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自動運転サービスの実証実験について

国土交通省 九州地方整備局
道路部 交通対策課 課長補佐
井 本 真樹男

キーワード:自動運転、実証実験、道の駅

1.はじめに
中山間地域では高齢化が進行しており、日常生活における人流・物流の確保が喫緊の課題となっており、一方、「道の駅」の約8 割が中山間地域に設置されており、物販をはじめ診療所や行政窓口など、生活に必要なサービスも集約しつつある。
こうした道の駅など地域の拠点を核として、著しく技術が進展する自動運転車両を活用することにより、①買い物や通院など高齢者の生活の足の確保、②宅配便や農産物の集荷など物流の確保、③観光への活用や新たな働く場の創出など、地域生活を維持し、地方創生を果たしていくための路車連携の移動システムを構築することを目指して、平成29 年度より全国13 箇所において実証実験に取り組んでいる。九州でも、道の駅「芦北でこぽん」(熊本県)と、みやま市役所山川支所(福岡県)を拠点する2 箇所で実証実験を実施したので紹介する。

2.道の駅「芦北でこぽん」を拠点とした実証実験
1)地域の概要・課題
芦北町は、人口約1 万8 千人、面積234㎞2の熊本県南部に位置する自治体であり、人口に占める高齢者(65 歳以上)の割合が約40% と高齢化率が高い。実証実験を実施した道の駅「芦北でこぽん」周辺には、社会教育センターや病院などが隣接するなど、地域における拠点性を有している事に加え、「道の駅」に出荷する野菜などを「道の駅」運営者が集荷して回るサービスなど、「道の駅」を活かした取組が行われている。

2)実験の概要
熊本県芦北町の道の駅「芦北でこぽん」を拠点とした延長約6.3㎞のルートにおいて、平成29年9 月30 日から10 月7 日までの1 週間、地域の皆様など約200 名の方々に参加頂き、実証実験を実施した。
実証実験を行うにあたっては『道の駅「芦北でこぽん」を拠点とした自動運転サービス実証実験地域実験協議会(会長:溝上章志熊本大学大学院教授)』にて議論頂いた。

3)実験ルート
ルートは道の駅「芦北でこぽん」を拠点とし、高齢者等の外出支援となるような公共施設である芦北町役場や社会教育センター、佐敷駅、病院等を約45 分で周回するものとし、1 日6 便の運行とした。うち、約3.0㎞区間については、一般車両や歩行者等が混在する公道において「自動運転レベル2(ドライバーが運転席に乗車するもの、緊急時以外は、加速、操舵、制御を全てシステムにより自動で走行)」とし、約0.4㎞区間については交通規制により一般車や歩行者等が通行しない専用空間を設け「自動運転レベル4(ドライバーが運転席に乗車しない状態で加速、操舵、制御を全てシステムにより自動で走行)」として実験を行った。また、「道の駅」に出荷する野菜などの集荷する約0.7㎞のルートを「自動運転レベル2」とした。

4)実験車両
実験車両は、今回の実証実験のために新たに開発されたヤマハ発動機株式会社の7 人乗りのものを使用した。路面から約5㎝の深さに埋設された電磁誘導線(ケーブル)に微弱の電流を流すことにより発生する磁力線を車両先端下部に設けられたセンサで感知して走行し、また前方カメラを用いて障害物を検知し走行する。自動運転中の最高速度は時速12㎞となっている。

5)検証内容と主な検証結果
主に技術的検証を目的とし、自動運転に必要となる道路の管理水準の検討や、運転手不在に対する心理的影響などの社会受容性、及び集落と道の駅の間の配送実験や高齢者等の外出を促す実験などを通じて地域への効果などの検証を行った。
今回の実験において九州では初めて一般車両と自動運転車両が混在して走行したところであるが、両者の速度差により、一般車両が自動運転車両を追い越す際、追い越し車両を障害物として検知して停車するケースや、道路上にはみ出した植栽を障害物と検知し停止するケースも確認された。

