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「ひと・もの・いのちをつなぐ道」 (宮崎県内の高速道路の整備状況)
梅下利幸

キーワード:高規格幹線道路、東九州自動車道、九州中央自動車道

1.はじめに

宮崎県は全国有数の豪雨地帯であり、毎年のように浸水被害や土砂災害に見舞われていることに加え、深層崩壊の発生頻度が「特に高い」とされる面積の県土に占める割合も38%(全国2番目)と非常に大きなものとなっています。
また、地震・津波に関しても、内閣府公表の南海トラフ巨大地震の被害想定において最大死者数が42,000 人(全国5番目)、津波浸水面積12,400ha(全国4番目)、経済的損失試算額4.8兆円(全国10 番目、九州で1番目)に達するなど非常に厳しい結果となっているほか、東南海・南海・日向灘地震も今後高い確率で発生する可能性があり、大きな脅威となっています。
しかしながら、さまざまな危機事象に対応し、県民の安全・安心を確保するために必要となる社会資本整備については全国に比べて大きく遅れており、特に、地震・津波などの自然災害に強い県土づくりに向け、「命の道」となる高規格幹線道路(以下「高速道路」という。)等の早期整備が強く求められています。

2.高速道路が必要な理由とは
高速道路は、一般道路と比べて「速達性」と「定時性」に優れています。
この速達性(制限速度が高く目的地に早く移動できる)によって、新たな企業の誘致や、新鮮な野菜や魚などを扱う農林水産業などさまざまな産業の振興が期待できるとともに、高度な医療ができる病院(第三次救急医療機関)への搬送時間が短縮され、救命率の向上など救急医療活動の支援も可能となります。
また、定時性(信号がなく到着時間の目安が立てやすい)によって、トラック輸送などの物流の効率化が期待できるとともに、県内の観光地を巡る周遊観光ルートの形成が進めば、宮崎の魅力の発信や観光産業の振興も支えることができます。
さらに、高速道路は、南海トラフや日向灘沖を震源とする巨大地震の津波発生時の救助活動、救援物資の輸送、復旧・復興活動などに「命の道」としての大きな役割も期待されています。

3.遅れている宮崎県内の高速道路整備
1)九州全体の高速道路の整備状況
九州の高速道路は、よく西高東低と言われます。これは九州西側の九州縦貫自動車道と東側の東九州自動車道を例えたものです。九州縦貫自動車道は、今から18 年も前(平成7年)に「人吉~えびの間」の開通により全線開通しました。しかし、九州東側にある東九州自動車道全体の供用率は55%(平成24 年度末現在、以下同じ)と大変整備が遅れています。西九州では、九州新幹線も平成23 年3月に全線開通するなど、九州東西で地域間格差がますます拡大している状況です。また、九州全体の一体的な発展を図るには、九州を東西に横断・連絡する高速道路も重要ですが、現在、熊本と延岡を結ぶ九州中央自動車道(九州横断自動車道延岡線)の供用率はわずか9%しかありません。
これら東九州自動車道と九州中央自動車道は、九州縦貫自動車道と一体となって、九州全体の循環型高速交通ネットワークを形成し、九州の東西格差の解消とその一体的浮揚に寄与するとともに、将来想定される南海トラフ巨大地震による大津波といった災害時においては、東日本大震災の際の「くしの歯作戦」でも大きな役割を果たした「命の道」として機能する重要な路線となります。
しかしながら、宮崎県内における両路線の高速道路整備は特に遅れており、県全体の高速道路の供用率は61%にとどまり、九州72%、全国75%と比べて大きく下回っています。さらに、本県の高速道路は、未事業化区間の割合が全国や九州平均の2倍以上(約2割)が残されている状況です。
2)東九州自動車道の整備状況
東九州自動車道は、北九州市を起点とし、福岡、大分、宮崎、鹿児島を結び、鹿児島市に至る全長436 キロメートルの高速自動車国道です。
昨年度(平成24 年度)は、東九州自動車道の県内5区間が開通しました。「須美江~北川~延岡間」の2区間が昨年12 月15 日に、「都農~高鍋間」が同月22 日に、東九州自動車道で初の県境をまたぐ区間となる「蒲江(大分県)~北浦間」が今年2月16 日に、「清武JCT~清武南間」が今年3月22 日にそれぞれ開通し、この開通区間の距離を合わせると、九州縦貫自動車道宮崎線の「宮崎~都城間」よりも長い37 キロメートル(県内区間分)となり、宮崎県内の東九州自動車道の供用率も、この1年間で34%から54%と半分を超えるところにまでに至りました。
これまで、長年にわたり整備に携わってこられた国や西日本高速道路㈱の関係機関の皆様のご苦労に敬意を表しますとともに、各市町村、県・市町村議会、地元経済界ならびに「道づくりを考える女性の会」など、当県の高速道路を力強く応援して頂いた皆様に心より深く感謝申し上げます。

