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川内川・湯之尾捷水路工事について

建設省 川内川工事事務所

1 はじめに
川内川80㎞付近の湯之尾地区は両岸に温泉街を控え,川内川上流域では有数の保養地として,地域の人々に広く利用されている。ところが,温泉街を貫流する川内川の川輻が狭いことや,同地区の約2㎞下流にある湯之尾の滝による洪水時のせき上げの影響で,従来から度々浸水被害を被っていた。
そのため,昭和51年度から湯之尾の滝を迂回する分水路(湯之尾堰)工事に着手し,昭和58年に完成した。これにより温泉街の流下能力は,以前の400m3/sに対して2倍以上の900m3/sまで増大した。
ところが,昭和59年頃から温泉源の水位低下に伴う地盤沈下が徐々に発生し最大2.5mに及んだため,盛土等の対策により温泉街の流下能力確保を図ったが,沈下はその後も進行し900m3/sの流下能力が750m3/sまで低下するに至った。
そこで,79㎞~81㎞間の左岸側に,湿泉街を迂回する捷水路を開削して河積拡大を図ることとし,昭和61年度から事業に着手した。これにより温泉街の洪水被害を抜本的に解消し,合わせて上流の轟狭窄部の開削にも着手できるようにしたものである。

2 捷水路の全体計画
川内川は,昭和48年に策定された工事実施基本計画(計画規模1/100)では,湯之尾捷水路区間の計画高水流量は2,700m3/sであるが,当面の改修は治水効果の早期発揮および上下流との安全度のバランスならびに施工性等を考慮して,暫定計画流量1,620m3/sにて実施している。
捷水路の規模は計画法線幅(川幅)140m~150m,低水路幅70m~80m,計画河床勾配1/1,360である。
当地区は南九州特有のシラス地帯であることから,堤体材料にシラス系の掘削土を用いてコスト縮減を図る方法を試みている。また,温泉街に隣接することから,設岸や橋梁等の構造物は環境面に配慮した工法を採用している。

3 段階施工による捷水路掘削
当面の施工は計画河床高より3m高い暫定河床高にて掘削を行い,暫定計画流量を流下させるものである。当該区間は湯之尾堰の湛水区間であることから,施工は上下流の旧堤を残して中間部をドライ施工にて段階的に掘削した。施工にあたっては,既設道路(橋梁)の切り替え,工事中の排水対策,残土の処理,周辺地下水対策,年度ごとの工事量(工事費)の配分など,種々の制約条件を考慮しながら,早期に通水を行うための効率的な施工計画を策定した。
昭和61年度から着手し,平成11年6月の出水期前には暫定掘削と上流側旧川締切りを完了して暫定通水を迎えるに至っている。

4 旧川締切り工法
旧川締切りは捷水路のなかでも最も重要な工事であり,かつ湯之尾堰湛水区間内での特殊条件下における施工となる。そこで,洪水に対する堤防の安全性,耐震性,漏水防止対策,施工性,経済性等,種々の観点から比較検討し,図ー2に示すような「タイロッド式鋼矢板護岸」を採用した。
この工法は,湛水区間における仮締切と本提の護岸を兼ねるものであり,さらに旧川締切りに必要な漏水対策まで兼用できるため経済性・施工性において最も有利な工法である。

5 旧川処理および利用計画
捷水路完成後の旧川処理(写真一2右側)については,図ー3に示すような地域と一体となった有効利用計画を検討しているところであるが,締切りによる内水の問題,水質の問題,平常時排水処理の問題等,残された課題も多い。今後は施設管理面等も踏まえて検討を詰めていきたい。

6 おわりに
捷水路は,本年度の暫定通水により事業効果の早期発現が可能となったが,今後残された下流側の旧川締切りや,前述の旧川処理の問題,捷水路の河床(シラス)維持の問題等,残された課題について,さらに検討を加え,事業の完成に向けて取り組んでいきたい。

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