今回の実証実験は、自動運転車両の乗車出来る貴重な機会となった。乗車前後のアンケート結果から乗車経験により、自動運転技術への信頼性が向上する傾向が確認出来た。また、モニターの声として「1 日も早い自動運転の実用化を願っている。乗り心地も良い。」、「安心して乗っていることができた。」など頂いている。

今回の実験では、日常生活における外出先である病院や「道の駅」などへの移動手段として自動運転車両が活用され、高齢者等の外出機会の創出が期待される。

また、農作物の搬送実験では人手不足や高齢化などの現状から搬送の手間が省けることへの期待が多く聞かれた。

3.みやま市役所山川支所を拠点とした実証実験
1)地域の概要・課題
みやま市は、人口約3.8 万人、面積105㎞2の福岡県南部に位置する自治体であり、人口に占める高齢者(65 歳以上)の割合が約35.6%(福岡県平均26.2%)と高齢化が高い。実験の主要地である伍位軒地区は山川みかんの生産地であり、急峻な地形に位置している。

2)実験の概要
主にビジネスモデルを検討するための公募への福岡県みやま市の申請内容である、①地元エネルギー会社の余剰電力を活用しながら、自動運転で地域内の生活の足や物流を確保、②既に地域で生活支援用のタブレット端末等のプラットホームが整備されている事に基づく、実験とした。
実証実験は「みやま市役所山川支所」を拠点として伍位軒地区を結ぶ延長約10㎞のルートにおいて、平成30 年2 月17 日から2 月24 日までの1 週間、地域の皆様など約200 名の方々に参加頂き、実施した。
実証実験を行うにあたっては『みやま市役所山川支所」を拠点とした自動運転サービス実証実験地域実験協議会(会長:吉武哲信九州工業大学大学院教授)』にて議論頂いた。

3)実験ルート
実験ルートは、みやま市山川支所を拠点として、生活拠点となるJA 山川支所と上伍位軒地区の間を結び、コミュニティバスの停留所となる佐野公民館及び金融・郵便機能のある原町郵便局、児童の通学を考慮した桜舞館小学校付近にバス停を設置するものとした。

4)実験車両
車両は、地元電力会社による地産地消型の電力の活用などの活用などを通じた採算性確保の方策も検討するため、電気自動車タイプとする事とし、道の駅「芦北でこぽん」と同じヤマハ発動機株式会社のものを使用した。

5)検証内容
道の駅「芦北でこぽん」と同様の検証に加え、将来のビジネスモデルを見据え、運営主体のあり方や採算性確保の方策などの観点からも検証した。

実験では、タブレット端末により、バーチャル商店街に注文を行い、自動運転車両にて配達するという将来のビジネスモデルとしてのひとつの可能性を検証した。

特産品である山川みかんの搬送実験を行い、商品の品質への影響、みかん農家への利用意向、運搬にかかる負荷の軽減効果などの検証を行った。
一定速度で安定して走行するため、荷崩れ等品質への影響が少なく、利用したいという意向が多くあった。

児童の安全な通学手段の支援として、児童にも自動運転車両に乗ってもらい、小学校教諭や保護者にもアンケートを行い将来導入への検証を行った。
送迎に関する保護者の期待の大きさが感じられた。

4.おわりに
今回の実験には、地域の方々をはじめ、有識者やマスコミ関係者など多くの方々に試乗頂くと共に、マスメディアにも多く取り上げて頂くなど、大きな反響があった。
社会受容性の検証は大きな検証項目であり、社会に受け入れられるきっかけとしても大きな役割を果たした。
現在、検証結果をとりまとめているところであり、結果を踏まえ、社会実装に向けて取り組んでいきたいと考える。
実証実験にあたっては、両地域実験協議会の会長である熊本大学大学院の溝上章志教授及び九州工業大学大学院の吉武哲信教授のはじめ、たくさんの方々にご指導とご協力を頂くと共に、多くの皆様にモニターとして参加頂きご意見を頂戴した。ここに感謝の意を表す。

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