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伊万里港(七ツ島地区)国際物流ターミナルについて
池田和昭
佐々木邦雄
田崎武臣

キーワード:港湾、ケーソン、コンテナ

1.はじめに

伊万里港は、佐賀県西部に位置する伊万里湾の湾奥部にあり、周囲を東松浦・北松浦の両半島と福島(長崎県)に囲まれた天然の良港で、昭和26年に重要港湾の指定を受けている。
港の最奥部の伊万里川河口付近は、鍋島藩時代に多くの焼き物(陶磁器)を遠くはヨーロッパまで積み出し『古伊万里』としてその名が知られるなど、「伊万里津」の港として大いに栄えた歴史がある。
昭和の初期から30年代にかけては石炭の積出港として盛衰を経た後、現在では背後地に七ツ島工業団地(七ツ島地区)と伊万里工業団地(久原地区)を抱える工業港・貿易港としての役割を担っている(写真-1)。

本稿では、平成24年度末の供用に向けて現在進めている七ツ島地区における国際物流ターミナル拡張整備の概要を紹介する。詳細な技術論は割愛するが、一般的な港湾整備の全体像を示すことで、一人でも多くの技術者に「港湾」への興味を持っていただければ幸いである。

2.七ツ島地区の現状と課題

伊万里港七ツ島地区は、平成9年4月に韓国・釜山港との間に国際コンテナ定期航路を開設して以来、平成23年10月現在、定期5航路週5便を運行しており、九州北西部におけるコンテナ物流の拠点となっている(図-1)。

現有の港湾施設は、水深9m岸壁が1バース(全長154m)、埠頭用地が4.5ha、荷役機械が2台(ジブ&クローラクレーン)等である(写真-2)。

中国や韓国などに近いといった地理的優位のセールスポイントを武器に、主に東アジア地域とのコンテナ貨物取扱数を順調に伸ばしてきたが、近年はほぼ横ばいの状況にある(図-2)。この要因としては、近年における世界的な経済・貿易の落ち込みもあるが、主に当港機能の限界にあるものと考えられる。1バースのため入港船舶の「沖待ち」が発生、水深が浅いため船舶の大型化への対応が困難、コンテナ荷役機能の限界などがそれである。
コンテナ物流を活性化し、雇用を含む地域の産業経済の発展により一層寄与していくためには、岸壁や埠頭の拡充など、当港における港湾機能の強化が喫緊の課題となっている。

3.国際物流ターミナル拡張整備について
前述した課題に対処するため、当港では国と佐賀県が連携して、水深13m岸壁の新設等を含む国際物流ターミナルの拡張整備を進めている。

3-1.国と県の事業概要

国と県の事業概要を以下に示す。なお、事業完了後は、水深9m~13m岸壁2バース・全長450m(現況:水深9m岸壁1バース・全長154m)となり、現在1万トン級船舶の1隻接岸から1万トン級と3万トン級船舶の2隻同時接岸が可能となる(写真-3)。
(直轄事業)
・事業期間 :平成3年度~平成27年度
・事業費   :約108億円
・事業内容 :岸壁(水深13m)L=260m
航路・泊地浚渫(水深13m)
(県事業)
・事業期間 :平成19年度~平成24年度
・事業費   :約30億円
・事業内容 :岸壁(水深9m~13m)L=36m
泊地浚渫(水深9m)
埠頭造成 1式
ガントリークレーン 1台
保安対策施設 1式

3-2.水深13m岸壁等の工事概要
岸壁構造は、港湾整備で一般的に採用されているケーソン式である。図-3に県施工区間の標準断面を示す。

(1) 地盤改良と基礎工
岸壁築造にあたりケーソン函を捨石マウンド上に設置することになるが、その底部には基岩までに厚さ約0~10mの軟弱粘土層が存在し、必要な支持力等が得られない状況にあった。このためサンドコンパクションパイル工法による地盤改良(改良率80%)を実施した(写真-4)。

(2) ケーソン製作据付と中詰工
ケーソン函は七ツ島南地区の港湾用地内で製作し、3,700トン吊り大型起重機船で吊上・運搬・据付を行った。ケーソン函内部には砂を充填し、蓋コンクリートを打設する(写真-5、6)。

(3) 裏込・裏埋工と上部工
岸壁構造の安定性を図るため、ケーソン函背後に裏込工として捨石を設置する(写真-7)。潜水士による捨石均し、背後土の吸い出し防止として防砂シートの敷設を行う。上部工コンクリートには裏埋捨石及び防舷材や係船柱等の付属施設を設置する。

(4) 埠頭造成と圧密沈下対策
エプロン部や埠頭部となるケーソン背後は、道路改良等で発生した良質土(岩砕・礫質土)で埋め立てるが、その場合でも将来的な圧密沈下が最大60㎝程度想定された。埠頭等造成後に短期間で供用開始することから、埋立部についてはサーチャージ(余盛高1.8~3.6m)による圧密促進工法を採用することにした。余盛後の圧密沈下は約3ヶ月で収束予定である(写真-8)。

(5) その他工事

岸壁等整備の他、県ではグラブ船による泊地浚渫(水深9m、約4ha)を実施した(写真-9)。
また、国でも航路・泊地(水深13m)の浚渫工事を実施中である。なお、浚渫土については、港内処分を目的に他事業で整備した伊万里港廃棄物海面処分場で埋立処分している(写真-10)。
この他、コンテナ荷役機能の大幅な向上を目的にガントリークレーンの設置を予定しており、現在、クレーンの工場製作とレール基礎工事等を進めている(写真-11)。

4.おわりに

現在、伊万里港におけるコンテナ貨物の取扱数は年間約30,000TEU程度である。今回の拡張ターミナルの供用後には、その取扱数を約1.5倍、50,000TEU程度まで伸ばしたいと考えている。
そのためには、県や地元自治体、伊万里港湾協会など官民が一体となったポートセールス、更には伊万里港への陸域におけるアクセスの機能強化が必要である。
伊万里港周辺の状況を見ると、現在急ピッチで整備が進む西九州自動車道が伊万里港の近くを通ることとなり、九州横断自動車道へのアクセスとなる国道204号や国道498 号の改良計画・整備が随時進められている(図-4)。

このような陸域・海域の交通ネットワークが近い将来実現すれば、伊万里港が地域の社会経済の中で果たすべき役割も更に高まるものと期待している。
最後に、本事業は国と県が連携して進めており、国・県・企業間の事業調整、更には県への技術的な支援等と、国土交通省唐津港湾事務所、並びに同伊万里港事務所の各位に多大なる御支援を賜っていることに深く感謝申し上げて、本稿の結びとする。

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