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新石垣空港整備事業について
儀間雅

キーワード:大規模舗装、情報化施工、FWD 調査

1.はじめに

石垣島は、沖縄本島の南西約470㎞の東シナ海に位置し、面積は約220.で、県内において沖縄本島、西表島に次ぐ3 番目に大きな島であり、八重山圏域(石垣市、竹富町、与那国町の3 市町)の政治、経済、教育、交通の中心地となっている。
石垣空港は、那覇・宮古・与那国間の県内路線の他、東京・大阪・名古屋・福岡の本土路線や台湾から不定期チャーターの国際路線運航があるなど、八重山圏域の基幹空港である。平成24 年度の利用実績について、乗降客数と着陸回数は、全国の地方管理空港の中でも神戸空港についで第2 位、取扱貨物量では第1 位と非常に利用度の高い空港である(乗降客数168 万人、 着陸回数11,087 回、貨物取扱量17,555t:いずれの値とも「国土交通省航空局 平成24 年分空港管理状況調書」より)。
しかしながら、旧空港は、昭和54 年から滑走路が1,500m のまま暫定的にジェット化しており、一部の路線では重量制限等を行っての運航であったため、非効率的な航空輸送だけでなく、利便性においても不便を来たし、農林水産業及び観光産業の発展に障害となっていた。また、旧空港の周辺は市街化が進み、航空機騒音問題が及ぼす住環境や教育環境への悪影響が重大な問題となっていた。
これらの課題を解消すると共に、今後とも増大が見込まれる航空需要に対応し、八重山圏域の振興発展を図るため、中型ジェット機が就航可能な2,000m 滑走路を有する新空港の建設が早くから求められていた。
建設位置の選定に際しては、紆余曲折があったが、八重山郡民の総意として現在の箇所を選定し、平成17 年12 月に飛行場及び航空灯火の設置許可を受け、平成18 年から工事に着手した。平成24 年8 月末で基本施設に係る工事を完了し、最初の計画から37 年の長い年月を経て、平成25 年3 月7 日より供用を開始している。
今回は、新石垣空港の整備事業において、施工の最終段階である滑走路・誘導路舗装の施工等について紹介する。

2.整備事業の概要

整備計画の概要を表ー1に、完成後の状況を写真ー1に、整備計画平面図を図ー2に、用地造成(盛土部)の標準断面図を図ー3に、また、新旧空港の比較について表ー2に示す。
旧空港と異なる点として、滑走路が2,000m になることで中型ジェット機の就航が可能となり、輸送力や快適性が大幅に向上する。次に離発着の多い過密さに対応するために平行誘導路と、その滑走路との接続のための取付誘導路を5 箇所に設けた。また、ローカライザーやグライドパスなどのILS(計器着陸装置)の設置により、精密進入が可能となり、視界不良時の着陸が可能となるため、就航率の向上などが挙げられる。
空港本体の用地造成については、全体で約650万m3の切盛を行っており、事業地の中で土工量の収支バランスをとる計画とした。
次に環境への配慮により、事業着手前の地下水分布への影響を極力小さくするため、空港内に降った雨を地下に導く浸透層(ドレーン層)を事業地内の切土で発生した琉球石灰岩を用いて、盛土箇所の滑走路両側と平行誘導路横に設けている。
また、この他に、赤土等流出防止対策をはじめ、小型コウモリ類を含めた貴重動植物等の保全対策を実施している。

3.滑走路・誘導路のアスファルト舗装について

滑走路・誘導路の舗装構成については、切土と盛土、断面中央と端部の違いで各層の厚さを変えているが、代表的な舗装構成を図ー4に示す。

3.1 施工に向けた課題

滑走路・誘導路などの基本施設のアスファルト舗装の施工に際しては以下の課題があった。
①滑走路・誘導路におけるアスファルト舗装面積約21 万㎡に対する石垣島内のアスファルトプラント(全4 工場)は出荷に対応できるのか?
②島内のプラント施設の都合上、改質アスファルトが使用できないため、配合設計も含め、どのように品質を確保するのか?
③舗装後の関連工事(灯火・グルービング・標識等)の施工を踏まえ、工程に制約がある中、施工業者は対応できるのか?特に滑走路についてはグルービング前に舗装の養生期間を最低2 ヶ月以上確保する必要があるため、更に制約があった。
④主要骨材の確保は島内の鉱山生産分だけで対応できるのか?
⑤施工機械は通常の道路工事で使用するもので対応できるのか?また、台数の確保は?
など、様々な課題があったが、石垣地区アスファルト事業協同組合との事前協議や工事発注後に舗装関係工事の全業者と監督員による工程会議を毎週実施し、課題を解決していった。

