平成28年熊本地震について ~ 公共土木施設の復旧に向けて ~
鈴木俊朗
大塚秀徳
大塚秀徳
キーワード:平成28年熊本地震、熊本地震からの復旧・復興プラン
1.はじめに
九州技報59 号に、「平成28 年熊本地震について」と題して、熊本地震による被災状況等について御報告いたしました。
その後、気象庁により地震観測結果が精査され、震度1以上の地震の発生回数は約1,900 回増の4,192 回に更新されました(平成28年12月15日時点)。また、6月末の梅雨前線豪雨による被害状況の確認を進め、災害査定や「平成28年熊本地震からの復旧・復興プラン」策定など、復旧・復興に向け対応してまいりましたので、今回改めて報告いたします。
2.熊本地震の概要
平成28 年4 月14 日21 時26 分に熊本県熊本地方の深さ11㎞でマグニチュード6.5 の地震(前震)が発生しました。さらに、28 時間後の4月16 日1 時25 分、同地方の深さ12㎞でマグニチュード7.3 の地震(本震)が発生し、これらの地震ではいずれも最大震度7 を観測しました。なお、同一地域で震度7 を2 度観測したのは観測史上初めてのことです。熊本地震の概要及び県内市町村で観測された震度は、表- 1 及び図- 1のとおりです。
また、平成28 年熊本地震は、熊本都市圏及び阿蘇地方を中心に多数の家屋倒壊や土砂災害など、県内に甚大な被害をもたらしました(表- 2、3)。
3.6月下旬の梅雨前線豪雨について
地震発生から2 ヶ月が経過した6 月19 日から25 日にかけて、本州付近に梅雨前線が停滞し、特に6 月20 日は、東シナ海から接近した梅雨前線上の低気圧が20 日夜にかけて九州北部を通過しました。このため、熊本県では21 日未明にかけて豪雨となり、甲佐町では6 月21 日0 時19 分までの1 時間に150㎜の降水量を観測し、これは全国でも史上4 位の観測記録でした(図- 2、表- 4)
この豪雨の影響で、土砂災害、浸水害等が発生し、熊本県で死者6 名となるなど、表- 5 のとおり甚大な被害が発生しました。
この豪雨災害については、8 月15 日に県内5町村(美里町、産山村、御船町、甲佐町、山都町)を対象として激甚災害(局激)の指定が閣議決定されました。
4 月16 日の本震後、阿蘇地域において多数の斜面崩壊・地滑り等が確認され、その後の6 月下旬の梅雨前線豪雨により、地震により不安定となっていた斜面の崩壊も進んだ結果、約5.の荒廃エリアが確認されました。この面積は、阿蘇大橋地区の大規模斜面崩壊(約0.14.)の約40倍に相当する規模になります。熊本地震により土石流が発生した山王谷川(南阿蘇村長野)では、21 日未明に再び土石流が発生し、その被災状況は写真- 1 のとおりです。
また、阿蘇地域での新たな山腹崩壊や土石流の発生により下流には大量の流木と土砂が流下し、白川中・下流区間、海岸域・港湾施設に堆積したほか、白川河口域のアサリ漁場における土砂堆積や有明海における船舶航行の支障となる漂流木も発生しました。そこで、白川河道内における堆積土砂の掘削、白川及び有明海沿岸・海域における流木撤去などを国との協力の下で実施しました(写真- 2、3、4)。
4.公共土木施設の被害状況と本復旧に向けて
前震・本震後、地震による被害として確認されていた公共土木施設の被害箇所数は、表- 6 のとおり約3,300 箇所、被害総額は約1,900 億円でしたが、6 月18 日から23 日にかけて発生した梅雨前線豪雨後に、約2,600 箇所・約254 億円の公共土木施設の被害が新たに発生しました。その他の豪雨による被害等も併せ、地震発生以降の被災箇所数・被害額は8 月31 日時点で表- 6 のとおりです。
公共土木施設の災害査定については、5月26日の1次査定から第22次査定まで実施し、平成28年12月27日に完了しました(表- 7)。なお、12月末時点で県及び市町村を併せて約1,100 件(約23%)の本復旧工事に着手し、災害復旧に鋭意取り組んでいるところです。
5.平成28年度熊本地震からの復旧・復興プランについて
熊本地震の発災後、人命救助、水と食糧の供給、避難所の運営支援、仮設住宅の整備など、各段階に応じて、本県は被災者支援に取り組んでまいりましたが、更に、
・復興の姿やそこに至る方向性を具体的に示すことで、将来への不安を払拭し、県民の希望を取り戻すこと
・県全体の復旧・復興の方向性を早期に示すことで、被災市町村や民間活動も加速させ、県全体の復旧・復興の取組みの加速化を図ること
の2 つの観点から、『熊本地震からの復旧・復興プラン』を可能な限り早い時期に県民に示す方針となりました。
そのため、5 月10 日から議論に入った「くまもと復旧・復興有識者会議」において、熊本県立大学・五百旗頭真理事長を座長とする7 名の有識者(表- 8)による集中的な議論が行われ、6 月19 日に創造的な復興の実現に向けた5 分野(20 項目)からなる『熊本地震からの創造的な復興の実現に向けた提言』が取りまとめられました。
この提言を受け、平成28 年6 月、県は「平成28 年熊本地震復旧・復興本部」を設置し、8 月3 日に、目指すべき方向性や早急な対応等を『平成28 年熊本地震からの復旧・復興プラン』として取りまとめ、公表しました。その後、初期の対応から復旧・復興のステージへと移行する状況の中、今後4 年間の取組みをより明確に提示するため、10 月3 日に『復旧・復興プラン』を改訂しています。
『復旧・復興プラン』は、平成24年熊本広域大水害への対応の時から一貫して提唱している「復旧・復興の3 原則」
①被災された方々の痛みを最小化する
②単に元あった姿に戻すだけでなく、創造的な復興を目指す
③復旧・復興を熊本の更なる発展につなげる
と、基本理念
「県民の総力を結集し、将来世代にわたる県民総幸福量を最大化する」
に基づいて策定し、平成28 年度中の取組み27 件、今後4 年間の施策13 件を掲げています。
6.むすび
発災後、大規模崩壊斜面の保全や、県管理国道・県道・村道・港湾における応急復旧や本復旧など、新たな現場や自治体所管の現場に踏み込んで、国直轄による災害復旧を進めていただいており、昨年末を以て阿蘇大橋地区では無人化施工から有人化施工への切り替え、県道熊本高森線についても暫定開通に至りました(写真- 5)。また、発災後から支援いただいている県外自治体からの派遣職員の皆様や建設分野の民間企業の皆様の御尽力があり、平成28年12月27日に災害査定も完了しております。
引き続き、国や地元自治体と連携・協力し、県外自治体からの派遣職員の皆様、建設分野の皆様のご協力をいただき、早期復旧・創造的復興を進めてまいります。
最後になりましたが、発災以降、来熊・ご支援いただいた派遣職員の皆さま、派遣元の皆さまに心より感謝を申し上げます。来年度以降も引き続きご支援をいただくこととなりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【参考】
1)くまもと復旧・復興有識者会議からの提言書
http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_16411.html
2)平成28 年熊本地震からの復旧・復興プランの改定について
http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_16643.html
3)熊本地震等に係る被害状況について
http://www.pref.kumamoto.jp/kinkyu/pub/default.aspx?c_id=9