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道路法面の特異事例等の検証について
九州地方整備局 塚原浩司
1.はじめに

直轄国道の災害危険箇所は、昭和43年8月に起きた飛騨川バス転落事故を契機として導入された「道路防災総点検」を基に管理されています。
平成8年度の「道路防災総点検」から、点検箇所を「要対策箇所」「カルテ対応箇所」「対策不要箇所」の3つに区分して、予防保全を主体とした管理を実施していますが、近年時間100mm以上の雨が降る異常気象が年々増加するなど気象の変化や、点検時からの時間経過による地形・地質などの変化により、平成8年度防災総点検時の想定外箇所からの災害も顕著化してきています。
道路防災総点検については、平成18年度にフォローアップ点検を行っており、その間の課題も解決されつつありますが、九州地方整備局管内は、九州地方特有の特殊土が分布する災害の常襲地帯でもあるため、本稿は、平成8年度防災総点検時の想定外箇所からの災害について、その災害発生状況の実態を把握し、災害事例などからその要因を検証することにより、「想定外災害(後述)」のパターンや対応方針の提案等の検討を行ったものです。

2.調査概要
2-1.災害の事例収集
災害資料については①平成9年から平成18年までの災害申請資料と②九州地方整備局所有の道路災害データベースにある災害資料を対象として事例を収集しました。その際に、路面冠水、積雪、凍結、事故、看板や民家電柱の倒壊、倒木や折木散乱については除外しました。

2-2.現地確認調査
現地の確認調査は、災害現場の踏査のほか、九州地方整備局の各出張所からのヒヤリングや災害関係の地質調査結果、対策工に関する資料収集も含めて行いました。

2-3.検証フロー
検証フローは下記の通りです。

3.調査結果
3-1.災害の事例収集結果
(1)災害履歴データの収集整理の結果
災害の事例収集により得られた災害の件数は275件、このうち「平成8年度防災総点検」により「対策不要」もしくは点検対象外となっていた箇所は71箇所で、これらを「想定外災害」箇所としました。(図-2参照)

想定外災害は、図-3に示すように7月の梅雨期や9月の台風シーズンに多く発生しており、通常の災害と同様に降雨の影響が大きいことが分かります。また、発生年毎に想定外災害の規模を見ると図-4のように、近年の降水量の変化に伴って規模の大きな災害が発生しています。

(2)災害の要因調査結果
災害要因調査は表-1に示すように前記71箇所から崩壊土量が200m3以上と比較的規模が大きく、データが揃った10箇所を選定して対象として行いました。調査結果から、想定外災害は地形や地質、災害形態に共通性があり、連続雨量との相関も大きく、「もらい災害」*1) も多いことが分かりました。
「もらい災害」*1): いわゆる道路管理をしている区域外で発生した崩壊土砂等によって道路が被災する災害。例えば、表-1番号53のようにJRと隣接する斜面が崩壊し、JRを乗り越えて国道が被災するような災害。

3-2.災害形態の分類
図-5に想定外災害の災害種別を、図-6に想定外災害の災害形態を示しています。想定外災害の災害種別は、「落石・崩壊」が49件(約 70%)と大半を占めており、それに「盛土」(9件、13%)と「擁壁」(8件、11%)が続く状況となっています。盛土と擁壁を加えるとかなりの比率を占めていることがわかります。
想定外災害の災害形態は、「土砂流出」が20件(28%)と最も多く、「自然斜面の崩壊」が16件(23%)、「切土法面の崩壊」が9件(13%)、「盛土崩壊」が5件(7%)と続いています。

3-3.要因毎の検証分析結果
要因については、地形・地質と降雨について検証分析を行いました。なお、地形地質の検証分析は、地形地質が記載されている29箇所を対象として行い、降雨についての検証分析については、降雨データが記載されている38箇所を対象として検証分析を行いました。

(1)地形・地質の要因分析
想定外災害は、凹状地形(41%)で最も多く発生しており、それに続き平坦地(28%)、平滑斜面(24%)で発生しています。(図-7参照) 地質条件としては、崩壊土量が200m3以上の場合には、自然斜面で発生することが多く、特に地形的に凹地に分布する崖錐堆積物やシラス、火山灰で発生する傾向となっています。また、単純に地質条件に盛土(人工構造物)を含めて考えると、盛土(38%)が最も多く、次に崖錐堆積物(24%)、風化岩(14%)が続いています。(図-8参照)

(2)降雨に関する検証分析
崩壊土量が200m3以上の災害は、連続雨量100mm以上、時間雨量30mm以上でほとんどが発生しています。崩壊土量100m3以下の想定外災害は、連続雨量100mm付近に集中する傾向があります。
想定外災害は、連続雨量が約100mmになると発生し始め、連続雨量が100mmを超え、時間雨量が30mmを超えるような強い降雨があると大規模なものが発生する傾向があります。

4.まとめ
4-1.災害の特徴
道路法面崩壊の特異事例について、収集した事例から、災害の特徴を以下にまとめました。
(1)地形・地質的素因
凹状の集水地形で、勾配が約40°以上の急斜面で火山灰や崖錐堆積物などの未固結土砂が分布する。切土法面が安定勾配より急である。また、崩壊地形の存在など、繰り返し崩壊を起こす傾向がある。

(2)降雨の要因
崩壊土量が100m3以上の、比較的大規模な災害は、最大時間雨量30mm以上でかつ最大連続雨量100mm以上で発生する傾向がある。

(3)植生、開発行為、管理状況等の誘因
管理区域以外の排水路の不備によるもらい災害が多く、関係機関との協議が必要となっている。斜面頂部付近が開発されて、表流水が集中し、これが災害の誘因となっている。急斜面における植林の倒木や側溝のゴミ詰まりによる機能低下も誘因の一つとなっている。

4-2.今後の課題
また、今後維持管理を行う上での課題として次の事項が考えられます。
        

  1. (1)地形判読による崩壊跡地形、崩壊履歴の評価や道路際の急斜面における杉、ひのきなど荒廃した植林地に対する対処法、竹などの植生の分布による危険箇所の評価が必要。    
  2. (2)道路管理者用のハザードマップ作成による危険箇所、災害時の対応策と日頃からの認識。可能な範囲での道路利用者、地域住民への事前情報の発信が必要。    
  3. (3)道路管理者は、管理区間外からの流入も含めた排水の状況、道路周辺の開発状況、地域特性のある土質、危険地域(過去災害履歴等のある地域)、植林の状況、浸水想定地域、迂回路の可能性、災害発生時の対応の流れを日頃より把握しておく必要がある。    
  4. (4)自治体等と平成18年道路防災点検結果の情報を共有し、直轄国道管理区域外の管理者にも、適宜対策を促す必要がある。

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