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希少植物の生育環境の保全を目指した岩瀬川河川改修について

宮崎県 小林土木事務所
 所長
松 浦 芳 寛

宮崎県 小林土木事務所
 技師
米 満 昭 人

1 はじめに
岩瀬川は,九州で2番目の流域面積をもつー級河川大淀川の支川の一つで,官崎県の小林市と野尻町の境を流れる全長44.1kmの河川である。
今回,河川環境の保全・復元に取り組んだ野尻町の岩瀬川は,河床全面に熔結凝灰岩が露頭しており,その岩盤面が希少植物カワゴケソウ科・オオヨドカワゴロモ(絶滅危惧1A類)の生育地となっている。
また,河床の岩盤に3~4mの落差があり,形状が不規則な幾重もの滝が川面に創り出す景観は訪れる人に親しまれている。
ところが,近年,その岩盤の下層にある砂質層が流水によって吸い出され,岩盤が崩落し上流へ後退してきたことからオオヨドカワゴロモの生育環境が脅かされる状況になった。
このため,早急に河川環境の保全と再生を図ることとした。

2 事業の概要
本工事では,擬岩パネルを約800㎡,ロックアンカーを59本施工している。平成9年度に事業着手し,平成13年9月に完成を迎えた。
なお本工事の総事業費は約2億3500万円となっている。

3 事業の特徴
平成8年8月に,地域の代表者や各方面の専門家で構成した「岩瀬川工法検討会」を設立し,この中で,良好な河川景観の再生,オオヨドカワゴロモの生育環境の保全,河川景観に整合した魚道の新設を柱として改修工法の検討が行われた。
その結果,ロックアンカーと擬岩パネルにより岩の崩落を止めることで滝を含めた河川景観を残すとともに,左岸の河畔林の木陰を活かした魚道を設置する計画となった。
施工はまず岩盤にロックアンカーを水平方向に挿入し,岩の崩落をとめ,次に擬岩パネルを設置することにより滝の復元を図った。
擬岩パネル工法とは,ケミカルアンカーを岩に挿入し鋼材でアングルを組み,次に擬岩パネル(ガラス繊維を混ぜたコンクリートパネル)を張り,岩盤とパネルの間にコンクリートを充填していく工法である。
施工箇所の上流域はオオヨドカワゴロモの分布域となっており,上流の流速・水位を変えると死減する恐れがあった為,施工期間を短くするとともに上流域を観察しながらの施工となった。また複雑な立体現場を進めることは非常に困難であるため模型を活用することにより,施工業者との意志疎通を図り従前の滝のイメージの再生に努めた。

4 カワゴロモとは
学術名称はカワゴケソウ科カワゴロモといい見た目は苔(コケ)そのものだが,花も実もなる高等植物である。
カワゴロモは流れが速いところを好み(1.0m/s前後)水深5~50cmの岩盤の上に生息し,世界では,鹿児島県と宮崎県の岩瀬川だけに分布していることから生物地理学的にも注目されている。また,岩瀬川に分布するカワゴロモは新種として平成11年にオオヨドカワゴロモと発表され,その生育地はカワゴケソウ科の世界の北限地となっている。
ここ40年の間に数が激減し,環境庁の希少生物リスト(レッドデーターブック)にも記載されている。

5 おわりに
工事完成後は地元の方々や漁協からの聞き取りを行い,継続的な調査により次のような効果が確認された。
(1)住民に親しまれる河川景観が再生され,町による川沿いの親水公園整備と合わせて,人と自然のふれあいの場が創出された。
(2)世界的にも貴重な植物の生育環境が保全された。
(3)魚道の新設により,生物の生育環境の連続性が確保され,鮎の遡上が確認された。
また,小林市及び野尻町では,工事の完成を機に平成13年度オオヨドカワゴロモを天然記念物指定した。

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