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詳細設計付競争入札方式による花宗水門
機械設備工事について

建設省 筑後川工事事務所
 機械課 機械係長
南 嶋 哲 郎

建設省 筑後川工事事務所
 機械課
大 村 健 之

1 はじめに
従来,公共事業においては公正さを確保しつつ品質の良いものを安価に調達するという観点から「設計・施工分離」を原則としており,機械設備工事においてもこの原則に則った発注形態を採用している。
一方,近年は公共工事における品質確保やコス卜縮減を目的とした施策の一つとしてVE方式など多様な入札・契約方式の導入が図られ一定の成果を見ているところである。
今般,これらの民間の技術力を活用する方式のうち,設計と施工を一体として発注する「詳細設計付入札方式」を筑後川下流の高潮対策事業として実施する花宗水門新設の機械設備工事において採用した。
今回は本入札契約方式の試行にあたり,請負者からの技術提案に対する評価結果および本入札方式に関する今後の取り組みについて報告する。

2 詳細設計付競争入札について
詳細設計付競争入札(Design-Build)方式とは,工事目的物の設計と施工を一つの契約で実施することである。(図ー1参照)
本入札方式の対象となる工事は,メーカや施工業者が有する特殊な技術や施工技術を踏まえて詳細設計を行うことが効率的であると考えられるもので,揚排水ポンプやゲート設備工事,高度な橋梁上部工事が対象となる。
DB方式では,設計コンサルタントには細部に至る詳細設計を求めず,工事費を適正に設定できる水準の基本設計までを行い,工事費に詳細設計費を加算し発注する。
請負者は従来どおり設計図書の照査を行うとともに,自社の有する特殊な技術や他分野での技術を踏まえ設計・製作・据付技術に関する技術提案を行い,発注者の審査・承諾を受けて施工する。
DB方式と同様に契約後に請負者からの技術提案を受付る方式として契約後VE方式があるが,表ー1にその相違点を示す。
表に示すように,コスト縮減を主目的とするVE方式と異なり,本来DB方式にはコスト縮減という概念はない。しかし,請負者の技術力を活かした提案が行われ,その安全性,信頼性,操作性および維持管理における有用性が確認されれば今後コスト縮減も大いに期待できるものと思われる。

3 花宗水門設備概要
筑後川下流域における高潮対策事業として新設する花宗水門は,筑後川左岸6/250付近の花宗川との合流点に新設される防潮水門である。
表ー2,図ー2に諸元および鳥瞰図を示す。

4 提案技術と評価
従来の機械設備工事において,請負者は詳細事項まで規定した設計図書に従い,照査・施工を行ってきた。従って,主要構造,機器仕様については変更がほとんどなく,新技術の導入や請負者独自の技術力を有効に活用することが困難な状況であった。このため,更なる安全性,信頼性,簡素化等に資する技術の導入を目的に本入札方式を採用した。
(1)提案範囲
請負者に提案を求めた範囲は,表ー3に示すとおりであり,設計基本条件に変更を伴わない範囲とした。また,土木工事が先に施工中であったため,土木構造物や主要仮設計画の変更もしくは影響を与えないことを前提とした。

今回,花宗水門において請負業者から提案のあった技術のうち主な内容とそれに対する評価結果を表ー4に示す。
評価検討にあたっては従来からの技術に対する安全性や信頼性,操作性,維持管理性,経済性等の各項目を相対的かつ定性的に評価した。
今回採用した技術のうち,特に「油圧モータ」は建設機械や船舶等の他分野では数多くの実績がある技術であるが,水門設備の開閉装置としては国内で初めて採用した技術である。
油圧モータの有用性が確認されれば,その特徴を生かした設備の簡素化が期待される。

5 今後の課題
本工事への詳細設計付競争入札制度の試行にあたっては初めてのことでもあり,発注から工事の施工に至るまで試行錯誤によるものであったが,今後,本入札方式を積極的に採用していくためには以下の項目についての具体的な方針を確立しなければならない。
1)発注段階
本入札方式に即した積算体系の整備を行い提案内容や変更に柔軟に対応できるようにしなければならない。
また,設計コンサルタントによる基本設計の範囲を明確にする必要がある。
2)技術提案実施時期
今回の場合,提案技術の検討段階には既に土木工事が施工中であり,それに影響を与えない範囲の提案に限られたが,早い時期での提案が可能になればその範囲も広がりさらに画期的な提案も期待できるものと思われる。
3)評価手法の確立
今回の提案技術の評価にあたっては試行ということもあり定性的なものにならざるを得なかった。今後は定量的かつ客観的に事前評価できる方法の確立が求められる。

6 まとめ
提案された技術を積極的に採用した花宗水門機械設備工事は平成12年3月の完成に向けて鋭意施工中である。
機械設備は長期間安全確実にその機能を果たすことが求められるため,採用した技術の評価にあたっては設備のライフサイクルに渡る追跡調査を行い,その有用性の確認と他設備への適用性等に関する評価検討を適切に行っていかなければならない。
また,機械設備工事においては,従来の重量ベースの積算から機能重視の積算体系への改訂が進んでおり,設計図書も技術的な提案が行い易いように見直されているところであり,今後,さらにこのような提案が増えることも予想される。
このため,請負者ごとあるいは現場,設備ごとに異なる提案を十分に検討評価し,積極的な採用を図り,設備としての品質の確保,コスト縮減に繋げて行かなくてはならない。

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