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一般国道497号 唐津道路の開通について

国土交通省 九州地方整備局
 佐賀国道事務所 技術副所長
中 野 道 男

1.はじめに
唐津道路は,糸島郡二丈町大字(鹿家IC)を起点に浜玉ICを経て唐津市(唐津IC)に至る延長10.4㎞の自動車専用道路で西九州自動車道の一部を構成する。
昭和63年度に事業化後,当面,浜玉IC~唐津IC間(延長6.6㎞)を先行することとし,平成3年度都市計画決定(アセス実施)後,4年度に用地着手し,7年度から工事に着手した。そして15年度の「ちゃくちゃくプロジェクト」で平成17年度に供用することを公表し,集中的・重点的に整備を進めてきた。その結果,17年12月18日に供用開始することとなった。以下に開通を迎えるまでの課題と対応,整備効果などについて述べる。なお,全体事業費は約300億円である。

2.課題と対応について
以下に事業実施段階における課題と対応等について述べる。

(1)計画
当初は,有料の自専道として整備を進めてきたが,供用前に無料の自専道に変更となったことから、公安委員会との協議が難航した。政策の変更は,関係機関や地元への事前説明を十分に行う必要がある。
サービスエリアについては,無料となったため今回整備していない。今後無料でのネットワークを考慮した設置と,有料施設等用に確保した用地の利活用の検討も必要である。

(2)用地
設計変更に伴う追加買収が生じるなど地権者に混乱を招いた。今回も数件が難航していたことから事業認定の手続きを進め,告示まで行ったが最終的には任意で買収できた。
用地の確保は,工事工程を念頭においた取得が必要である。混乱を招かないために,は十分な調査・検討を行い,幅杭の変更が生じない設計とすることと,協力してもらうための説明責任を果たすべきである。

(3)工事
約130万㎥の切土のうち,軟岩,中硬岩が約3割を占めた。また,土砂や軟岩中に転石が混在し,その量は1万㎥にもなり,大きなものでは直径が5m程度のものもあった。このため,機械掘削の作業効率を低下させた。また,地質調査不足による推定岩盤線の大幅な変更が生じた。
これらの対策として,自走式破砕機による小割等を行い,路床や路体材,盛土法尻の巨石積みへの利用のほか,河川護岸工事など他事業へ利用した。

また,切土施工中に近傍の農家より井戸水低下や水田用水の枯渇の苦情が寄せられた。応急処置として,散水車による補給を約50日間行った。現在,水文調査による地下水の状態や対策工の検討を行っている。
トンネル区間では水文調査をやるのが一般的になっているが,それ以外は実施していないのが多い。以上のことから,事業箇所全般を網羅した地質調査や水文調査に十分な配慮が必要である。

3.新技術・新工法,コスト縮減の取り組みについて
3.1 新技術等の主なもの
①軟弱地盤上の橋台背面対策に気泡混合軽量盛土(FCB)を採用。
②立竹木伐採材や除根材をチップ化後,法面吹き付け材として利用。
③深礎杭施工において,ライナープレートの代わりにモルタル遠心力吹き付け工を採用。
など

3.2 コスト縮減対策の主なもの
①転石・中硬岩の大割石を法尻等への利用や,唐津市区画整理事業との土の利活用調整による土運搬距離の短縮。
②付け替え市道を盛土部の横断函渠構造から,ルート変更による高架橋下の利用。
など
コスト縮減を行うには,職員自ら「自分のカネ」といった意識を持つことと,コスト縮減と安全性を判断できる技術力が必要不可欠である

4.工程管理について
当初,下り線側での暫定供用を行うことで事業を展開していたが,一部の区域で用地買収が困難となり,この用地がクリテイカルとなった。
このため,供用目標を達成するために,事業認定の手続きを進める一方,任意取得の道を探りつつ,暫定供用の線形を一部上り線側に変更した。
一方,事務所長をトップにした「唐津道路プロジェクトマネジメント」を17年1月に組織した。組織後は,毎月1回開催し,課題と処理期限,役割分担を明確にするとともにチェックを行った。
工程管理で大事なことは,「できるだけ早く」ではなく「いつまでやる」と期限を明確にすることである。また,課題解決には情報共有化により,「一人で抱え込ませない」などメンタルヘルスも念頭においた対応が必要である。

5.関係機関との協議について
自専道指定は,供用開始前に道路法第48条の2の2項により,整備局長から県公安委員会への協議と官報告示が必要となるが,官報告示も本省上申後,約1ヶ月を要する。
唐津道路の場合,無料の自専道になったことから,事故発生時の管理体制で公安委員会との協議が難航し,協議だけでも約7ヶ月を要した。
また,情報板設置も警察庁との協議となるため,公安委員会との協議は早い時期から進めることが肝要である。この手続きをおろそかにすると供用に間に合わない。

6.管理体制について
今回の供用に伴い,各出張所の管理区間を見直した。唐津道路を管理する唐津維持出張所は,職員が4人で,しかも唐津市内の在住者は1人しかいない。このため,管理マニュアルを作成するとともに初動体制には維持工事業者の協力を得るなど管理体制の充実を図った。
無料の自専道でも有料区間と連結している場合,通常,県警高速隊の管轄になり,事故発生時でも料金所の閉鎮など初動体制もとれる。
今回は,単発区間での無料自専道のため唐津署の管轄になる。唐津署からは事故発生時の通行車両の排除や,誘導措置を道路管理者に対応して欲しいとの意向もあり,供用開始前に交通事故を想定した合同訓練を行うなど円滑な運用を目指している。
昨今,官民問わず危機管理のあり方が問われている一方で,職員は益々少なくなる傾向にある。このような状況の中で,今後の管理体制のあり方が大きな課題と考える。

7.整備効果について
①時間短縮による効果
浜玉ICから唐津ICまで完成すると,唐津バイパスなど現道を利用した場合よりも所用時間が約6分短縮する。その結果約28万人時間/年(約85億円に相当)の時間短縮効果が期待できる。
②CO2の排出抑制の効果
二酸化炭素を吸収する森林面積の160haに相当する。これは唐津城敷地面積の約37倍にあたる。その結果,年間約9百t-CO2/年の削減効果が期待できる。

8.広報活動について
高校生の現場見学会や,道の日親子見学会,ちゃくプロ看板の設置,出前講座のほか「西九通信」を創刊し4半期に1回地元等に配布している。
また,11月からは昭和自動車味の協力により開通日をPRする高速バスを福岡~唐津間,福岡~伊万里間で運行開始している。
少ない予算の中で道路整備の必要性をPRするために,どの手法が有効で効果的かを判断し,見極めていくこともこれからの課題と考える。

9.開通
12月18日には,宮田局長をはじめ,地元選出の国会議員や本省の国道・防災課長,佐賀県知事,唐津市長など約200人の参加のもとに開通式を開催し、開通を祝った。

10.おわりに
最後になるが,開通までの種々の課題に対し,ご尽力いただいた地元の唐津市をはじめ佐賀県の皆様に謝意を述べるとともに残る西九州自動車道の早期完成に向け,関係機関と一体となって取り組んでいく所存である。

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