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「新CALS/EC アクションプログラム」について

国土交通省 九州地方整備局 企画部
技術管理課 参加連携係長
江 口 秀 典

1 これまでの経緯
国土交通省では,情報通信技術(IT)を活用し,組織間,事業段階間で公共事業に関する情報の交換・共有・連携を図り,コスト縮減,品質確保,事業執行の効率化を目指して「建設CALS整備基本構想」を策定し,平成22年度までにCALS/ECを実現するため平成8年度より取り組みを開始している。翌年の平成9年には,建設,港湾空港施設の各分野で,平成16年度までの具体的な実施内容を示した「建設・港湾・空港CALS/ECアクションプログラム」を策定し,さらに平成13年には,これらを統合した「国土交通省CALS/ECアクションプログラム」(図ー1に全体構想を示す)を策定し取り組んできた。
九州地方整備局においても,インターネットを通じて入札手続きを行う「電子入札」を全ての工事業務において実施するとともに調査・設計・施工など各業務プロセスにおける最終成果品を電子データで納品する「電子納品」についても全ての工事業務を対象に実施する等,様々な取り組みを展開してきている。
今回,平成19年までの整備目標を具体的に示した「国土交通省CALS/ECアクションプログラム2005」が策定されたので,これまでの取組状況と併せて整備目標を紹介する。

2 これまでの取り組み状況について
(1)電子入札
電子入札とは,「電子入札施設管理センター(e-BISCセンター)」を介在させ,インターネットを利用して電子的に一連の入札手続きが行えるようにしたもので,①入札に係わる費用の縮減,②事務の効率化,③入札手続きの透明性・競争性の一層の向上等を目的として導入されたものである。国土交通省においては,平成13年度から一部の工事で試行を実施し,平成15年からは全ての工事と業務において全面実施し,平成17年度からは物品の調達と役務の提供に関しても本格運用を開始している。

(2)電子納品
電子納品は,調査・設計・施工における最終成果品を電子データで納品し,その納品データを後工程において共有・利活用することで,①業務の効率化,②省資源・省スペース化を図ることが可能となる。
国土交通省では,測量・地質・設計の業務において平成13年度より全面実施工事においては平成13年度から段階的に拡大していき,平成16年度からは全ての工事が電子納品の対象となった。
また,電子納品されたデータを共有・再利用するためには,一定のルールの下で電子データを作成し,電子媒体に格納することが重要となる。これらのルールを定めたのが電子納品の要領・基準類であり,更に要領・基準類を支援するガイドライン(案)や手引き(案)等を作成してきており,電子納品が適正かつ円滑に実施されるよう適宜見直しを図ってきている。
なお,これらの要領・基準・ガイドラインは国土交通省国土技術政策総合研究所のホームページ(http://www.nilirn-ed.jp/)から,手引き(案),当面の措置(案)は九州地方整備局のホームページ(http://www.qsr.mlit.go.jp/)より情報の取得が可能であり,現在も更に使い易いものへと改訂が進められている。

(3)電子データの利活用
電子納品された最終成果を後工程で共有・利活用するため,保管管理システム(九州技術事務所)へ登録を行っている。登録にあたっては,単に保管を行うだけでなく共有・利活用の目的でデータベース化していることから,電子納品要領に沿った形で納品されているか「電子納品チェックシステム」により電子成果品をチェックする必要がある。

3 アクションプログラム2005の概要
平成16年度までの取り組みにおいては,各種情報の電子化を中心に取り組み「情報交換」するための環境が整備されつつあるが,さらなるコスト縮減品質確保及び事業執行の効率化を図るため,「情報交換」に加えて「情報共有・連携」及び「業務プロセスの改善」を重点的に取り組むこととし「国土交通省CALS/ECアクションプログラム2005」を策定したものである。
今回のアクションプログラム2005は,ただちに実施できる目標に加えて,検討・試行を通じて実施に移行する目標を含むこと,また情報通信分野の技術進展が著しいことを踏まえ,目標期間は平成17年度から平成19年度までの3年間とし,策定後も必要に応じて見直すこととしている。

