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排水性舗装維持管理の手引き作成と活用

国土交通省 九州地方整備局
 九州技術事務所 調査試験課
 調査係長
恵 藤 英 昭

国土交通省 九州地方整備局
九州技術事務所 技術課長
逆瀬川さかせがわ 方 久まさひさ

1 はじめに
排水性舗装を維持管理するにあたり,平成16年3月に「排水性舗装維持管理の手引き」(案)(以下「手引き」と記述)を作成しました。
排水性舗装の維持管理は,現状では統一した手法が確立されていないため,各事務所の道路管理担当者が個々の判断で対応しているのが現状です。
手引きの「序」に「九州地方整備局管内の整備状況は,管理延長約2,010㎞のうち,平成14年度時点での低騒音舗装の実施延長は約340㎞と,管理延長に対して16%強の整備状況であり,計画では平成15年度末には18%程度に延びる予定です」と記述していますように,排水性舗装には次のような特別の機能があるため,施工延長は年々延びています。

【特別な機能】
・自動車走行騒音を低減する。
・雨天時における自動車走行の安全性向上。
同時に,ポーラスな構造ということから,下記のような解決しなければならない対策や維持手法の課題を持ち合わせています。
【対策や維持手法の課題】
・骨材飛散対策
・排水性機能の維持
・路面騒音低減機能維持
・機能を維持する補修方法
上記の課題に対応するために,排水性舗装の維持・管理方法が適切に選定できる「手引き」の整備が急務であることから,九州技術事務所は平成13年度より手引き作成に着手し,最終年度の平成15年度には道路部道路管理課と共同で検討会を発足し,手引きを作成することができました。

2 「手引き(案)」の特徴
下表は手引きの目次です。

目次3に「排水性舗装の特徴」を掲載しました。これは,排水性舗装を維持管理する上で,排水性舗装の構造上の特徴や利点,弱点を知ることが適切な維持管理手法の選択を可能にするため,「3.2排水性舗装用混合物」,「3.3設計施工上の留意事項」,「3.4排水性舗装の開発技術」についても記述しました。

3 「手引き(案)」の内容(抜粋)
3.1 排水性舗装の特徴
(1)排水性舗装の機能と特徴
排水性舗装の機能と特徴の抜粋は下記の通り。

(2)騒音低減機能及び排水機能の概念
また,騒音低減機能の概念と排水機能の概念を図説で解説しました。

(3)排水制舗装の採用,設計施工上の留意事項

(4)破損の特徴
破損の特徴について手引き「4.2路面性状の破損」の項に「表ー4.2.1排水性舗装における路面性状の破損」を掲載し,表には,破損の種類を選択しやすくするために「破損状況」,「発生しやすい箇所」,「破損要因」のように工夫しました。

また,【破損要因の解説】を図示して詳しく解説しました。以下はく離と飛散について抜粋。

(5)わだち掘れの補修

ここでは紙面の都合上省略しましたが,各損傷項目についても写真を掲載して詳しく説明し,また路面の復旧方法や材料の選択,路面のあれの補修方法など,具体的に図や写真を活用して説明しています。

4 作成までの経過
手引きを作成するにあたり,手引きの内容を充実する目的で,各事務所出張所へのアンケート依頼と検討会での取り組みを行いました。

4.1 各事務所へのアンケートを依頼
直轄国道を維持管理している33出張所へのアンケート協力の依頼を行い,26出張所から協力が得られました。
アンケート結果からは,24維持出張所で排水性舗装にポットホール,路面のあれ,ひび割れ,油落とし,土砂等のつまりなど,いずれかの損傷が発生していました。

4.2 検討委員会発足し検討
手引きを作成するために,地整内の各道路管理担当者が参加し,検討を行っていただく検討委員会を発足し2回開催しました。
 〇第1回 平成15年11月13日
 〇第2回 平成16年1月29日
検討委員にはアンケート結果,手引き素案に対する意見などを出していただき,以下のような要望が出されました。
・破損の特徴から,設計・施工段階での配慮すべき事項の記述。
・交差点などでの路面のあれの対策と補修について予防保全として,設計・施工段階での考慮事項と補修方法の記述。
・機能回復と効果の評価と機能維持への移行の記述。
その他に,コンクリート版の処理方法について具体的な対策の記述などの要望も出されました。

4.3 手引き配布方法と活用について
作成した手引きの配布は,道路系全事務所の工事担当課や出張所に冊子とCD-ROMをセットにして配布しました。
巻末資料には,活用しやすいように下記の資料を参考にした「排水性舗装に関連する用語の解説集」を作成し添付しています。
 1 アスファルト舗装要綱
 2 排水性舗装技術指針(案)
 3 道路用語辞典(第2版)
 4 道路舗装用語の解説
手引きをCD-ROMで活用する場合を想定し,用語の解説集と本文とを関連づけ,手引き本文の青字箇所をクリックすると,その巻末解説集に掲載している用語の箇所に移動できるようにしています。また,用語集の用語の添付数字は手引きの本文や参考資料の主なページを示しており,逆引きも可能にしています。

5 フォローアップと今後の残された課題
手引き作成時点では,実施するフォローアップの調査予定項目を下記の2項目としました。
 ① 排水性舗装の骨材飛散に対する検討
 ② 排水機能の回復作業についての検討
その後の検討の結果①の骨材飛散については今後2年間かけて検討するものの,②の排水機能回復作業については,他の地整が検討を行っていることから九州では行わないこととしました。
また,手引きの作成時に出された排水性舗装に関する問題点及びその対策などについて,最新の情報を提供していますが,現状では十分な調査研究の成果が得られていない項目もありますので,引き続きフォローアップを行って,使いやすい手引きをめざして行く予定です。

6 後に
本手引きは,現場の要請に応えて作成したものの,排水性舗装の施工が本格的に始まったのが平成11年からであり,年数が浅く十分な調査研究の成果が得られていない項目もあり完成形となっていません。排水性舗装の施工に関わっておられる技術者からの質問や意見が,本手引きの内容を充実させる手立てと受け止めており,関係者より忌憚のないご意見をお寄せ下さるようにお願いするものです。
なお,本手引きを作成するにあたり,ご協力頂いた検討委員他多数の方々にこの場をお借りして感謝とお礼を申し上げます。

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