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複数の簡易遠隔操縦建設機械による実証試験
(バックホウと不整地運搬車の一連土工作業)

国土交通省 九州地方整備局 九州技術事務所
機械課整備係長
井 上  淳

国土交通省 九州地方整備局 大隅河川国道事務所
機械課 係長
久 野 晴 生

1 はじめに
簡易遠隔操縦装置は,平成10年度に九州技術事務所と㈱フジタが共同で開発を行ったもので,汎用の建設機械に搭載することで,遠方から建設機械を操縦できる。平成18年現在で,九州地方整備局では防災拠点である九州技術事務所と3つの事務所にバックホウ用6台,ブルドーザ用1台,不整地運搬車用1台を配備している。
今回,桜島の黒神川において,バックホウと不整地運搬車用簡易遠隔操縦装置を使った掘削・積込み・運搬の一連土工作業の実証試験(写真一1)を行い,良好な結果が得られたので報告するものである。

2 試験目的
本試験の目的は,簡易遠隔操縦装置(以下「装置」という)を使ってバックホウと不整地運搬車の一連土工作業を行い,施工能力や性能の把握と無線LANシステムの検証を行うものである。

3 簡易遠隔操縦装置の概要
土砂崩落等の緊急災害復旧は,被害の拡大防止や二次災害を防ぐために極めて迅速な作業が要求されるとともに,作業員の安全を確保する必要がある。崩落土砂の掘削除去を安全に行うには,遠隔操縦方式により遠方から建設機械を動かして,作業することが必要となる。
こうした緊急災害復旧に遠隔操縦方式の建設機械を用いる場合以下の課題が挙げられる。
①遠隔操縦専用機の市場性
遠隔操縦専用機は,普及台数が少なく比較的大型のものが多い。調達にあたっては,工場で遠隔操縦用に製作または改良されるのが一般的であり,完成まで時間がかかる。
②道路搬送上の規制
遠隔操縦専用機は,道路交通法の規制から,分解・組立を要する等,多大な時問とコストがかかる。

これらの課題を解決するため,迅速性且つ簡易性を目的に,バックホウ(写真一2,3),ブルドーザー(写真一4,5),不整地運搬車(写真一6,7)の運転席に装着して,遠隔操縦ができる装置を開発した。

3.1 簡易遠隔操縦装置の特徴
装置は,以下の特徴を有している。
①汎用建設機械に数時間で装着して,遠隔操縦できる。
②装置は10個のユニットに分割され,車等の交通手段で災害現場まで運搬できる。
③無線の資格を必要としない。

3.2 簡易遠隔操縦装羅の仕様
表-1に各装置の仕様を記述する。建設機械背面に設置したエンジンコンプレッサーから送られた圧縮空気によって,アクチュエーションユニットを動かし,建設機械の操作レバーを直接動かすことを基本動作としている。
遠方から操縦をする際に,施工効率の向上や建設機械近傍の安全確認を行うため,装置頭部の搭載カメラから送られる画像を確認しながら,操縦できる。

4 無線システム
4.1 従来の無線システム
従来の無線システムは,制御用を特定小電力無線で,搭載カメラの映像をSS無線で行っていた。図-1に従来の無線システムのイメージを示す。
この無線システムには,以下に示す技術的な課題が挙げられる。
①遠隔操縦するための制御用無線と,搭載カメラ映像用の無線がそれぞれに必要なため,稼動台数が増えた場合,無線チャンネルが多数必要となり,電波干渉を生じる恐れがある。
②不整地運搬車が長距離移動する際に,操作機から150~300m以上離れると電波が届かず,建設機械が停止する。

4.2 無線LANシステム
図-2に無線LANシステムのイメージを示す。
このシステムは,従来の無線システムの技術的課題を解決し,以下の特徴を有する。
①中継局間を無線化しシステムがコンパクトとなる。
②オペレータ,基地・中継局,装置を体系化した無線回線で,複数の装置の制御と搭載カメラ映像の通信が同時に行える。
③中継局を追加することにより,遠隔操縦可能な距離を数kmまで拡大することができる。

5 桜島実証試験
5.1 試験の概要
本試験は,装置を搭載したバックホウ(0.45m3級)と不整地運搬車(6t級)を同時に遠隔操縦して,掘削(写真-8)から積込み(写真-9),運搬(写真-10,11)までの一連の土工作業を行った。図-3に実証試験の施工箇所と基地・中継局の配置及び図-4に無線LANシステムの構成を示す。

試験は,①有人施工による運搬250m(有人施工),②無線LANシステムによる運搬250m(STEP1),③無線LANシステムによる運搬1km(STEP2),④特定小電力無線による運搬250m(特定小電力無線)の4ケースを行った。(表-2参照)
なお,STEP1では,比較のため特定小電力無線方式遠隔操縦専用機(10t車)による土砂運搬作業を同時に行った。