4 アクションプログラム2005の目標設定
基本構想の整備目標を達成するための具体目標として,次のとおり設定された。なお,事業執行の全体最適化,各目標の対象範囲の共有化を図るために,現状の業務プロセスを早期に可視化(モデル化)して,業務プロセスモデル(全体版)を作成すること,また,個々の目標については,業務プロセスを詳細に調査し改善内容を明確にし,その結果を業務プロセスモデル(全体版)へ反映することで,関係者間で常に情報を共有することとしている。

(1)情報交換
【入札契約】
目標ー1 入札情報契約の提供方法の工夫による情報収集効率の向上
目標ー2 入札説明書のインターネットを通じた配布による通達手続きの効率化
目標ー3 契約手続きの電子化による調達手続きの効率化

【電子納品】
目標ー4 CADデータ交換標準の改良による情報交換の効率化
目標ー5 3次元情報の利用を促進する要領整備による設計・施工管理の高度化

(2)情報共有・連携
【電子入札契約】
目標ー6 入札契約手続に関するシステム関連携による調達手続きの効率化
【電子納品】
目標ー7 地質データの提供による調査分析・施工計画の精度向上
目標ー8 施設情報を提供して技術提案募集によるコスト縮減と品質確保
目標ー9 完成図を利用した管理図の蓄積・更新の迅速化・効率化
目標ー10 維持管理データベース更新の迅速化・効率化
目標ー11 GIS管理図に重ね合わせた施設情報管理の効率化
目標ー12 現場からの情報取得による作業の効率化
目標ー13 情報モデルの管理によるシステム間の情報交換・共有・連携の促進

【共通】
目標ー14 取組状況の公開と研修テキストの共有による全国的展開の促進

(3)業務プロセスの改善
【電子納品】
目標ー9(再掲)完成図を利用した管理図の蓄積・更新の迅速化・効率化
目標ー10(再掲)維持管理データベース更新の迅速化・効率化
目標ー15 数量計算をCADで可能とする体制整備によるコスト縮減
【工事施工中の情報共有】
目標ー16 工事施工中の情報交換・共有の効率化

(4)技術標準
目標ー17 情報共有・連携に向けた必要な標準の整備

(5)国際交流・連携
目標ー18 CADの高度利用へ対応した国際標準機関との連携

4 関係機関との調整について
平成13年に,九州地方整備局,九州各県,政令指定都市等の構成メンバーにより,「九州地方CALS/EC推進協議会」を発足させ,CALS/EC整備のための情報や意思交換を通じて,九州地方の公共発注機関,受発注者等のCALS/ECの普及・推進に関する活動を行ってきている。また,平成14年に策定した「地方展開アクションプログラム(九州版)に基づき各機関への円滑な導入等を目指している。
前身の「国土交通省CALS/ECアクションプログラム」では,「電子入札」「電子納品」の全面導入等を図ってきたところであり,今回の「国土交通省CALS/ECアクションプログラム2005」は,前身のアクションプログラムを補完することはもとより,CALS/ECを更に躍進させるため,業務の交換・連携・共有さらには業務プロセスの改善をより一層図るため,旧システムの見直し,各種ソフトの新規開発,各分野においてCALS/EC技術の適用枠の拡大等を進めていき,平成19年度までのプログラムの完全実施をはじめ,CALS/EC普及・推進に向けた更なる環境作りや体制整備が必要と考えている。そのためには,各目標の着実な推進を図る観点から,「国土交通省CALS/EC推進本部幹事会」において適切にフォローアップを行い,必要に応じて見直すとともに,その結果を公表することとする。

5 おわりに
今後,九州地方整備局としても,CALS/ECの推進・普及については,各分野で各種業務に携わる方々の意識の向上が必要なことから,各受発注者に対しての普及に努めて参りたい。また,先導的な役割を果たせるよう取り組みを強化していくこととしており,受発注者の皆様には,これまでにも多大な労力とご苦労をお掛けしているが,CALS/ECの推進のため今後とも協力をお願いする次第である。

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