田川城島4号線排水機場
ポンプゲートを使用した機場の紹介
ポンプゲートを使用した機場の紹介
農林水産省 九州農政局
筑後川下流農業水利事務所 施設機械課長
筑後川下流農業水利事務所 施設機械課長
山 本 常 吉
1 はじめに
幹線水路田川城島4号線排水機場は,大川市鐘ヶ江大橋の上流600m,田川城島4号線の筑後川への流出口にある。流出口は現在筑後川堤防により筑後川本線と締め切られる型となっており堤防には鐘ヶ江樋門(国土交通省管理)が設置されており,本排水機場は鐘ヶ江樋門と幹線水路の排水樋門(農林水産省管理)との間約60mの旧船留まり(標高は1m程度)を利用して設置された。
幹線水路周辺の状況変化や農地条件の変化に伴い降雨時の出水状況が変わり,幹線水路の自然排水機能が低下している。そのため,筑後川下流農業水利事業の一環として,積極的な排水合理化を図るため田川城島4号線排水機場が計画され,平成18年3月6日に竣工に至った。
狭い敷地条件に合うように口径1000㎜2台のポンプゲートを使用したので紹介する。
2 排水機場の概要
(1)総排水量:4m3/s
(2)主ポンプ
形 式:水中軸流ポンプ
呼び口径:1000㎜
吐出量:2m3/s/台
全揚程:2.2m
回転数:ss400min-1
設置数:2台
(3)電動機
形 式:乾式水中形三相誘導電動機力:75kW
電圧:400V
極数:18極
始動方法:限流リアクトル付コンドルファ始動
(4)ゲート
形 式:プレートガータ構造
純径間:4.300m
有効高:2.200m
開閉方式:電動ラック式
設置数:1門
(5)電気設備
高圧受電盤:1面 屋内鋼板製閉鎖自立形
変圧器盤:1面 同
補機動力盤:1面 同
主ポンプ盤:2面 同
機側操作盤:1面 ステンレス製屋外閉鎖自立形
(6)発電装置
型式:屋内パッケージ形ディーゼル発電機
騒音:75db以下の低騒音型
発電機容量:300kVA
原動機容量:283kW
燃料貯油槽:1800L
(7)除塵設備
水路断面:幅4.30m×高さ4.05m
本体形式:レーキ形定置回動式
背面降下前面掻揚式
設置数:1基
コンベア:トラフ型ベルトコンベア
3 排水機場の特徴
(1)ポンプゲートの採用
機場周辺は工場や倉庫が隣接しており,吸込み側に遊水池及びポンプ場を設けることが困難な立地条件であった。したがって,狭い敷地に適するポンプゲートを採用することとした。
二連の鐘ヶ江樋門のうち,一方は従来どおりの自然排水ゲートとして残し,他方を川裏ゲートに口径1000㎜の横軸水中軸流ポンプ2台を取付けたポンプゲート設備とした。
(2)既設鐘ヶ江樋門機側盤の改造
ポンプゲートの操作をおこなうに当たり,操作室から川表の既設鐘ヶ江樋門(国土交通省)の操作をおこなう必要があることから,既設盤の改造を併せておこなった。改造内容を次に示す。
1)遠方操作回路にリレー回路を追加し,その信号を補機動力盤と接続し,国交省の遠方操作と共に操作室からの開閉操作を可能とした。
2)各種状態及び故障表示信号ならびに開度信号及び外水位信号を遠隔監視と共に本機場へも出力し,状態把握を可能にした。
(3)ポンプの高速小型化
今回のポンプ仕様は大水量であることから極力高速化することにより,水中モーターの重量低減及び力率と効率の向上を図る必要があった。
当初,ポンプ比速度(Ns)約2000,モーター極数20極で計画されたが,全揚程(2.2m)が低いことに着目して,実施段階ではポンプ比速度(Ns)約2300,モーター極数18極を採用した。
結果として,ポンプゲートの軽量化を図る事ができ開閉機の能力も200KNに収まった。
(4)受電方式
高圧電力を受電することとしたが,年間稼働率が少ないことが予想されるので,自家発電設備を「常用」とし,電力会社の「自家発補給電力契約」と併用して基本料金の軽減を図った。
この契約方式を採用すると,照明や制御電源は商用電源より供給し,主電動機を運転するときは自家発電装置より供給する。
自家発電装置が故障の場合,商用電源にて主電動機を運転することを運転に先立ち電力会社へ連絡すれば,その月だけの基本料金となり,他の月の基本料金には反映されない。
4 おわりに
今回完成した田川城島4号線排水機場は大口径のポンプゲートを採用することにより,狭い敷地にもかかわらず所定の排水機場を建設することができ,大幅なコスト縮減効果を得ることができた。
平成18年以降の地域の湛水防除に寄与することができこの地域の汎用耕地化の推進に大いに役立つものと考える。