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特定テーマ型モデル「道の駅」『酒谷さかたに』について
井本真樹男

キーワード:モデル「道の駅」、住民サービス、小さな拠点

1.はじめに
地方創生を具体的に実現していくための極めて有力な手段として「道の駅」の重要性が高まる中、「道の駅」の質的向上に向けた取組として、全国各地の「道の駅」の模範となって質的向上に寄与する“ 特定テーマ型モデル「道の駅」” の平成28年度のテーマである、「住民サービス」部門モデル「道の駅」に全国で6 駅が認定された。
九州地方整備局管内においても、宮崎県日南市の『「道の駅」酒谷』が認定されたことからその取組についてご紹介する。

2.酒谷地区が抱える地域的な課題
酒谷地区は日南市の山間に位置する人口約1000 人で、高齢化率約50%という、超高齢化の過疎集落である。
公共交通としては、コミュニティバスが日3往復程度のため、移動手段が十分に確保されていないことから高齢者をはじめとする日常の生活に支障をきたす買物弱者の増加や山間農地の荒廃などが進行するなど、地域の衰退が懸念されており、このような中、農村風景や伝統文化等の保存、これらを有効活用した地域の活性化が課題となっている。

3.酒谷地区の活動
「いつまでも故郷に住み続けたい」という地域住民の思いを受け、地域の拠点である「道の駅」酒谷が、交流人口の創出と、地域住民を守る地域総合サービスセンターとしての機能を備えるために、地域連携組織「酒谷地区むらおこし推進協議会」と連携し、小さな自治を実践している。
「地域のために、子供や孫のために、そして自分のために」をコンセプトに、住民主導で地域活性化に取組む任意団体として、平成5 年に「酒谷地区むらおこし推進協議会」が設立された。この協議会では、平成5 年からJA はまゆう酒谷支所の空き駐車場を利用して月2 回、酒谷地区で生産された新鮮で安価な農産物を販売する活動を実施し、この活動が地域コミュニティ活動の強化につながり、それがきっかけとなり酒谷地区と都市・他地域との交流が始まり、また、地域特産物の掘り起こしを行うことで人が集まり、市民交流やふれあいの場として地域おこしに活用されはじめた。
この活動は、酒谷地区の大きな転機となり、日南ダムや阪元棚田など地域資源が豊富な現在の場所に平成9 年4 月に常設の「酒谷ふるさと特産品センター」をオープンし、この特産品センターが、2 年後の平成11 年度に「道の駅」酒谷として登録されることとなった。

4.現在の「道の駅」酒谷について
「道の駅」酒谷は、地域雇用創出の拠点として地域の中心的存在を担っている他、地域活性化のため「道の駅」の収益を「酒谷地区むらおこし推進協議会」と、その各活動に還元している。
収益の還元により地区内の様々なイベントや行事等の自治活動が活性化され、「イベントや行事の開催場所として「道の駅」を活用することにより、地区内外との交流活動の活性化が図られている。また、収益の還元以外にも、小中学生や地域住民を対象とした体験学習の開催や、少人数の採算ラインに乗らない弁当宅配や農作物の集荷代行等が、地域の福祉サービスとして提供されている。
このように「道の駅」酒谷は「地域の雇用創出」、「地域活性化」、「地域間交流」の拠点となっており、「道の駅」を中心とした「小さな自治」が形成されるなど、地域の拠点として活用されている。

5.おわりに
このような「道の駅」酒谷の取組が評価され、『特定テーマ型モデル「道の駅」(住民サービス部門)』に認定された。
最後に、国土交通省九州地方整備局としても、今後も引き続き「道の駅」酒谷のような『小さな拠点』形成を目指した取組など、公共の福祉を増進することを目的とした地域住民へのサービス向上に資する取組を支援していきたい。

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