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街路のトンネル化による土地利用の効率化

長崎県 長崎土木事務所
長与都市開発事業所
佐 藤 貞 夫

1 はじめに
高田越トンネルは,区画整理事業区域の中央部を東西に横切る都市計画道路高田越中央線の一部である。この都市計画道路高田越中央線は,長崎シーボルト大学,長崎商業高校,長崎高等技術専門校などの学園地区とJR道ノ尾駅を通り国道206号を結ぶ幹線道路である。
高田南土地区画整理事業は,西彼杵郡長与町の南西端長崎市に隣接した約50haの区域で施工されている土地区画整理事業である。当地区内にはJR道ノ尾駅があり,長崎駅まで約10分という恵まれた地理的条件にあるにもかかわらず,山林や原野など土地の有効利用がなされていない部分が多く,また既存宅地においても,道路,公園等の公共施設の整備が立ち後れている状況である。
このため,幹線道路の整備と併せて宅地の造成を行い,既存の住宅環境を改善するとともに,土地の有効利用により優良な住宅宅地の供給を行うことを目的として実施しているものである。
この事業において,街路の一部をトンネル化することにより,土地の有効利用を図ることが出来たのでその概要の紹介をする。

2 街路のトンネル化への計画検討
都市計画道路高田越中央線の一部をトンネル化することになった経過及び検討内容について述べるにあたり,区画整理事業前の地形を確認する必要がある。トンネル化を計画した部分は,現道の両側には,高低差10mから20mの丘陵地が連なっており,その谷部に都市計画道路高田越中央線が配されている。通常の道路事業であれば,切り土を行い法面処理までを考慮した中で経済的な方法を決定し,道路拡幅に伴う影響範囲までを用地買収し施工するのが一般的である。
しかし,本事業が区画整理であることを考慮すると,法面等の道路用地面積が増えるということは,宅地として利用出来る面積が減少することを意味する。よって,道路法面などの道路付属施設は極力排除し,宅地として利用出来る面積が多くなるように計画を行うことが重要となる。また,従来の施工方法で実施すると道路両側に約10mの法面等が発生し,事業区域を南北に分断することとなり,宅地環境としては,マイナスとなる。よって,道路が完成した後の住宅地としての利便性や環境にも十分考慮する必要がある。
以上の条件を踏まえ検討した結果,この谷部をトンネル化することとし,以下の点が改善されることとなった。
①事業区域を南北に分断するように存する都市計画道路高田越中央線をトンネル化したため,その上部に区画道路を容易に通すことが出来ることとなり,街並みの連続性が保たれ,区画整理事業区域全体が一体的に利用出来るため,宅地環境利便性の向上を図ることが出来た。
②トンネル上部の盛土を行うために約12万㎥の土砂が必要となり,地区外への搬出土量を抑制することが出来るため,コスト縮減を図れた。
③トンネルの上部を公園用地として利用出来る。区画整理事業においては,土地区画整理法施行規則第9条第6号において「公園の面積の合計が施行地区内に居住することとなる人口について一人当たり3m2以上であり,かつ施行地区の面積の3%以上となるように定めなければならない。」と規定されているため,トンネル上部を公園用地として利用することにより,最低でも単純計算ではあるが,トンネル延長(276m)×道路幅員(12m)=3,312m2の土地を公園用地として確保する必要が無くなった。言い換えると,3,312m2を公園用地としてではなく,宅地として利用出来るため,事業上大変有益となる。

3 トンネルの構造
トンネル化することが決まった後,施工方法について,様々な比較検討を行ってきたが,ここでは,実際に採用した工法について説明する。
トンネル化を図る部分の設計条件は,道路縦断勾配9%,盛土においては5m以上の盛土を行う区間が125mと全体の約半分を占め,最大の盛土高は約14mにもなる,かなり厳しい条件であった。

現場打ちでのコンクリート構造物等様々な工法の検討を行った結果,施工性,経済性等を考慮し,プレキャスト・アーチカルバートであるモジュラーチ工法を採用した。

また,施工においては,延長が276mあるため,全体を3工区の施工に分け,2工区以降の切り土をそのまま前工区の盛土材に転用し,コスト縮減にも配慮した施工を行った。

4 おわりに
高田越トンネルは,平成17年6月に供用開始を行い,現在トンネル上部の盛土工事を行っている。今後,トンネル上部の公園整備を行いながら,宅地及び区画道路の整備を進めていき,団地として一体感のある住環境に優れた地区の形成を図っていくこととなる。
街路をトンネル化するというこのような工事は,通常の道路整備の中では,想定し難い手法であるが,土地区画整理事業という面的な整備手法においては,非常に有益な手法であったと思われる。
最後に,今回の高田越トンネルに携わられた多くの方々に深く感謝の意を表します。

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