 

今後の見通しとしては、西日本高速道路㈱が整備中の「日向~都農間」が今年度(平成25 年度)に開通すれば、延岡市と宮崎市が高速道路でつながります。
また、国土交通省が整備中の大分県境付近に残る「佐伯~蒲江間」と「北浦~須美江間」の2区間が、大分・宮崎両県の要望している平成26 年度までに供用前倒しとなれば、北九州市から宮崎市まで一気に高速道路で結ばれることになります。
宮崎県北部での開通が見込まれる一方で、県南部では、供用見込みが公表されていない「清武~北郷~日南間」の事業推進や、東九州自動車道に唯一残る基本計画区間である「日南~志布志間」では、早期事業化に向けた計画段階評価の進展が待たれるところです。

 

3)九州中央自動車道の整備状況
九州中央自動車道は、熊本と延岡を九州の中央部で横断・連絡する全長約95 キロメートルの高速自動車国道です。
熊本県側は、「御船から山都間」の23 キロメートルが平成19 年度から国土交通省の新直轄事業として整備が進められています。宮崎県側は、「蔵田~延岡間」の約13 キロメートルが国道218号北方延岡道路として国土交通省によって整備されており、既に「北方~延岡間」の9キロメートルが開通しています。また、平成20 年度末に「高千穂から日之影間」の約6キロメートルが国道218号高千穂日之影道路として事業化されています。
今後は、平成22年に「重点港湾」に指定された細島港(日向市)を、物流における九州の扇の要として生かしきるため、基本計画区間である「山都~延岡間」の早期事業化を強く求めていくことが必要となっています。特に現道線形の悪い「蘇陽~高千穂(末市)間」の早期事業化が喫緊の課題と言えます。

4.宮崎県の高速道路整備に必要なこと
公共事業予算を取り巻く厳しい状況の中、宮崎県の高速道路の早期整備等を実現していくために、以下の取組を加速していくこととしています。
1)高速道路整備のための予算確保
高速道路の国土ミッシングリンクの早期解消が図られるよう、地方における高速道路の必要性と、その整備に必要となる予算の確保、特に整備の遅れた地方への重点配分について、地元経済団体や各県と連携しながら、国等関係機関へ強く働きかけます。
2)未事業化区間の早期事業化
東九州自動車道「日南~志布志間」、九州中央自動車道(九州横断自動車道延岡線)の「熊本県境~高千穂(末市)間」及び「日之影西~蔵田間」が未事業化区間として残されており、その早期事業化を関係機関に働きかけていきます。
3)スマートインターチェンジの整備促進
既存高速道路を有効活用し、利便性の向上、地域の活性化及び防災機能の強化などに大きな効果が見込まれるスマートインターチェンジについては、県内3箇所(門川南、国富、山之口SA)の早期事業化・整備促進を図ります。
4)高速道路の利活用促進
 県内高速道路が相次ぎ開通することを踏まえ、意識の高揚を図り、その開通効果を地域の活力につなげていくために利活用促進にも努めます。

5.おわりに
昨年度(平成24 年度)は、和銅5 年(712)の『古事記』編さんから1300 年目のメモリアルイヤーでした。宮崎県が古事記の舞台に登場することもあってか、宮崎牛日本一2連覇をはじめ、東九州道5区間37㎞の開通、ドクターヘリ就航、延岡学園男子バスケ2冠・連覇、鵬翔高校サッカー部全国制覇、WBC日本代表合宿、東京ガールズコレクション初の野外開催(延岡市)、45 フィートコンテナ輸送に関する構造改革特区認定(全国2番目)などなど、宮崎県にとって明るい希望の光が差す「岩戸開き」の年となりました。
宮崎県は平成22 年から23 年にかけて、「口蹄疫」、「高病原性鳥インフルエンザ」、「新燃岳の噴火」という苦難に直面しました。これらを乗り越え、再生・復興の新しいステージに向かうため、地域の活性化や交流の促進に繋がる高速道路の整備がこれまで以上に強く求められております。
宮崎県にとって高速道路は、産業集積の進む北部九州地域や西九州地域との時間距離を短縮させ、企業誘致や人・物の交流を促進するとともに、災害時の緊急輸送道路としても機能発揮が期待される、大変重要な社会基盤です。
高速道路は、全体がつながってこそ、その真価が最大限に発揮できるものであり、県内の高速道路に残る「ミッシングリンク」(未連結区間)を少しでも早くつなぐことが必要です。
そのため、宮崎県では、東九州自動車道と九州中央自動車道の1日も早い全線開通に向け、必要な整備予算の確保や未事業化区間の早期事業化について、引き続き国や関係機関に対して強く訴えてまいります。

早くつなごう!「命の道」高速道路

(注) 本文は、平成25年5月31日現在で作成したものです。

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