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公共工事コスト縮減に関する行動計画
=平成11年度取りまとめ結果について=

建設省 九州地方建設局
 企画部 技術管理課
施工調査係主任
佐 藤 順 二

1 はじめに
平成9年7月,九州地方建設局は「公共工事コスト縮減に関する行動計画」を策定し,公共工事のコストを抑える取り組みを実施してきた。
本稿は,行動計画最終年度となる平成11年度実績の取りまとめ結果を報告するものである。

2 公共工事コスト縮減対策について
コスト縮減の基本的な考え方は,どこかにしわ寄せをする等安易な方法でコストダウンを目指すものではなく,所要の機能,品質を確保しつつ,実質的にコストダウンを図ることが目的である。

行動計画については,国民にわかりやすい指標を示すため,具体的に数値目標を設定している。
また,施策の確実な推進を図るため,地方,民間の主体的取り組みを含め,関係行政機関と連携体制をとり,総合的に取り組むこととしている。

3 平成11年度の実績
3ヶ年内に実施可能な施策として計画している133施策うち.平成11年度は121施策で取り組みを実施した。これにより九州地方建設局全体で11.25%の縮減効果が図られた。
取り組み施策では,設計方法の見直し(設計比較検討の充実),技術開発の推進(新技術の活用),建設副産物対策による効果が大きかった。

4 事例紹介
ここでは,平成11年度に実施した施策のうち,汎用性の高いと思われる新技術を活用した事例を紹介する。
(1)非開削による情報ボックス設置(テラ・ジェット工法)
河川区域での情報ボックス設置工事において,渡河するにあたり,河床下を非開削により横断したことで,従来の橋梁添架による渡河に比べ約11%の縮減となった。

(2)鋼管杭のネジ式継手
鋼管杭は,従来,現場溶接による継手が行われていたが,あらかじめネジ加工された鋼管杭を使用することで,溶接が不要となり,約26%の縮減となった。

(3)2層同時舗装(デュアルアスファルトペーブメント工法)
種類の異なるアスファルト混合物を舗設する場合,特に高価な混合物である排水性舗装やカラー舗装を施工する場合,同時に2層舗設(敷き均し・転圧)することで高価な混合物の層厚を小さくすることができ,従来の1層ずつ2回にわたって舗設する方法に比べ,約13%の縮減となった。

(4)老朽管渠補修(ICPブリース工法)
老朽化したものや亀裂等が生じた管渠を補修する場合,従来であれば,推進工法等にて既存の老朽管渠を撤去後,新たに管渠を構築していた。
当技術は,既存管渠を内面被覆により補強補修するものであり,従来の推進工法による改築に比べ約70%の縮減となった。

(5)橋脚耐震補強(PCコンファインド工法)
橋梁の耐震対策として,順次橋脚の耐震補強が実施されているが,従来,鋼板巻き立てによる補強が行われてきた。
当技術は,鋼板に変え,プレキャストコンクリート板をPC鋼材で締め付けて設置するもので,溶接が不要となり,約50%の縮減となった。
ただし,プレキャストコンクリート板の製作数量如何によっては,コスト高となる場合もあるため,十分な事前調査を実施したうえでの工法選定が必要である。

5 3箇年計画の実績
コスト縮減の取り組みの一つとして,他省庁や地方自治体など関係行政機関で構成する連絡会議等を通じて,成功事例や問題点について積極的に情報交換等を実施してきた。
こうした取り組みにより,コストに対する職員の意識改革が図られ,最終年度には目標である10%以上を達成することができた。
なお,縮減された費用については,社会資本整備推進に充当されているが,3ヶ年の縮減総額である603億円を考えた場合,以下のような社会資本整備に相当する。
●一般国道4車線バイパスの建設に投入した場合,約17kmの整備が可能となる。
(一般国道4車線を整備するには,用地費,工事費を含め1kmあたり30~40億円かかる)

6 おわりに
行動計画の目標である10%以上の達成は,なにより関係行政機関の連携が一層強化され,一致協力して積極的に取り組めたこと,また職員の意識改革が進み,コスト縮減,価値向上の考えが浸透してきたことが最大の成果であったと思われる。
最後に,今後の動きとしては,3ヶ年の実績を踏まえ,新しい政府の行動指針,建設省の行動計画が策定される予定であり,九州地方建設局としてもこれらを踏まえたうえで,引き続きコスト縮減対策に取り組んでいく予定である。

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