5.2 試験結果
5.2.1 バックホウの施工能力
バックホウの施工能力は掘削能力(m3/h)により代表される。
図-5より以下の知見が得られる。

①STEP1とSTEP2の掘削能力はほぼ同様の値となった。
②STEP1の無線LANと特定小電力無線(特小無線)による施工量に差がない。無線に不調が見られない限り掘削能力は同等と考えられる。
③特定小電力無線による専用機の掘削能力は,対有人施工比で60%といわれている。今回の特定小電力無線,及びSTEP1,2の無線LANはこれを上回る結果を残せた。

5.2.2 不整地運搬車の施工能力
積載走行,荷卸し時間空荷走行等を含めた一連のサイクル時間と運搬量より,不整地運搬車の運搬能力(m3/h)を算出した。
図-6より以下の知見が得られる。

①STEP1で,6t車の運搬能力は,有人施工に比べて約60%となっている。特定小電力無線で操作した遠隔操縦専用機(10t車)の運搬能力が,有人施工に対し約76%になっていることから,ローミング(注1)不調による操作不能時間が影響した結果といえる。
ローミングによる不調を差し引けば,特定小電力無線による操作と同等になると考えられる。
②STEP1とSTEP2の施工能力は,運搬距離が250mと1kmと異なるため,一概に比較することはできない。距離を加味した比較(運搬量×距離)をしてみると,有人施工も大きく上回る結果となった。
これは,長距離走行では,機械耐久性より設定した制限速度を越える傾向にあったためで,機械に対する負荷の増大が懸念される。
③特定小電力無線による施工能力は,有人施工比90%となっている。運搬作業は掘削作業に比べて単純作業であるため効率が良くなると考えられるが,掘削土量が9m3と極めて少ないことからもう少し多くの土量を施工して判断する必要がある。

5.2.3 無線LAN通信状態
無線LANの通信状態は,必ずしも一定するものではなく,周辺の障害物や,地面の凹凸,傾斜等を考慮して,使用するアンテナの種類や向き,電波強度を見極める必要がある。
今回は,中継局1の電波を停止させ,基地局のアンテナに指向性の高い平面アンテナ(電波強度強)を,中継局2のアンテナに指向性の低いダイポールアンテナ(電波強度低)を採用した。
試験中,図-7に示すように不整地運搬車がローミングの影響により停止することが幾度かあったが,主な原因は表-3のように想定される。

5.3 検証
本試験を踏まえ,装置及び無線LANシステム等,全般に関する総括的な検証について以下に示す。
(1)バックホウの施工能力
試験現場の土砂は硬からず,適度な湿り気を持ち礫の混入も少なかったため,掘削し易い状態にあったことから,有人施工においても積算基準を上回り,遠隔操縦でも積算基準に近い値を示している。

(2)不整地運搬車搭乗比較
今回の走行路では振動が激しく搭乗運転では長時間作業は無理であろうとのオペレータの意見があった。この点から見れば,装置の有用性が認められる。同時に建設機械及び装置に対して大きな振動ストレスがかかっていたことも事実であるため,稼動の前後には十分な点検を行い,装置に問題がないかどうかを確認する必要がある。

(3)無線LANシステム
良好な無線LANの通信状態を保ち,またローミング不調をなくすため,今後以下の対策が考えられる。
①移動体の搭載アンテナの検討
不整地運搬車等の移動体のアンテナは路面の傾斜に対して追随できるように工夫が必要である。今回使用したダイポールアンテナより電波を受ける範囲の広いホイップアンテナを使用すれば,ある程度の傾斜走行にも耐えることができる。
②基地・中継局アンテナの検討
本試験では,基地・中継局のアンテナ高さを最大3m程度までとしたが,それ以上の十分なアンテナ高さを確保する必要がある。
③ダイバーシティ機能の追加
ダイバーシティ方式(注2)により,1つの無線機に2つのアンテナが付けられるように改良する。
④搭載カメラ画像の遅延
遅延の少ない(概ね0.1秒程度)画像エンコーダ/デコーダが必要である。
⑤通信速度
今回使用した無線LANは理論値で最大通信速度は54Mbpsである。しかし,通信距離や遠隔操作数により通信速度は落ちてくるため,実効速度は半分程度と推測される。通信速度の速い無線LAN機器の開発が必要である。

6 おわりに
本実証試験により,簡易遠隔操縦装置を使ってバックホウと不整地運搬車を同時に遠隔操作し,掘削・積込み・運搬といった一連の土工作業を無理なく実施出来ることが確認できた。
同時に無線LANシステムの実験では,ローミング時に時間がかかる場合もあったが,その多くは想定の範囲内で解決できるものであり,新たな問題ではないことを確認した。
今後の開発の方向性としては,災害復旧工事の作業だけでなく,一般建設工事における危険及び苦渋作業への積極的な導入等,その適用範囲を拡大していくことである。
そのためには,視覚情報,通信,位置認識技術等をより一層改良発展させることが肝要となる。

(注1)移動局の受信電波が1つの発信基地から違う発信基地の電波に移り変わる現象
(注2)カーテレビや携帯電話に採用されている複数のアンテナ方式で,その時々で最も通信状態が良いアンテナの電波を受信する方式

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