長崎出島ハーバー整備について
長崎県臨海開発局
港湾課長
港湾課長
田 嶋 頼 英
長崎県臨海開発局
港湾課 係長
港湾課 係長
藤 澤 弘 明
長崎県臨海開発局
港湾課 主査
港湾課 主査
松 尾 敏 行
1 はじめに
長崎港では,近年,ヨット関係者などからの都市部におけるビジターヨット接岸施設への要望が増えており,アンケート調査を実施したところ潜在的な需要が予想以上に大きいことが判明しました。
また,長崎出島ハーバーの計画位置は,本地区一体の再開発により旅客ターミナルビル,大型商業施設,フィッシャーマンズワーフ(出島ワーフ),国際旅客船ふ頭,シーサイドパークに囲まれたエリアで,都市部における親水性豊かな賑わい空間の中心的位置を占める重要な場所である。
加えて,当地区はこのような賑わいの場へ海からのアクセスする場所であり,一般市民が海洋レジャーを身近に体験できる場所としても,非常にポテンシャルを保有している。(写真ー1)
そこで,これらの要望に応えるとともに当地区の持つ高いポテンシャルを最大限に活用するため,ヨットや中型帆船等のビジター船の一時係留施設を整備するものである。
本報告では,レジャー性の高い海洋構造物を整備する上で,特に配慮した事項を中心に整備概要について述べる。
2 計画の内容
(1)計画位置……長崎港常盤・出島地区
(2)主な施設……小型船桟橋 2基
・ヨット等の小型ビジター船(35feet級)を24隻係留できる櫛形桟橋形式とした。
・ヨット等の小型ビジター船(35feet級)を24隻係留できる櫛形桟橋形式とした。
3 浮桟橋の構造
(1)波浪条件
a 設計波高 Hmax=1.5m(WSW方向)
b 波 長 L=8.3m
c 周 期 T=2.3sec
a 設計波高 Hmax=1.5m(WSW方向)
b 波 長 L=8.3m
c 周 期 T=2.3sec
(2)設置水深
h=7.0m~-10.0m
h=7.0m~-10.0m
(3)構造形式
鋼製浮函
鋼製浮函
鋼製の浮函により,吃水(浮函の海面から下の高さ)を小さくでき,浮函,杭に作用する外力を小さくできる。
(4)主部幅
・2.0m(櫛形浮函メイン通り)
利便性を考慮し,人の通行に必要な最低幅の2.0mとした。
・3.5m(先端浮函)
浮体の安定計算に必要な幅とする。
・2.0m(櫛形浮函メイン通り)
利便性を考慮し,人の通行に必要な最低幅の2.0mとした。
・3.5m(先端浮函)
浮体の安定計算に必要な幅とする。
(5)床 版:木床版とする。
(6)保護ラバー
浮体及び船舶を保護するもので,白い船体の汚れをつけない様に白色とする。
浮体及び船舶を保護するもので,白い船体の汚れをつけない様に白色とする。
(7)浮体の塗装色
浮体側面は重防食塗を施し,色は汚れの目立たない黒色とする。
浮体側面は重防食塗を施し,色は汚れの目立たない黒色とする。
(8)渡板部
櫛形浮函と沖側の単銅形浮函を渡す渡板の上面は,床版と同じく木製とする。
櫛形浮函と沖側の単銅形浮函を渡す渡板の上面は,床版と同じく木製とする。
(9)交差部
複合パワーポスト(給水,給電,照明施設を含む)を配置する。
塗装色は,白色とする。
複合パワーポスト(給水,給電,照明施設を含む)を配置する。
塗装色は,白色とする。
(10)付属品
クロスビット(係留用の金物)
クロスビット(係留用の金物)
4 浮桟橋の係留について
(1)係留方式の検討
計画当初の係留方式は,景観上,チェーン係留の採用を考えていたが,以下のような事項により杭式係留となった。
① 干満差が3.0m以上と大きい事より干潮時と満潮時の浮体の移動量が大きく,他の係留施設の水域を侵す恐れがある。(図ー4)
② 係留チェーンがクルーザーヨットのキール部に干渉する恐れがある。(図ー5)
③ 係留鎖であるため,航走波及び反射波の影響を受けて動揺しやすい。
(2)杭式係留の構造
杭式係留の設計にあたっては,景観的なデザインを配慮して,
① 杭径を極力,小さいものとする
② 海上部への突出長は極力短くする
こととした。このことより,自立式の杭では,海底地盤からの杭の自由長が長くなり,杭に大きなモーメントが生じ,杭径を大きくしなければ対応できないことより,自立式杭構造は不採用となり,杭どうしを連結する横梁構造を検討した。
① 杭径を極力,小さいものとする
② 海上部への突出長は極力短くする
こととした。このことより,自立式の杭では,海底地盤からの杭の自由長が長くなり,杭に大きなモーメントが生じ,杭径を大きくしなければ対応できないことより,自立式杭構造は不採用となり,杭どうしを連結する横梁構造を検討した。