3.2 施工に際しての工夫とその効果
(1)舗設のレーン割りについて

舗設のレーン割りについては、航空機の走行性を考慮して、1 日当たりの施工延長を滑走路縦断方向にできるだけ長くするように施工を行い、横方向の継目ができるだけ少なくなるようにした。また、図ー5に示すように滑走路中心部(拝み箇所)は、1 レーン(幅5.0m)で施工を行い、以降のレーンについては2 つ分のレーンをホットジョイントで施工することで1 つのレーンとし、縦方向の継目を少なくするように計画した。

(2)情報化施工の導入

滑走路・誘導路舗装の施工に情報通信技術(ICT)を活用した情報化施工を導入した。具体的にはトータルステーション(TS) を用いたマシンコントロールによって、路盤材の敷均し(使用重機:モータグレーダ)とアスファルト合材の舗設(使用重機:アスファルトフィニッシャ)の施工を行った。
また、トータルステーションを用いて、ワンマン測量を実施し、丁張作業の効率化や各舗装面の基準高管理を行った。

(3)情報化施工の効果

今回導入したトータルステーションを用いたマシンコントロール等による効果について、表ー3に滑走路・誘導路舗装(ショルダー・オーバーランを除く)の出来形管理の結果(関連項目のみ)を示す。
「厚さ」については、平均値を見る限り、設計値との差がほとんど1㎝以内でばらつきが小さいことが確認出来る。「平坦性」については、ほぼ基準値の半分以下の結果であり、情報化施工を導入した効果が確認出来た。
また、各施工業者が導入の効果として強調していたのは、「施工の効率化が挙げられる。丁張り作業が省略される分、準備工の時間が短縮されるほか、施工の中止・再開が容易になるなどの効果があった。

3.3 舗装の品質管理について

今回の新空港整備に伴う舗装の品質管理については、他空港ではあまり事例の少ない、新設舗装に対するFWD調査を実施した。
通常、FWD 調査は、供用後の施設について、その健全度を確認する目的として実施しているが、本事業では測定した「たわみ値」を初期値として、供用後の維持管理(補修にあたっての評価)に反映させる目的で実施することとした。
図ー7に調査位置図を示す。また、図ー8・9に滑走路・誘導路のアスファルト舗装の調査結果(たわみ比)を示す。
まず、調査については、解析に際し、舗装体の温度の影響が懸念されることから、舗装表面と内部の温度差が少なくなる夜間に行うこととした。
また、舗装構造評価は、たわみ比による評価により行った。

「空港舗装補修要領及び設計例」(国交省航空局・国土技術政策総合研究所監修)によれば、「たわみ比が1.0 以上」となった場合は、舗装の構造に問題有りとしている。図ー8・9より、全ての調査地点(108 点)において、たわみ比は1.0 以下であり、舗装構造として健全であることが確認できた。今回の調査結果を初期値として供用後も継続的な調査を行い、舗装の劣化指標に反映させていきたい。

4.まとめ

今回は、空港整備事業の最終段階である「舗装」をメインとして事業紹介を行った。その中でもアスファルト舗装については、情報化施工を導入し、出来形の精度向上へ反映させることができた。また、FWD 調査を実施し、供用後も含めた品質管理に反映させることができた。

5.おわりに

先にも述べたとおり、最初の計画着手から完成までに37 年という長い年月を経て、新石垣空港は、八重山郡民の悲願を乗せ、開港を迎えた。平成25 年3 月7 日の開港直後はターミナルビル内や駐車場の混雑も一部見受けられたが、時間の経過と共に落ち着きを見せている。地元では新空港の開港を観光産業や農林水産業の振興・発展の起爆剤と捉え、あらゆる取り組みが始まっている。
LCC のスカイマークやピーチの参入もあり、開港後の乗降客数は増加を続けており、これを受け、8 月の観光入域客数(空路)は前年度の同月比で50%増(約6 万8 千人→約10 万2 千人)となり、過去最高を記録した。
開港後の運用を踏まえ、今後の課題は次のとおりである。
①ターミナルビル内及び周辺(道路、駐車場を含む)における各種運用や利便施設の改善検討
② LCC(ローコストキャリア)参入に伴う施設展開の検討
③国際線の定期及びチャーター便の就航に伴う施設展開の検討
また、沖縄県としても「空港アクセス道路(一般県道 石垣空港線)の整備」などの事業を今後も継続して実施し、八重山圏域の更なる発展に貢献していきたいと考える。
謝辞:本事業に携わった全ての方々に感謝すると共に、本稿をご覧の皆様方も機会があれば是非、南ぬ島(ぱいぬしま)石垣空港を利用してもらい、八重山圏域の観光振興に貢献して頂ければ幸いである。

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