SI 単位系への移行について
建設省 大臣官房技術調査室
技術管理係長
技術管理係長
矢 崎 剛 吉
1 はじめに
国際単位系(SI)については,1992年に計量法が改正され,取引または証明に用いられる単位は,国際単位系(SI)に移行されることが定められ,一部の例外を除き,非SI単位を段階的に計量単位から削除することにより,今世紀中にその移行を行うこととなっている。
これを受けて,建設省の直轄工事においては,1999年4月1日以降に契約する工事の関係書類などについてSI単位を使用することとしている。
2 SIとは
19世紀まで,世界各国では,ヤード・ポンド,尺貫法など種々の単位系が用いられてきたが国際交流の促進を図るため,世界各国のメートル法への統一を目的としたメートル条約が締結されて以来,我が国も含め国際的にメートル法による単位の統一が進められてきた。しかし,メートル法の単位の中でも数種の系統があり必ずしも一量一単位とならず,混乱が生じたこともあり,メートル法もとに一量一単位の原則に立った共通の単位系を設けるための国際協議が続けられ,一般人から専門家まで共通に使える国際単位系として,SIが採択された。SIとは,国際単位系(フランス語 Le Syste‵me International d ‘Unite’s)の略称であり,下図に示すように,SI基本単位,SI補助単位およびそれらから組み立てられる組立単位並びに10の整数乗倍によって構成されている。我が国においては,JISが1974年以降順次SIの導入を進めている。
3 新計量法について
新計量法における計量単位の規制の概要は,以下のとおりである。
① 非法定計量単位の使用の禁止(法第8条1項)
この規制は,「法定計量単位1)以外の計量単位は,取引2)または証明3)に用いてはならない」という内容のものである。
② 非法定計量単位による目盛等を付した計量器の販売・陳列の禁止(法第9条1項)
この規制は,「非法定計量単位による目盛または表記を付したものは,販売し,または販売の目的で陳列してはならない」という内容のものである。
1)法定計量単位とは,SI単位と計量法で使用が認められている非SI単位(例えば,リットル(ℓ,体積),トン(t,質量),アール(a,面積),気圧(atm,圧力))を示す。
2)取引とは,「有償であると無償であるとを問わず,物または役務の給付を目的とする業務上の行為」を言う。
3)証明とは,「公に又は業務上他人に一定の事実が真実であること旨を表明すること」を言う。
4 建設省における対応
建設分野においては,工事の発注等で用いられる仕様書や設計図面には,SI単位が用いられることになる。また,工事の設計・施工のもととなるさまざまな規格値や技術基準類については,SIへの移行が必要となる。
建設分野でこれまで使われている非SI単位として,代表的なものは,kgf(力)やkgf/cm2(応力)があるが,これらは,1999年10月1日以降は使用できなくなり,代わりにSI単位であるN(力)やN/m2(応力)等を使用することとなる。
建設省では,SI単位系へのスムーズな移行へ向け,以下のようなスケジュールを作成し取り組んでいる。
① 業務委託の成果品について
平成11年4月1日以降に完了する業務委託における設計図等の表示についてSI単位によるものとする。(従来単位併記してもよい)
② 工事に関係する書類について
a) 平成11年4月1日より前に契約する工事
可能な限りSI単位を使用する。(従来単位を使用してもよい。)
b) 平成11年4月1日以降に契約する工事
SI単位による。(従来単位を併記してもよい。)
5 技術基準類のSI移行について
① 技術基準類のSI移行にかかる課題等
工事関係書類等のSI化を進める上で,その基準となる技術基準類のSI化を行う必要があり,特に以下に示す2点が重要なポイントと成りうる。
a) 質量と力の区別
質量と力を明確に使い分け,単位を適切に使用する。特に「重量」という言葉は,力と質量の両方で使われている場合がある。
b) 数値の換算,丸め方
数値をSIに換算する場合,換算係数,有効数字の取扱,切り上げ・切り捨てによる数値の丸め方等により,換算値が数通り生じる。換算値の新たな基準値・規格値の決定は,当該基準値・規格値の役割(標準値の提示,上限・下限の規定等)を勘案して行う必要がある。
② SI移行への対応
建設省では,技術基準類のSI移行を確実に推進するために,建設省が発出している技術基準類については,技術基準類の改定もしくはSI単位の換算表の作成等を実施することとし,学協会が発行している技術基準類については,必要な対応(SI換算表の作成等)を行うようお願いしたところである。
6 さいごに
建設省では,SI単位へのスムーズな移行を進めるため,年度途中である計量法の期限(平成11年9月30日)を前倒し,平成11年4月よりSI単位への移行を行っているところである。この準備として,建設省では必要な技術基準のSI化への対応,職員への周知徹底等必要な対応を行ってきたところである。
今後,現場での適切な運用を進めるため,関係者への積極的な啓発活動が必要であり,講習会の実施等により周知徹底を図って頂きたくお願いします。