西鉄天神大牟田線(花畑駅付近)連続立体交差事業について
福岡県 公園街路課
高架係 主任技師
高架係 主任技師
中 村 桂 至
1 はじめに
久留米市は,かの夏目漱石が「菜の花の 造かに黄なり 筑後川」と詠んで愛した九州一の大河筑後川によって育まれた筑紫平野の中心に位置し,古くより県南地域の中心都市として発展し,平成17年2月の広域合併により人口30万人を有する都市に生まれ変わった。その中で交通体系の整備及び公共交通機関の充実強化が大きな課題となっている。花畑駅周辺地区は,久留米市の中心商業地域の一角に位置し,市の都心部である西鉄久留米駅付近に隣接しており,複数の主要幹線道路が地区内を通過していることもあり,地域的に利便性が高い地区である。
ところが,西鉄天神大牟田線の踏切遮断による交通渋滞の慢性化,鉄道線路によるまちの分断によって,市街地の発展が阻害されていた。そこで,この間題を抜本的に解決するべく平成6年度に都市高速鉄道の都市計画決定,平成7年度に国の事業認可を取得し本格的に連続立体交差事業の整備にとりかかった。
<平面図>
2 主な工事概要
(基礎エ)写真-1
既設高架橋の高架下に営業店舗及び自転車駐輪場があったため,地中部に地中梁・PC杭等が残っていた。それらの支障物が存在しても施工可能なオールケーシング(全周回転)+ベノト工法を採用した。
基礎杭を施工するにあたり騒音・振動対策を下記のとおり講じた。
騒音対策:ハンマーグラブの上部に付いているバケット開閉装置(クラウン)を低騒音型の装置を使用することにより騒音の低減を図る。
振動対策:掘削時にケーシングを先行圧入することにより周辺地盤への影響を低減させるとともに掘削地盤までのハンマーグラブ落下高さを1.0m以内とすることで振動の低減を図る。
基礎杭の施工中の既設のPC杭と重なった場合は,ケーシングを圧入し,その後ハンマーグラブの開閉力(約40t)にてPC杭を圧砕し,杭上部から撤去を行いながら基礎杭の施工を行った。
(締切矢板工)写真-2
鋼矢板の打設は,近隣住民への影響を考慮して,無振動・無騒音である油圧式杭圧入引抜機(サイレントパイラー)を使用した。また,N値25以上の場合は,ウォータージェット併用で施工を行った。
側道側の鋼矢板打設は,側道天端と鋼矢板天端を等しくするには,側道を大きく掘り下げる必要がある。そのため,側道を大きく占用することとなり,歩行者・車両等に支障をきたすため,側道側の鋼矢板を側道天端から+0.5mにすることで道路占用が小さくなり,また,安全柵の設置が容易に可能となった。
(上部工)
久留米駅~花畑駅にかけて,プレテンション方式PC単純中空床版橋を架設する箇所がありましたが,既設高架橋があった範囲については,西側に仮線路,東側は側道が通っており工事ヤードがとれずクレーン架設はできなかった。(図-1)
また,ガーター架設でも,ガーター本体を吊り上げる能力のあるクレーンは配置できなかった。そこで,ガーターの重量を抑えるために,H型鋼をガーターの変わりに使用した。施工はまずCtp1桁下で80tクレーンにてC t p2,3桁を高架橋上へ荷揚げし(Ct p1桁下はクレーン設置可能),ガーター(H型鋼)を架け(写真-4),高架上及びガーター上に軌道を施設し桁を自走台車にて送り出し,軽量の簡易門構で吊上げ(写真-5),橋台上に下ろし簡易門構の足を取り外し,横取板を鉄板上で所定の位置に滑らせ架設した。(写真-6)最後に360tクレーンにてCtp1桁を架設した。
また,C t p2,3桁で使用したH型鋼は,それだけでは桁の自重に耐えることができないため,主桁送り出し用に支保工を設置するとともに,橋台全面には,横取板を取り出す時に必要な足場兼用のジャッキアップ支保工も設置した。(写真-3)
3 高架本線への切替
平成16年10月16日深夜から17日の早朝にかけて仮線から高架本線への移設が行われた。(写真-7,8)当日は久留米駅ホームの切替,久留米4号,5号,6号・花畑2号,3号,5号の踏切道において6箇所の土木・軌道・電気施設の工事を一夜で行うものであり,工事用スペースが狭く,重機等の使用も限られ,ほとんどの作業を人力で行わなければならない施工条件であった。失敗が許されないなか約1年をかけて関係部署,施工業者との間で施工方法・問題点等の綿密な打合せを幾度となく行い切替工事に望んだ。
17日早朝,始発列車が通過して無事切替工事は完了した。切替工事に要した人員は約540名にも及ぶ大工事となった。
4 おわりに
高架化に伴い国道209号をはじめとする幹線道路の渋滞の解消はもとより,鉄道で分断されたまちが一体化され 花畑駅周辺ですすめられている土地区画整理事業との相乗効果により活性化がすすむと思われる。都市基盤が整備されつつある今これからが本当の意味での花畑駅周辺地区を核としたまちづくりの始まりである。