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「いけいけチャレンジ!遠賀川」発表会
~河川を題材とした学習発表の場の提供~
内田光雄

キーワード:水環境、水防災教育、環境学習、総合的な学習の支援

1.はじめに
遠賀川流域では、水質調査や生物調査などを実施し、身近な河川を題材として環境学習等を実施している学校がたくさんあります。
今回は、水環境・水防災教育の推進や参加校同士の交流を図ることを目的に、平成16年度から当事務所で開催している「いけいけチャレンジ!遠賀川」発表会(以下「いけチャレ」という)について紹介します。

2.いけチャレの概要
いけチャレは、流域の小中学校で、1年間、実践した河川に関する学習の成果を発表し意見交換を行うもので、河川を題材としたものであれば特にジャンルを問いません。
遠賀川(本稿では支川を含めて「遠賀川」という。)の四季の風景、歴史、伝統行事、流域で起こった水害から防災について学んだことなど様々な内容の発表がありますが、水生生物調査、水質調査やゴミ問題を取り扱った環境学習についての内容が主となります。
発表は、壁新聞、パワーポイント、寸劇、クイズ形式など各学校が工夫して行います。

発表は、10分程度で行い、その後、会場との意見交換を5分程度行います。

また、いけチャレでは、司会・進行・マイク渡しなどのスタッフも流域の中学校、高校や流域で活動する団体所属の中学生・高校生にお願いしています。

このように、いけチャレは、出場校のプレゼンテーションの経験を積む場、出場校同士の意見交換の場としてだけではく、スタッフとして参加してもらう中学生・高校生に発表会等の運営経験を積んでもらう場としても活用されています。

3.総合的な学習の時間と水環境・水防災河川学習(出前講座)、「いけチャレ」について
①総合的な学習の中に河川を題材とした学習を位置づけてもらうための出前講座の工夫
いけチャレでは、河川を題材とした内容を発表してもらいます。
そのためには、まず、授業で、河川を題材とした学習を行ってもらう必要がありますが、発表の多い水環境については、教科単元の中での学習は馴染みにくい内容であるため、総合的な学習の中で実施されていることがほとんどで、まずは、遠賀川についての学習を総合的な学習の中で位置づけてもらう必要があります。※1総合的な学習の目標は、学習指導要領において「横断的・総合的な学習や探求的な学習を通して、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育成するとともに、学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探求活動に主体的、創造的、協同的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにする」とされています。
つまり、児童が、※2日常生活や社会に目を向け、探求の過程として「自ら課題を設定→情報を収集→整理・分析→まとめ・表現」という過程を経由する学習とする必要があり、次のステップとして、自らの考えや課題が新たに更新され、上記探求の過程が繰り返されていくことが大切となってきます。
遠賀川に目を向けてみると、地域の産業を支え、また、現在も流域の市町村の水道用水として利用されており、昔も今も流域の人々の生活と関わりが深いつながりを持っており、児童にとって身近な存在です。
水質は、近年改善傾向にあるものの、残念ながら、九州の主要な河川の中では、ワースト上位に常にランクインしており、汚濁原因の約7割は未処理の生活雑排水で、下水・合併浄化槽の処理水と合わせると生活排水によるものが8割以上にのぼります。
また、河口から約2.0㎞の地点にある河口堰では、大雨が降ると上流から多くのゴミが流れてきて毎年のようにゴミ処理に多くの労力と予算がかかっています。
このように、遠賀川がかかえる課題が明白であるため、児童にとって課題設定をすることが容易ですし、何より、その改善が、児童一人一人の工夫でできます。
以上のようなことから、遠賀川についての学習は総合的な学習の内容として適した題材であるといえ、導入段階で活用される出前講座において、
①複数の課題を児童に発見できるように、水生生物調査と合わせて水質調査を実施する。
②水質調査において上流・中流(学校の近く)・下流の水の水質の比較をする。
③調査結果を明瞭にまとめる。
といった工夫をすることで、遠賀川についての学習を総合的な学習の時間に位置づけてもらっています。

※1小学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編(文部科学省) P10 抜粋
 ※2小学校学習指導要領解説 総合的な学習の時間編(文部科学省) P13 編集し引用
②総合的な学習と「いけチャレ」の位置づけ
出前講座が、遠賀川についての総合的な学習の主に導入として利用され、水生生物調査や水質調査を体験する中で、児童は課題を発見します。
その後、総合的な学習の時間の中で、先生が児童と一緒に、発見した課題をテーマ(グループ)分けし、テーマごとに調べ学習を行い、模造紙等にまとめて発表するということで学習を終えることになります。
学習の最後の部分の発表の場として、いけチャレを利用することもできますが、通常、この部分は学校の中で行います。
いけチャレでは、同じ流域であっても違う河川が近くを流れる学校、上流・中流・下流の異なる地域の学校が集まり、それぞれの学校で調べてまとめた内容を発表します。
自分たちがくらしている地域、近くを流れる河川の様子との違いなど、他校児童の話を聴き、意見交換を行って、自らの考えや課題が新たに更新されていく場(総合的な学習の時間で学んだことを次につなげるステージ)として、いけチャレは位置づけられるといえます。

4.「いけチャレ」実施の課題について
いけチャレは、1 年間で実践した河川に関する学習のまとめとして開催しているため、3学期の学習内容(水防災は5年生3学期単元)も発表できるように、これまで、3月第1土曜日に開催してきました。
出場していただいた学校の先生や来場者からは、概ね「良かった」「このような機会があるのということは良いと思う」といった好評価をいただいていますが、一方で、以下の課題が挙げられます。
①3月第1土曜日には、多くの学校で6年生を送る会などの学校行事が開催されており参加できない学校がたくさんあるということ。
②土曜日は習い事をしている児童が多いなどの理由で、クラス単位での参加が難しく、総合的な学習でまとめたことを、参加できる児童で、再度分担・練習して参加しないといけないため、負担が大きくなり参加できない学校もあるということ。
 ③流域内の広い範囲から参加してもらうため、バス等の移動手段の確保が問題ということ。

5.おわりに(今後の「いけチャレ」実施について)
いけチャレの開催にあたって、主催者として4の①の課題のため参加校がなかなか集まらないということに最も苦慮しています。
このため、平成28年度は、2学期までの学習内容までの発表ということにはなりますが、時期を前倒ししての開催を検討しているところです。
平日開催については、学校の調整(最も調整が難しいのが給食の面)が至難のことであるため、土曜日開催はやむを得ないことと考えており、4の②の課題については、引き続き学校へお願いしていくほかないと考えています。
4 の③の課題については、市町村所有のバスによる送迎を教育委員会等にはたらきかけていきたいと考えています。
今後のいけチャレの展開としては、出前講座等で直接学校に赴く際にお願い(呼びかけ)し、多くの学校に参加してもらうとともに、20 回、30回と継続して開催できるよう頑張っていきたいと考えています。

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