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フレンドリーブリッジ 南筑橋

福岡県 土木部 道路建設課
宮  直 史

1 はじめに
南筑橋は,一般県道唐尾広川線の一級河川矢部川を渡河する地点に設けられる橋長248.0mの橋梁である。一般県道唐尾広川線は,山門郡瀬高町を起点とし,筑後市,八女市,八女郡広川町までの2市2町にまたがる地域間を連絡する幹線道路である。
近年,県南部からの物流を九州縦貫自動車道八女ICにアクセスする道路として交通量の増加と車両の大型化が進行している。さらに,現在2市町(筑後市・瀬高町)にまたがって整備されている県営筑後広域公園の東の玄関口となるため,さらなる交通量の増加が見込まれる。

しかし,現在の南筑橋は,昭和5年に架設されて,以来約70年の経過とともに老朽化が著しく,また幅員が狭いうえ歩道も無いことから,歩行者と車両が輻輳し危険な状況となっている。また,治水上も堤防高不足,支間割是正の改善が河川管理者から求められていた。
このため,安全で安心できる交通環境の確保および治水能力の向上,また八女ICや県営筑後広域公園のアクセス強化を図るため,平成8年度から橋梁架替事業に着手した。現在,平成20年度の供用を目指し,上部工の架設工事を行っている。
ここでは,南筑橋の概要や特色,また特に留意した点等について紹介する。

2 南筑橋の概要
①箇所名 福岡県山門郡瀬高町大字小田~筑後市大字溝口
②事業延長 520m(うち本橋梁248m)
③道路規格 3種2級
④道路幅員 6.5(14.0)m
⑤事業期間 平成8年度~平成20年度(予定)
⑥工事内容〇本橋
南筑橋 L=248m
エクストラドーズドPC橋
〇取付橋
唐尾橋(仮称) L=84m
PC中空床版橋
南筑北橋(仮称) L=112m
PC中空床版橋

3 南筑橋の特色
南筑橋のかかる一級河川矢部川流域は,天然記念物の「ゲンジボタルの発生地」であり,また江戸・元禄時代(1690年代)に治水工事の一環として植えられたと言われる樹齢300年有余年の楠木林は全国でも珍しい密生繁茂林として知られており,森林浴を楽しむ行楽客で賑わう。この様に自然豊かな周辺環境を背景に新設される南筑橋を,歴史に息づく矢部川と周辺の楠木林との調和を奏で,県営筑後広域公園の東の玄関ゲートとしてふさわしい,シンボリックで景観に優れた橋梁とするため,平成6年に大学助教授や地元有識者等が委員となり「矢部川橋梁景観検討委員会」を設置し,橋梁形式の検討を行った。
その結果当時としては全国でも架設された事例が1件のみであった,エクストラドーズドPC橋を採用することとした。
景観デザインにおいては,以下の3つをキーワードとし,本橋と主塔及びその周辺に分けて検討を行った。

景観上のキーワード
①筑後広域公園のゲートとなる橋
②矢部川ののびやかな河川,楠木林に調和する橋
③地域に親しまれる美しい橋

本橋については,
①道路両側の低い主塔がゲートをイメージさせる。
②力強さをイメージした斜材と太陽をイメージした主塔が安定感を感じさせられる。
③桁高が低く,スレンダーである。
以上のことから,エクストラドーズドPC橋を採用した。

主塔及びその周辺については,
①主塔は橋軸方向の変化やスッリトを設けて,ゲートを強調させる。
②橋脚頭部にスリットを設けて,桁の連続性を強調させる。
③橋脚はどっしりとした安定感を持たせるため,下方を広くさせる。
等の配慮を行った。

4 南筑橋における留意点
(1)斜材ケーブル
本橋の施工においては,矢部川の水質保全について十分な配慮を行う必要があった。
そのなかで,斜材ケーブルの設計仕様であった「現場組立ケーブル」は,斜材保護管内へのグラウト注入作業が必要であり,この作業におけるグラウトの飛散,作業中におけるグラウト水滴の落下等に対しては,その防止設備を要した。
しかし,本橋の設計年次である平成8年度から,数年が経過し,エクストラドーズド橋の施工例が増えたことから,設計時では,市中品としては無かった周辺環境への影響を極小に抑えられる「工場製作ケーブル」の採用が可能となった。
このため,「工場製作ケーブル」の中で耐久性に優れた,エポキシプレハブタイプのPC鋼材に設計変更を行った。

(2)イメージアップ
本事業のうち,上部工建設工事は平成16年9月に着手し,完成までに2年近くを要する。また,工事には大型機械を使用するが,現場周辺は閑静な集落が存在し,また幅員の狭い生活道路を利用するため,本事業に対する地元の協力は必要不可欠であった。
このため,地域との積極的なコミュニケーションを図り,また当現場で働く関係者の意識の向上と作業環境を整え,地域との連携によって当該工事を円滑に進めるため,工事現場のイメージアップを実施している。
イメージアップの実施項目を仮設関係,安全関係,営繕関係に分けて下記に示す。

〇仮設関係
①工事広報紙の発行
2ヶ月に1回の割合で,工事広報紙(南筑橋通信)を発行している。

②広報掲示板の設置
「完成予想図」,「工法説明図」,「事業の概要」等を記載した広報掲示板を設置している。

③パンレットの作成
「完成予想図」,「工法説明図」,「事業の概要」,「工程表」,「南筑橋の特色」等を記載したパンフレットを作成した。

〇安全関係
①安全掲示板の設置
大型の安全掲示板を設置している。
②夜間照明灯の設置
右岸側堤防上に夜間照明(防犯灯)を設置している。

〇営繕関係
①現場休憩所の設置
現場休憩所を設置し,その中には畳のスペースを設け,トイレは,水洗トイレを整えた。

5 おわりに
南筑橋の架換事業は,本紙が出版させる頃には,上部工建設工事は完成し,橋面工事と取付道路工事を残すのみとなっている。
現在まで,工事が順調に進捗していることは,河川管理者である国土交通省をはじめ地元関係者の方々のご理解とご協力の賜と感謝するととともに,平成20年度の供用に向け,残る事業につきましても万全を期していきたい。

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