一般社団法人

九州地方計画協会

  • 文字サイズ
  • 背景色

一般社団法人

九州地方計画協会

  •                                        
二車線自由勾配同時舗装による工費縮減・工期短縮について

建設省 熊本工事事務所
 工務第三課 設計係長
前 建設省 川辺川工事事務所
 工事課 工事第一係長
樋 口 洋 一

1 はじめに
トンネル内の舗装は,一般的にコンクリート舗装とされる場合が多いが,コンクリート舗装の施工において,対面2車線の横断勾配が,拝み勾配の場合は,道路の横断勾配の方向が異なるため,道路中央部に型枠を設置して,片車線づつ施工する必要があった。これに対して,勾配の方向が異なる場合でも施工を可能にする勾配可変式舗装機械を用いることによって,コスト縮減および工期短縮が可能となった。
本稿は,平成10年度にコスト縮減対策として施工された付替国道下谷トンネル舗装工事の報告を行うものである。

2 工事概要
下谷トンネルは,川辺川ダム建設に伴い,付け替えが生じる一般国道445号のうち,熊本県球磨郡五木村下谷地区に位置し,延長448m,車道幅員6.5m,歩道幅員1.5mの対面通行2車線のトンネルである。なお,付替国道下谷トンネル舗装工事は,平成10年8月~平成10年12月の工期で施工を行ったものであり,構造諸元および標準断面は,表ー1,図ー1のとおりである。

3 施工法の相違点
(1)片側1車線施工の場合
従来,コンクリート舗装の施工において,対面2車線の横断勾配が拝み勾配となる場合,図ー2に示すように片側づつの施工となっており,タイバーを支えるチェアー,ねじ付きタイバーおよび型枠が必要である。

(2)2車線同時施工の場合
勾配可変式舗装機械で施工することによって,2車線同時施工が可能となり,図ー3に示すように,型枠,チェアーおよびねじ付きタイバーを使用する必要がなくなりコスト縮減となる。

4 2車線自由勾配同時舗装の概要
(1)施工機械の特徴
施工機械の特徴は,以下のとおりである。
① 舗装幅は,アウトリガ,車体伸縮シリンダを使用し,油圧操作で5.0~8.5mの範囲で自由に調節可能である。
② 施工機械の各作業装置を左右二分割し,各々高さ調節できる機構を持たせることにより,左右の横断勾配を自由に調節可能である。また,勾配調節可能範囲は,表ー2のとおりである。

(2)施工手順
施工手順は,図ー4に示すとおりであり,以下に施工手順に従って,説明することとする。

①横断部チェア・スリップバーの設置状況は,写真ー1のように路盤上に設置した。

②下層敷均しは,図ー5に示すようにブレード型コンクリートスプレッダにより,施工を行った。また,施工状況は,写真ー2のとおりであるが,今回,スランプを4.5にして,コンクリートミキサ車により,コンクリートの搬入を行った。

③タイバーは,写真ー3に示すように人力により,中央部に設置した。

④ 補強鉄筋,鉄筋金網は,写真ー4に示すように,人力により設置した。

⑤上層敷均しは,下層敷均しと同様に写真ー5に示すようにブレード型コンクリートスプレッダにより施工を行った。

⑥締固め,荒仕上げは,図ー6に示すようにコンクリートフィニッシャにより施工を行った。写真ー6が施工状況である。

⑦平坦仕上げは,図ー7に示すようにコンクリート縦仕上げ機により施工を行った。写真ー7が施工状況である。

⑧打ち込み目地は,写真ー8に示すように人力により施工を行った。

⑨フロート仕上げは,写真ー9に示すように人力にて施工を行った。

⑨粗面仕上げは,写真ー10に示すように機械施工を行った。

⑩養生は,写真ー11に示すように養生剤を散布し,養生マットで養生を行った。

5 施工結果
2車線自由勾配同時舗装を行ったことにより,以下のような優位性が認められた。
①施工機械の移動が1回で済むことにより,レールおよび機械の移設が少なくなり,施工日数が50%短縮された。
②縦目地がダミー目地となり,型枠およびチェアーの必要がなくなり,ねじ付きタイバーを使用する必要がないことにより,2.4%のコス卜縮減となった。
③縦目地の食い違いがなくなり,左右が均等に仕上がった。
④中央部の締固めが確実にできた。
以上のような結果から,施工の省力化,工期短縮,安全性の向上,品質の向上がはかれ,最良の工法であると思われる。
また今後,2車線自由勾配同時舗装はコスト縮減,工期短縮がはかれる工法として,コンクリー卜舗装の主流となることが予想される。

6 おわりに
付替国道下谷トンネル舗装工事は,平成11年3月末の供用開始を控えていたため,電力,電話の占用工事と同時に施工する必要があったことおよびそのあとに施工を控えていた照明灯,安全施設の工事に影響を与えることもなく竣工できたことは,施工会社の方々関係機関の皆様のおかげであり,この場を借りて厚く感謝の意を表します。

上の記事には似た記事があります

すべて表示

カテゴリ一覧