対象としたベンチ、サイクルハンガー、自動販売機、露店等により収益を得て、その収益を道路の維持管理に還元するものです。

10.おわりに
道路協力団体に対しては、身近な課題の解消や道路利用者のニーズへのきめ細やかな対応を期待したいと思います。
また、道路管理者としても、道路協力団体との連携により、地域の実情に応じた道路管理の充実を図って参ります。

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