また,横梁構造においては,下記のような2案が考えられ,
案ー1 杭天端に横梁を設けるラーメン構造
案ー2 杭の水中部に横梁を設けるラーメン構造
案ー1 杭天端に横梁を設けるラーメン構造
案ー2 杭の水中部に横梁を設けるラーメン構造
上記の2案のうち,案ー1の水上梁は,クルーザーヨットのマストが当たらないように杭天端を高くすると,かなり杭が海上より突出することになり,景観上,案ー2の水中梁を採用する。
これらの水中梁形式により,杭径を極力細くすることが可能となったし,安全に係留することも可能になった。
(3)水中梁の構造について
水中梁構造においては,その梁の構造がトラス式梁でも,水平梁のみであっても,梁より以浅は片持梁の構造とするために,大勢に影響がない。
このため,構造的にもシンプルな水平梁の方が施工性もよいことから,水平梁のみを使用する。
また,水中梁の設置位置については,干潮時にヨット等のキールが,当たらないように-4.0mの水深に設置した。
(4)杭の塗装について
通常,杭には,黒系の重防食塗装をほどこすが,ローラの上下動により,どうしても重防食塗装がはがれ,景観上汚くなる。また,その後の維持についても,毎日,海面の干満より不可能に近いことより,今回,杭の水上部にステンレス製のプレートを巻くようにした。これにより,塗装がはがれることもなく,維持管理上もすごく向上された。また,杭の先端には,同様にステンレスのキャップをつけることにより,景観上,すっきりした構造となった。
(5)ローラ部について
杭と浮函を連結するローラ部についても,外見上,見えないように連結部の上に木製の床版をかぶせることにした。
5 連絡橋について
(1)設計条件
① 潮位:HWL+3.3m
LWL±0.0m
② 岸壁天端:+4.10m
(2)構造形式
① 構造形式:上路式アルミ製プレートガーター
② 橋 長:15.52m
③ 支間長:12.4m
④ 床 版:木床版
⑤ 有効幅員:1.20m
連絡橋の設計にあたっては,バリアフリーにも配慮し,車イスと人がすれ違いができる幅員W=1.20mとした。また,構造形式は,極力浮体にかかる荷重を減らすために軽量なアルミ製の橋とした。
(3)塗装色について
連絡橋の色については,ヨットの色にあわせた白色を基調とし,床版についても木製を使う事で港の景観に十分配慮した。
6 ゲートについて
船舶の維持管理のために,ゲートを設置したがこれについても,景観上,塗装色は,白色で統一した。また,ゲートの高さは,人が乗り越えて入れない高さ2.2mとし,さらに安心してヨットが停泊できるように監視カメラを設置した。
また,ゲートの正面には,図ー8のように浮輪をイメージした名板を設置した。
7 構造物の塗装色について
主な構造物の色については,白色系とし,どうしても汚れがつきやすい部分については,黒色とした。基本的には,多くの色を使わないで,ヨットが主体と考え,ヨットが映える白色と木製の色を使った。
また,デザイン的にもなるべくシンプルな形を採用し,連結ローラーみたいな機能的なものは,極力,外見上,見えない工夫をした。
8 その他
(1)施設の利用時間
9:00~19:00(4月~8月)
9:00~18:00(9月~3月)
※定休日/毎週火曜日
(2)利用料金
1日/2,100円(税込)
(3)利用方法
事前登録制/利用者は,事前に「船舶検査証書」及び「船舶免許」の写しを送付し,「利用者番号」の交付を受けて下さい。
事前予約制/利用者は,事前に電話等で「利用者番号」を告げ,利用日時の予約を行って下さい。
(4)問い合わせ先
長崎県臨海開発局港湾課
〒850-0862 長崎県長崎市出島町2番11号
TEL 095-822-1257 FAX 095-821-3715
長崎サンセットマリーナ(株)
〒850-0068 長崎県長崎市福田本町1892番地
TEL 095-865-3000 FAX 095-865-2273
E-mail:dejima-harbor@minos.ocn.ne.jp
URL:http://www9.ocn.ne.jp/~n-dejima/
9 おわりに
今回,写真ー2・3のように,平成14年5月1日よりオープンすることができました。
今後の課題は,浮体の汚れ,サビ等の維持管理をどのようにしてやっていくか。また,より多くの方々に長く利用してもらうための利用管理面等のソフト的な問題が課題となる。
最後に,施設の計画から現地での施工完成に至るまでにご尽力頂いた多くの関係各位の方々にここに深く感謝の意を表します。