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第二西海橋について

長崎県 土木部 道路建設課
中 村 泰 博

1 はじめに
第二西海橋は,地域高規格道路である「西彼杵道路」の一部として整備を進めている,一般国道202号道路改築工事区間内に施工中の橋梁であり,供用後約50年経過した「西海橋」に近接して架設されます。
西海橋は,大村湾口の針尾瀬戸(伊ノ浦瀬戸)に昭和30年に架設された固定式アーチ橋であり,アーチ支間216mは建設当時,固定アーチ橋としては東洋一,世界第三位でした。
西彼杵道路のうち,佐世保市江上町から針尾東町までの2.2kmは,平成10年11月30日に供用されており,現在の2期工事区間は平成17年度を完成目標として整備を進めています。

西彼杵道路の構造規格は,第1種第3級の自動車専用道路で設計速度80km,完成4車線となっていますが,第二西海橋を除く区間は暫定二車線で供用を予定しています。
また2期工事の延伸として,西彼町大串郷までの約6kmについても平成13年度から一般国道206号のバイパス工事として整備を進めています。
第二西海橋は平成12年度から下部工に着手し,平成15年度末から上部工架設を開始しており,今年度中にはアーチリブの閉合を行う予定です。
また,第二西海橋は針尾瀬戸を跨ぐアーチ橋と,PC箱桁橋との連続橋梁であり,橋梁諸元等については下記の通りとなっています。

上記に記載していますように,針尾瀬戸を跨ぐ鋼中路ブレースドリブアーチ橋は,中央径間240m(全長300m)の橋梁であるため,平成9年から平成14年度にかけて計7回の景観検討委員会・橋梁技術検討委員会を開催し,橋梁の形式・構造・景観等に配慮して検討を重ねました。
特に景観については,本地域が昭和30年,日本で18番目に指定を受けた「外洋性多島海景観」を特色とする西海国立公園であり,また,長崎県の都市公園「西海橋公園」として,昭和31年から整備が進められてきたことを考慮し検討しました。

2 橋種について
歴史的橋梁である現西海橋と並列した橋梁となるだけでなく,周辺の自然景観から求められるデザインを重視し「アーチ橋」としました。
架設地点は,大村湾において唯一の航路である針尾瀬戸を跨ぐため,航路高さは現西海橋の条件以上を確保することと,船舶の安全性を十分に考慮し,「中路式」としました。

3 橋梁形式について
当時の橋梁技術の結晶である現在の西海橋とも肩を並べられるような橋梁を目標に掲げ,現代の橋梁技術に求められる合理性・経済性を追求し,後世にも受け継がれるような形式として「鋼中路ブレースドリブアーチ橋」を採用しました。

4 第二西海橋の特徴について
弦材に三本の鋼管(Φ812.8mm,t=47~14mm)を使用し立体トラスを構成するとともに,鋼管内部にコンクリートを充填した「合成構造」とすることによりアーチ部材の圧縮耐力の増加,鋼管の座屈耐力の増大,部材の靭性向上などが図られ,結果的に経済性の観点からも非常にメリットが大きい構造となっています。
なお,第二西海橋の架設工事に先立ち,高流動コンクリートの配合試験及び実物大の模型による充填試験を実施し,「合成構造」となるアーチ部材の施工性を検証しました。
このような合理的な構造が現在まで採用されなかった理由として,コンクリート充填鋼管の研究が当時の段階では進んでおらず,設計基準が確立されていなかったことがあげられると思います。
また,コンクリートを充填した合成鋼管構造の橋梁の海外での施工実績は,中国で建設中を含め数橋あるのみであり,合成鋼管構造としては第二西海橋が日本初の橋梁となっています。
なお,コンクリートを充填することにより,鋼管のみで設計した場合と比べて全体で約600tの鋼重が軽減できました。

5 添架歩道について
西海橋公園は針尾瀬戸で2つの公園に分断されており,二つのエリアを結ぶルートは歩道の無い西海橋のみでした。このため,歩行者の安全性と新たなネットワークを確保すべく,本橋の車道部直下に二層構造として歩道を併設し,新たな公園の利用ルートを創出することにより,これまで未整備であった西彼町側の公園化が図られるよう計画しました。
添架歩道の構造については以下の図の通りです。

6 おわりに
第二西海橋が開通予定である平成17年度は長崎市内に建設中である女神大橋も供用が予定されており,長崎県の橋梁技術の集大成の年であるといえます。
歴史的名橋である現在の西海橋(アーチ支間長は当時固定式アーチ橋としては東洋一),新たな時代を担う第二西海橋(合成鋼管によるアーチ橋としては日本初),長崎湾を跨ぎ長崎市内の新たなランドマークとなる女神大橋(斜張橋の桁下高さ65mは日本一)は長崎県の顔となる橋梁であり,高度な技術が蓄積されたこれらの橋梁は,本県はもとより,日本の橋梁技術の発展に大きく寄与するものと考えます。

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