西鉄天神(福岡)駅~平尾駅間連続立体交差事業について
白水清隆
1.はじめに
わたしは、平成二十一年、鉄道事業本部副本部長を拝命しました。わたしは元来「土木屋」で、入社以来二十数年施設を担当してきました。中でも連続立体交差化事業に大半を費やし、四つの事業の高架切替に携わりました。
それらの四つの高架化事業のうち、私が係員から課長になるまで十二年間にわたり携わってきた「西鉄大牟田線(福岡~平尾間)連続立体交差事業」についていろいろな経験と思い出をもとに以下に述べさせて頂きます。
2.日々追われた苦情対応
この事業は、西鉄天神大牟田線(事業当時は西鉄大牟田線)の起点の駅である西鉄福岡(天神)駅から薬院駅を経由して平尾駅までの約1.6㎞を高架化し、9箇所の踏切を除却しました。
沿線は民家が密集し用地買収が困難なため、800m以上にわたって、移動式大型機械(ゴライアス)などを利用した、直上高架方式(電車を通しながらその横や上で高架橋を構築する工法)を採用しました(上概略図、写真-1、2)。
そのため、十年近く夜間工事を行い、騒音・振動、生活道路の通行止め、電波障害等苦情の連続でそれらの対応に汗を流した思い出が今でも鮮明に残り、記憶から消えることはありません。
3.幅員30m道路への桁の架設
概略図の真ん中あたりに広い道路があります。
この道路は、博多駅六本松線(通称「城南線」)です。
道路幅員が30mあり、道路を跨ぐために、36mのコンクリート製桁(重量約100tと約80t)を各6本ずつ架設しました。
架設には、当時、全国でも数台しかなかった650tクレーンを採用しました(写真-3)。
道路上に設置しての桁架設となりますが、クレーンが少し進むだけで、道路面が沈下していきます。
架設が終わった後、クレーンを逃がし、道路を開放するまでに路面を整備していきます。分単位のスケジュールで工事を進めていきました。
4.さいごに
高架化事業は、皆様もご存知の通り踏切を無くすことにより慢性的な交通渋滞や踏切事故を解消させるとともに、鉄道によって分断されていた「まち」を一体的に整備することにより「まちの活性化」「まちづくり」に大きく貢献できるものです。
高架化事業に長年携わってきて、それらにしっかり貢献できた、と自負するところです。
また、思いのまま苦労話を述べてきましたが、高架が完成するといい思い出になります。苦情に対しても、地元の方々と腹を割って話すことにより気持ちが通じることが出来ました。
今後も、高架化事業だけでなく、いろいろな場面で、この貴重な経験を活かして行きたいと思います。