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鳥栖久留米道路 筑後川橋下部工工事
における安全・環境対策について
坂本淳一

キーワード:鳥栖久留米道路、筑後川、ニューマチックケーソン工法、新技術

1.はじめに

鳥栖久留米道路は、福岡県久留米市内における国道3 号の交通混雑の緩和と交通安全性の向上を目的に計画された延長約4.5㎞の道路で、環状道路の一部を形成するとともに幹線道路の機能強化を図る事業である。
久留米市の道路網は、国道3 号、209 号、210号等の国道を含む8 路線を軸とした「求心放射型」の網体型となっており、特に各幹線道路が集中する市街地においては、交通混雑・交通環境の低下、さらに地域振興の阻害要因となっている(図ー 1)。
鳥栖久留米道路の整備により、交通混雑の緩和、交通環境の改善が図られ、県南部の中心的都市にふさわしい地域づくり、魅力の高まりを支援する様々な効果が期待されるところである。

2.筑後川橋の概要
筑後川橋(仮称)は、筑後川を渡河する橋長L=390.5m、幅員W=21.5m で橋脚4 基、橋台2基により構成され、橋脚部で概ねH=20m 程度である。
また、基礎形式としてはA1、P1、P4、A2 が杭基礎(場所打ち杭φ 1500)、P2、P3 がケーソン基礎である(図ー2、図ー3)。

  

3.下部工(P2・P3)工事概要
本工事は、筑後川橋(仮称)の基礎工事で河川内に構築するため、仮桟橋を設置した河川上での施工である。
基礎形式は、ニューマチックケーソン工法を採用。本工法は、あらかじめ地上で下部に作業室を設けた鉄筋コンクリート製の函(ケーソン)を築造し、作業室に地下水圧に見合う圧縮された空気を送り込むことにより、地下水を排除し、常にドライな環境・状況のもとで掘削・沈下を繰り返しながら所定の位置に構築物を設置する工法である。

4.周辺環境への対応
河川内での施工であるため、特に濁水流出・拡散を防止するため、汚濁水拡散防止フェンスの設置を行った。また、コンクリート打設時等の洗浄水、掘削土砂から発生する汚濁水を濁水処理設備で処理後に放流することで、筑後川の生態系への影響にも配慮を行い施工を行った。

 

5.下部工の施工手順
5 ー 1 仮橋・仮桟橋設置
施工が非出水期間(10 月~6 月初旬)と限られているため、工期短縮を目的とし「仮橋仮桟橋斜長式架設工法(NETIS:KTー990222ーV)を採用した。
本工法は、桟橋上部工を平場にてパネルとして組み立て、天秤式の斜張式設備で設計位置に固定、そのパネルを支持杭を打ち込むための導材として使用し、鋼管を直接河床部に打ち込むものである(写真ー1)。

 

5 ー 2 締切及び築島盛土
 河川内に工事用の島(施工ステージ)を構築

5 ー 3 皿板設置及び刃口据付
 木製皿板を水平に設置し刃口金物を据付

5 ー 4 ニューマチックケーソン基礎構築
 鉄筋・型枠を組み立て1ロット目(作業室)のコンクリート打設を実施

5 ー 5 艤装(掘削設備の組立)
 マンロック、マテリアルロックの設置

5 ー 6 沈下掘削
作業室内に掘削機を組立、有人により掘削開始。ケーソン初期掘削時の不安定な状況を直接目視しながら慎重に掘削を実施。
掘削土は土砂ホッパーに投入後、場内仮置場へ運搬。
2 ロット以降は艤装~ 沈下掘削・構築を繰り返すこととなるが、工期短縮を図るべく、基本的に沈下掘削を夜間、艤装・構築を昼間に行った。

5 ー 7 無人化施工
作業室内は常に高気圧下での作業環境であることから、できる限り作業員への負担を軽減する必要がある。そのため、当現場においては、気圧0.14MPa(EL=-9.7m)を超えた場合、地上遠隔操作による無人化掘削システムを採用した。
無人掘削では、ショベルオペレーターが地上遠隔操作室から天井走行式潜函用ショベルを遠隔操作することにより掘削を行った。
オペレーターは、操作室の設置した函内状況や掘削状況及びケーソン傾斜状況等を確認できるモニター、ロックテンダーとの合図用ブザーなど、遠隔操作に必要なデータを得られる設備を使用し掘削を実施した(写真ー 2)。

6.ニューマチックケーソン工法の安全・環境対策
6 ー 1 エアーブロー対策
施工箇所周辺には井戸が多く分布し、飲料水としての利用も多い。施工時に刃口から漏気した空気が井戸に影響を及ぼす危険性があるため、漏気回収装置を設置し、周辺井戸への貫流防止対策を講じた(図ー 4)。
現地の地層はほぼ砂礫層で構成されているものの、T.P-6 付近に粘土層が分布しているため、この層以下で漏気が発生した場合、粘土層沿いに漏気が水平方向に走り、井戸への影響が懸念されることから、水堀り(ドライではなく、水を張った状態)での施工も適宜併用し実施した。しかし、ブローの抑制には効果があるものの、刃口の掘削状況が目視できないため、沈下管理が難しい側面もある。

6 ー 2 酸素減圧
常に高気圧下の作業環境のため、0.18MPa から酸素減圧を実施することで、体内溶存窒素の減少が早くなり、高気圧障害(減圧症)を抑制・防止することができた。

 

6 ー 3 大気圧エレベータ
ケーソン函内への昇降が最大約35m(P3)の垂直に設置した螺旋階段を利用することになるため、作業員の転落災害の危険性、さらに高気圧下での身体負荷が大きいとこから、減圧症を誘発する可能性が高い。これらを防止するため昇降用エレベータを設置した。

 

6 ー 4 消音ロック
筑後川右岸側背後地には住宅地が広がっていることから、特に夜間施工時の騒音に気を配る必要がある。そのため、マテリアルロック送・排気管には消音装置を装備するとともに、ケーソン沈設に伴い作業室内の圧力が上昇することで、ワイヤーボックスからの漏気音対策として消音ロックを設置を行った。

 

7. その他の取り組み
7 ー 1 品質の向上について
コンクリートの充填性やひび割れ防止対策として下記新技術を採用した。

 

7 . 2 出来形の向上について
ケーソン掘削時の偏心・傾斜対策としてガイド支保工を設置した。

 

8.おわりに
鳥栖久留米道路は、平成23 年10 月に筑後川橋下部工工事に着手し、今回報告してきたP2・P3 工事(ニューマチックケーソン工法)で全ての下部工が完成を迎えた。
施工時期が限定されている中、施工者の厳密な工程管理をはじめ、水面・サイクリングロード利用者等河川空間を利用される多くの方々にご理解を頂いたことに感謝申し上げたい。
今後、上部工の施工に移行することとなるが、引き続き関係機関及び利用者の理解を頂きながら進めていきたい。

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