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船小屋温泉大橋の施工について

国土交通省 福岡国道工事事務所
 建設監督官
浅 井 博 海

1 はじめに
福岡県山門郡瀬高町と筑後市の境を流れる一級河川矢部川に,一般国道209号「船小屋温泉大橋」が完成し,平成14年8月11日供用した。この橋は,昭和4年に建設された2橋の架け替え事業により整備されたものである。新橋の供用により大牟田市と久留米市を結ぶ幹線道路の機能が大幅に改善され,地域の発展に大きく寄与するとともに,旧橋に替わる地域の新しいシンボルとして期待されている。

2 親しまれた橋,架け替え要望
旧橋の船小屋橋は,橋長82m,幅員5.5mの曲弦トラス型橋,中ノ島橋は,橋長80mのコンクリート橋である。特に船小屋橋は,昭和初期には珍しい鋼橋であり,赤く塗られていたことから「赤橋」と呼ばれ,長く地域のシンボルとして愛されてきたところである。
しかし,両橋とも建設から70年以上経過し,老朽化が進んだこと,大型車の離合が困難なため交通渋滞や交通事故の要因となっていたこと,洪水時には橋桁付近まで水位が上昇し,流下物による災害発生の危険があること等から早期の架替要望が出され,新橋が計画されたものである

3 快適で安全な道づくりを目指して
新橋の架橋地域は県南有数の温泉観光地であり,また,架橋地点の「中ノ島公園」は矢部川の清流と国指定天然記念物「大楠林」がある他に類を見ない景勝地でもある。このため地域の特性を反映した橋梁整備と周辺整備が求められた。このような観点から新橋は快適性・安全性・周辺環境及び旧橋の持つイメージとの調和を図った設計が必要となった。

(1)橋梁計画諸元
道路規絡 第3種2級
活荷重  B活荷重
橋 長  134.5m(PC3径間連続箱桁)+97.0m
      (鋼単純ニールセンローゼ橋)=231.5m
幅 員  W=3.0+0.75+2×3.25+0.75+3.0=14.0m(2車線)
橋梁形式  上部工:PC3径間連続箱桁橋
          鋼単純ニールセンローゼ橋
      下部工:逆T式橋台(ベノト杭)
          張出式橋脚(ベノト杭)

(2)快適性への配慮
車道幅員8m,歩道幅員を3m確保し,人と車の安全・快適な通行を確保した。また,ジョイントを極力少なくし走行性向上を目指した。

(3)安全性への配慮
洪水被害の軽減を図るため,低水部は橋脚を無くし最大限河道を確保した。

(4)地域との調和
①橋梁形式の決定
新橋の形式は,旧橋の構造系を踏襲し2橋を1橋に集約した橋梁とした。瀬高側は公園利用者が上空を通過する橋の圧迫感を感じないコンクリート橋,筑後側は船小屋温泉の観光パンフレットの定番にもなっている「赤橋」をイメージし「ニールセンローゼ橋」と決定した。

②橋梁名決定,景観設計
橋梁名は一般公募し,地域のイメージと知名度を考慮し,全国に地名を広め,地域活性化に役立てる意味を込め「船小屋温泉大橋」に決定した。
景観設計の基本方針は,「船小屋温泉大橋景観検討委員会」により決定した。古くからの温泉街であることを踏まえ,レトロ調を基本とした。

③中ノ島公園への利便性
スロープ橋を設置し,公園利用と温泉街利用の利便性向上を図る計画とした。橋詰には展望施設,案内板等を設置し,憩いの場も提供することにした。

4 施工について
ニールセンローゼ橋は架設をケーブルクレーン斜吊り工法で施工したが,供用中の橋梁に近接しているため,細心の注意を払い施工を進めた。特に強風の影響を大きく受けるため気象情報をこまめに確認し架設を進めた。また,架設地点には,樹齢300年を超える「クスノキ林」が広がっており,新橋建設の支障となったが,楠は伐採を行わず学識経験者等の指導のもと移植を行い施工を行った。

5 おわりに
船小屋温泉大橋は,本線橋梁部及び本線土工部は完成供用したが,旧橋撤去,アプローチ道路,橋詰め部等の整備の多くが未施工である。残る工事を進めるにあたっては地域住民・公園利用者及び道路利用者等の理解と協力が不可欠である。今後とも理解を得る努力を続け,安全施工を第一とし早期完成供用に向け鋭意取り組んでいく所存である。

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